2023年1月10日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージはほんとうにやばいのか?リスクやデメリットを徹底解説

最近、リバースモーゲージという単語を耳にする機会が増えていませんか?自宅を担保にしていて老後の資金を得る方法で、利息分しか支払わなくてもいいといった話を聞いて、なんかちょっと怖いなと思った人もいるかもしれません。老後の生活を支える基盤となる自宅を担保にしての借り入れですので慎重になるのも当然でしょう。そこでリバースモーゲージのリスクやデメリットを徹底的に調べてみました。リスクやデメリットを理解した上で、慎重に検討しましょう。

リバースモーゲージが出来た背景

リバースモーゲージは、所有している自宅を担保として生活資金を借り入れする仕組みです。借り入れたお金の返済は、契約者が死亡した時点で担保の不動産を処分することで行います。持ち家に住み続けながら、年金では足りない生活資金を確保できる手段として、日本では1980年代からスタートしました。シニア層には、住宅資産を所有している人が比較的多くいますが、その中には老後の生活資金はほぼ年金のみという人も少なくありません。高齢化社会が進み、年金制度への不安なども高まったこと、そしていわゆる「老後資金2000万円問題」などもあって、自宅を担保にし、そこに住み続けながら融資を受けられるリバースモーゲージに注目が集まっています。

定年退職後でも住宅ローンが残っている場合でも、住宅ローン(元本+利息)からリバースモーゲージ(利息のみ)に借り換えることで、月々の返済金額を減額することも期待できます。退職金や預貯金などをあまり減らしたくないという人にとっても安心感があるでしょう。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージは、金融機関である銀行や信用金庫、公的機関である社会福祉協議会が取り扱っている融資商品です。自宅を担保とすることを条件に、毎月一定額あるいは一括でまとまった資金を借り入れます。

特徴的なのがその返済方法です。一般的なローンでは、毎月の返済額に利息のほか、元金の一部が含まれています。リバースモーゲージは、契約者が生きている間は毎月利息だけを支払います。そして契約者が亡くなったら、相続人が担保となっていた家を売却する等の方法で元金を返済します。

また、対象年齢は50歳代からのシニアに限られます。一般的なローンだと、年齢が高くなるにつれて借り入れが難しくなりますが、リバースモーゲージは、シニアが安定した生活を送るための仕組みなので、若年層は利用ができないのです。

リバースモーゲージの金利と審査条件

リバースモーゲージの金利と審査条件は、以下の通りです。

金利

金融機関によって違いはありますが、おおむね年利3~4%前後、3.0%~4.5%の金利設定となっています。住宅ローンや自動車ローンよりは高めですが、年利10%を超えてしまうこともあるカードローンと比較すると、だいぶ抑えめといえます。

ただ、「リコース型」よりも「ノンリコース型」のほうが、金利が高めに設定されます。「リコース型」とは、最終的に返済すべき元金が自宅の売却額を上回ってしまった場合、相続人が超過した金額を支払って清算する契約タイプです。「ノンリコース型」とは、元金が売却額を超過しても、相続人が超過金額を支払う責任のない契約タイプです。

審査条件

リバースモーゲージの審査条件は、金融機関ごとに定められています。とくに、民間の金融機関と、各自治体の社会福祉評議会が提供している「不動産担保型生活資金」とでは、年齢や所得制限などに違いがあります。

不動産担保型生活資金では、原則として世帯全員が65歳以上であることが条件となっています。また所得制限があり、世帯員の収入が市区町村民税非課税、あるいは均等割課税程度の世帯であることが条件です。一方、民間金融機関では、対象年齢は50歳代から、あるいは60歳以上となっているところがほとんどであり、所得制限はありません。

また、不動産担保型生活資金では、貸付金額に「1カ月あたり30万円以内」という制限がありますが、民間金融機関の場合は契約者の希望や審査の内容によって貸付金額が決まります。資金使途は、いずれの場合も生活資金全般であり、事業目的や投資目的では使えません(民間金融機関のなかには、事業目的の利用を認めている金融機関もあります)。

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リバースモーゲージのリスクやデメリット

借り入れの限度額と存命期間

長生きすることは幸福なことである、という前提はありますが、それによってお金の心配は当然ついて回ります。リバースモーゲージで借り入れができるのは、一般的には住宅資産評価額の5割程度です。存命期間中に、この融資限度額まで使いきってしまうかもしれません。限度額まで借り入れをした後は、最終契約期間が設定されている場合は、担保物件の売却等をして返済しなければいけない場合があります。

資産価値評価の下落

リバースモーゲージでは、融資の限度額は、契約時の住宅資産の評価額によって決まりますが、その後に土地の価値が下がることが考えられます。一定期間で担保価値の見直しが行われるため、それに従って融資限度額が見直しされる可能性があるのです。また、債務者が亡くなった場合には、不動産を売却して借入金を返済することになりますが、その場合でも不動産価値が下がっていた場合は、差額の分を相続人が負担しなくてはいけない場合もあります。

金利の上昇

リバースモーゲージでは、利息の返済は変動金利型のものが多く、元本の返済はありませんが、月々の利息返済があるため、金利が上昇することで返済額は増えてしまうおそれがあります。

リバースモーゲージの注意点

推定相続人の同意を求められる場合がある

リバースモーゲージは、債務者が亡くなった場合に担保であった自宅を売却し、借り入れを返済するという仕組みです。相続の対象になる土地と住宅は、財産として残らないということになりますので、推定相続人全員との同意が契約時に求められる場合もます。また前述した3つのリスクについても、相続人に負担がかかる可能性がありますので、その点についても十分話し合っておく必要があります。

資金用途が限定されている場合がある

地方自治体の社会福祉協議会が提供しているリバースモーゲージでは、老後の生活資金としての用途しか認められていません。また、住宅金融支援機構が提供するものについては、住宅関連の用途しか認められていません。金融機関が展開している商品は、用途は比較的自由です。レジャーや住替え、ローン返済などでも利用できるものが多いですが、投資目的の利用はほぼ認められていません。

対象となる物件が限定されている

融資対象となる物件の地域が限定されている場合が多いことも、デメリットの一つです。リバースモーゲージでは、土地と建物の評価をもとに融資が行われるため、どうしても価値が高く、下がりにくい都市部が対象になってきます。また、民間ではマンションが対象外となる場合が多いです。

<リバースモーゲージのメリット>
ここまで、リスクやデメリットについて解説してきましたが、リバースモーゲージには以下のようなメリットもあります。メリットとデメリットを引き比べながら、自分に合った資金調達法なのかどうかを考えてみましょう。

住環境を変えずに資金調達ができる

通常の不動産売却であれば、家が売れたら住み替えを行わなければなりません。住み慣れた家を出なければならないのは寂しいうえに、住み替えのための費用もかかります。リバースモーゲージなら、家を担保にした後もそのまま住み続けられるので、精神的、経済的負担を軽減できます。

シニアの場合、新しい環境で暮らすことがかなりの精神的負担を伴うことがあります。長く付き合ってきたご近所と別れ、新たに人間関係を作り出すのは、容易ではないでしょう。気力が続かずひきこもってしまうケースも、ないとはいえません。本当に心地よい環境に住まうことが、心身の健康に貢献するのです。

毎月の返済負担が軽い

通常のローンでは、元金の一部と利息を毎月返済するため、「借りたお金が入ってくるけれど、支払いで出ていくお金も多い」という年月が続きます。リバースモーゲージは、毎月の返済が利息のみですから、生活費をしっかり確保できます。

とくに年金収入しかないシニアの場合、返済額が多くなると生活自体を圧迫しがちです。「暮らしていけるのだろうか」という不安も生じやすいでしょう。月々の返済額が少ないのは、他のローンにはない魅力です。

空き家対策になる

少子化の進む現代では、家の持ち主が亡くなった後に相続人が管理できず、空き家が放置されるケースが増えてきています。空き家問題は深刻で、平成30年住宅・土地統計調査(総務省)によると2018年10月1日現在における国内の空き家数は約849万戸で、空き家率はじつに13.6%を占めるという結果が出ています。

空き家が管理されず放置されると、害虫や害獣が家に住み着いたり、草木が生い茂ったりして近隣に迷惑をかけてしまうことがあります。放火の危険性もつきまといますし、雨風で家が傷んでもそのままなら、いつか大災害が起こったときに倒壊してしまうかもしれません。

リバースモーゲージは融資のための仕組みですが、死後の自宅の売り先を確約する仕組みと捉えることもできます。契約者が亡くなった後は速やかに売却されるため、空き家対策になるのです。「死後、相続人や近隣に迷惑をかけたくない」と考え、家を売りたいと思っている人にはぴったりの売却法といえるでしょう。

リバースモーゲージ以外の資金調達

リバースモーゲージ以外で、持ち家や不動産を使った資金調達の方法にはどんな選択肢があるでしょうか。

リースバック

リースバックは、自宅などを不動産会社や投資家に売却し、売却先と賃貸借契約を交わし、家には住み続けるという仕組みです。売却時にまとまった資金が確保できますが、家賃を支払っていくということになります。リバースモーゲージは契約者が死亡する将来の日時に売却するのに対し、リースバックは契約時に売却するため、資産価値評価の下落といったリスクが小さいことが特徴です。任意売却よりも比較的高く売却できること、家賃さえ払えればずっと住み続けられることなどがメリットになります。ただし、自宅の所有権(名義)は変更となります。

リバースモーゲージとリースバックの違いは?どちらを活用するのが良いか徹底比較

任意売却

任意売却は、住宅ローンなどの債務が残っている方に適した資金調達で、不動産コンサルタントなどの専門家が仲介として入り、お金を貸している人(債権者)と借りている人(債務者)の間で調整を行うことで売却が可能になるという方法です。競売よりも高く売却することができるので、両者にメリットがあります。リースバックは投資物件として不動産会社や投資家が購入するため、比較的早く売却が決まることが多いですが、任意売却は多くは個人が購入するため、売却がなかなか決まらないこともあるというデメリットがあります。

リバースモーゲージ型住宅ローン

リバースモーゲージ型住宅ローンという資金調達方法も選択肢の一つです。リバースモーゲージでは、住んできた自宅を担保にして借り入れをしますが、リバースモーゲージ型住宅ローンはこれから購入して住む住宅を担保に借り入れを行うという仕組みです。契約後は利息を支払い、死亡時に物件を売却して元金返済を行う点はリバースモーゲージと同じですが、いくつかの点で違いがあります。まず資金用途が比較的広く設定されていること。新築住宅の建設やマンションの購入、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金などにも利用可能な商品も販売されています。また、資産価値が下がったり金利の変動によって担保価値が融資額を下回った場合でも、相続人が返済しなくてもよいノンリコース型も登場しています。

リバースモーゲージ型住宅ローンとは?従来の住宅ローンとの違いやメリデメを解説

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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