2023年1月14日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージの対象となるマンションの条件や取り扱う金融機関を紹介

自宅がマンションという人も増えています。特に都市部では、一戸建てより交通の便の良い分譲マンションを選択する人が増えています。しかしリバースモーゲージを使おうとすると、マンションを担保物件にできないケースが少なくありませんでした。しかし近年、マンションを対象としたリバースモーゲージ商品も登場しています。そこで、どんな金融機関が扱っているのかといった具体的な内容を含めてまとめてみました。

リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージとは、自宅を担保として金融機関などから融資を受ける仕組みです。まずは、リバースモーゲージの、基本的な仕組みについて解説します。

基礎知識と仕組み

リバースモーゲージは、自宅を担保に借り入れを行うシニア向けの融資システムです。契約者の存命中は利息のみを毎月返済し、契約者が亡くなった後、自宅を売却するなどして元本を返済します。毎月少額の利息を返済するだけで、老後の生活にゆとりが生まれるのです。

一般的なローンとの違いは、対象がシニアに限定されること、毎月の返済に元本が含まれないこと、一括にまとまった金額の融資を受けられるだけでなく、毎月少しずつ定期的に融資を受ける契約も選べる点などです。

リバースモーゲージを取り扱うのは、銀行や信用金庫などの金融機関です。公的機関が行うリバースモーゲージもあります。

公的機関のリバースモーゲージ

リバースモーゲージを行っている公的機関は、各自治体の社会福祉協議会などです。正式名称を「不動産担保型生活資金」といいます。低所得かつ高齢でないと、利用することができません。

不動産担保型生活資金の対象となるのは、65歳以上の高齢者で、担保対象となる自宅に一人暮らしをしているか、夫婦2人暮らしの人です。夫婦2人暮らしの場合は、配偶者も65歳以上である必要があります。そして、市区町村税の非課税世帯、または均等割課税世帯程度の低所得世帯でなければなりません。

また不動産に貸借権などの利用権や、抵当権などの担保権が設定されていないことも条件になります。担保の対象となるのは一戸建てで、マンションは基本的に対象外です。

貸付限度額は月額30万円以内ですが、生計を維持するための必要最少額でなければなりません。借入金の使用用途は、生活資金や医療費に限定されます。金利は、民間金融機関のリバースモーゲージに比べると低い傾向にあります。

金融機関のリバースモーゲージ

金融機関のリバースモーゲージは、対象年齢が50歳、あるいは55歳からと、公的機関よりも低年齢から利用が可能です。所得に上限はありません。

担保対象となるのは、主に一人暮らしかシニア夫婦二人暮らしの自宅ですが、セカンドハウスなどを担保に融資を受けることもできます。また一戸建ての他、条件が揃っていればマンションも担保物権の対象になります。

貸付限度額は担保物権の評価額によって変わってきます。毎月一定の金額を受け取るほか、一括でまとまったお金を受け取る契約にもできるのは、前述の通りです。使用使途は、事業目的でなければ自由としているところが多いです。

マンションがリバースモーゲージの対象外となる理由

リバースモーゲージは、主にローンが借りにくくなっている高齢者が、年金以外にも生活資金を確保する手段として利用されています。

リバースモーゲージが適応されるのは、都市部の一戸建て住宅に限られることがこれまで多く、マンションは対象外とされていました。これは、リバースモーゲージの担保となる物件の評価が、主に土地を中心として評価されるからです。マンションでは土地の評価が難しく、また、建物の評価でも建築年数による物件の劣化によって資産価値が低下することから、対象になりづらい傾向がありました。

しかし、近年はマンションもリバースモーゲージの対象とする商品が出てきており、注目を集めています。

リバースモーゲージに適応されやすいマンションの条件

リバースモーゲージに適応されやすいのはどんな条件のマンションでしょうか。

マンションの資産価値が下がりにくい物件

まず挙げられるのは、資産価値が下がりにくい物件です。都心に近く、ターミナル駅やベッドタウンとして知られている地域のマンションは人気も高く、資産価値が下がりにくいとされているため、適応されやすい条件の一つです。また、駅からの徒歩分数の近さも高い評価の条件になります。一戸建てよりもマンションのほうが、駅から近いほど資産価値があがる傾向がありますが、リバースモーゲージの評価においても同様です。

マンションが建つ地域の環境

治安や環境の良さ、町並みの美しさ、住みやすさ、近くに競合するマンションがないことなども好条件になります。また近年は、災害へのリスクなども選定のポイントになることから、地盤の良さや川や海の近くならばその安全性なども評価の対象になっているようです。

マンションの築年数

築年数も大きな条件の一つです。建物の資産価値は、日本の場合、経年で大きく評価が変わってきます。新しければ新しいほど資産価値は高いため、15年から20年よりも浅い築年数がリバースモーゲージが適応される条件の一つの目安として考えるといいでしょう。

マンションを対象とするリバースモーゲージを扱っている金融機関

次にマンションを対象とするリバースモーゲージを扱う金融機関の商品一部紹介していきましょう。

充実人生(東京スター銀行)

東京スター銀行の「充実人生」は、マンションが対象になっているリバースモーゲージ商品です。契約の条件としては、利払いあり型(使ったぶんの利息を毎月支払う)では55歳以上、利払いなし型(毎月の支払いがない)は70歳以上の方が対象です。所有する物件が一都三県+大阪市・京都市・神戸市にあり、自分または配偶者名義のマンションに、原則として単身またはご夫婦でお住まいの方。そして年収は120万円以上の方(年金収入など、長期安定的に見込める年収に基づいて審査)といった条件があります。
そしてマンションは築年数等一定の条件がある(要問合せ)となっています。

おうみのくらし(滋賀中央信用金庫、長浜信用金庫、湖東信用金庫)

滋賀県を本店とする3つの信用金庫が共同で提供している「おうみのくらし」も、マンションも対象とするリバースモーゲージです。対象となるのは、申込時の年齢が満50歳以上、満80歳以下で、年金や給与、事業所得などの安定継続した収入のある方。3信金のいずれかに年金・給与の受取口座があり、会員または会員資格のある方。保証会社の保証が得られる方、といった条件があります。原則的にはマンションも一戸建てと同じような条件での審査となります。ただ判断するのは保証会社であり、一律に条件を示すことはできないそうです。

かなぎんリバースモーゲージローンⅡ(神奈川銀行)

神奈川県を中心に事業を行っている神奈川銀行も、マンションを対象とするリバースモーゲージ商品を扱っています。対象となるのは、申込時の年齢が50歳以上で、安定継続した収入があり、保証会社の保証が得られる方。そして居住地が神奈川銀行の営業区域、かつ不動産の流通性がある地域に居住していること、という条件があります。マンションが条件を満たすかどうかについては、近隣の売買価格や市場性なども加味されるため、保証会社に審査を依頼しないとわからない面があり、まずは銀行で相談する必要がありそうです。

マンションをリバースモーゲージする際の注意点

マンション評価額の下落

土地と比べると建物部分の価値は年数に比例して下がっていきます。特にマンションの場合は、土地部分の評価が戸建てよりも小さいため、建物の経年劣化によって価値の下落は避けられません。マンションの担保評価は定期的に行われるため、価値が下がった分の追加担保が必要になる可能性や、契約期間(お金を受け取れる期間)が短くなるリスクがあります。

契約年数に達した場合の対応

リバースモーゲージでは、契約年数に達した時点で基本的には担保物件を売却することになります。マンションが担保になっている場合も同様であり、その際にどう対応をするのか、ご家族や推定相続人の方ともお話をしておく必要があるでしょう。

金利に注意

マンションのリバースモーゲージ商品は、固定金利のものもありますが、比較的利率が高めなものが多いようです。また変動金利のものについては、契約期間中の金利上昇のリスクに注意する必要があります。借り入れ残高が増加し、担保割れとなって融資金額が減額されてしまう可能性があるからです。

マンションのリバースモーゲージで【リ・バース60】を利用する

「生活費のために借り入れを行いたいというよりは、家の住み替えやリフォームのためにまとまった融資を受けたい」と考えている人におすすめなのが「リ・バース60」です。リバースモーゲージの仕組みを使った高齢者向けの住宅ローンで、年齢や所得を理由に住宅ローンの審査が通らない人も利用できる可能性があります。

リ・バース60とは

リ・バース60とは、住宅ローンの支援等を行っている独立行政法人住宅金融支援機構が展開している商品です。銀行などの金融機関が住宅金融支援機構と提携を結び、金融機関ごとにプランをアレンジして販売しています。

リ・バース60では、50歳代、あるいは60歳以上のシニア層が自宅を担保に融資を受けられ、新築あるいは中古の家を購入したり、自宅をバリアフリーにリフォームしたり、高齢者専用マンションに住み替える資金として使うことができます。担保となった自宅にそのまま住み続けられ、毎月の返済は金利のみ。元本は、契約者が亡くなった後に、相続人が家を売却する等の方法で返済します。

このように、借り入れの仕組みはリバースモーゲージと同様です。ただ資金の使途に、契約人本人もしくは子世帯の「住宅用」という条件がつきます。

また、住宅金融支援機構が保険者となるため、保証人を立てる必要がありません。契約者が債務不履行となったときは、住宅金融支援機構が保険金を金融機関に支払い、機構と契約者の間で新たに契約関係が結ばれます。

リ・バース60でマンションを利用する条件

リ・バース60は、融資対象となる物件について「一戸建てのみ」「マンションはNG」といった垣根を設けていません。マンションが対象となるかどうかは、各金融機関によって違ってきます。

各金融機関が設定している評価額や対象エリア等の基準を満たせば、マンションであっても審査が通る可能性はあります。一方で、利便性の高い立地ではなかったり、年数が経って評価額が低かったりするマンションは、審査が通りづらいでしょう。

ホームページに、リ・バース60の対象となる物件の詳細を掲載している金融機関はあまり多くありません。直接問い合わせ、自宅マンションが条件に適合しているかを確認するのがよいでしょう。

リバースモーゲージ以外の資金調達の方法

リバースモーゲージ以外にも、シニア層が資金を調達できる方法はいくつかあります。それぞれ、詳細を解説します。

リースバック

リースバックとは、自宅を売却し、買主と賃貸契約を結んで家賃を払いながら自宅に住み続けられる仕組みです。仕組みを利用してもずっと自宅に住み続けられるのはリバースモーゲージと同じですが、リースバックは借り入れではなく、売却代金を得ることになります。よって資金の使い道が限定されたり、利息を支払ったりすることはありません。年齢制限もありません。

リースバックに向いているのは、事業のための資金が欲しい人や、住み替えのための住居を取得した後も数年は住み慣れた自宅で暮らしたい人等です。家賃を支払えばずっと自宅に住まうことができますが、長く家賃を支払い続けていると、家賃総額が売却代金を超えてしまう危険があります。よって、長く自宅に住みたい人よりは、住み替えを前提としている人の方が利用しやすいのです。

リースバックは融資取引ではなく不動産取引なので、銀行などの金融機関ではなく、不動産会社に申し込むことになります。

シニア向けローン

種類は少ないですが、60歳以上のシニアが利用できるローンを展開している金融機関があります。年金受給者であっても申し込みが可能で、担保や保証人が不要なケースが少なくありません。ただ、完済時の年齢が「80歳まで」など制限されていることが多いため、月々の返済負担は大きくなりがちです。金利も高い傾向があります。

ただ、申し込みから審査終了・借り入れまでの期間が短い傾向があるため、緊急にまとまったお金が必要になったときには有効な手段といえるでしょう。計画的に利用し、破綻がないよう注意が必要です。

シニア向け開業支援資金

定年後に開業したいなど、事業のために資金が欲しい人には、シニア向け開業支援資金の利用がおすすめです。

シニア向け開業支援資金として有名なのが、日本政策金融公庫が行っている「女性、若者/シニア起業家支援資金」です。女性や若年者、高齢者の視点を生かした事業を応援する目的で開設され、利用条件は「女性」「35歳未満」「55歳以上」のいずれかです。融資額の他、利率や担保設定の有無は事業の内容や資金の使い道等を考慮し、審査の上で決められます。

他にも、自治体ごとに開業のための貸付制度を設けているところがあり、年齢制限がなければ申し込みが可能です。ご自身のお住まいになっている自治体に開業支援資金や起業家支援金の情報がないかどうか、一度調べてみるとよいでしょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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