2023年1月10日
リバースモーゲージ
【FP解説】自治体が運営する「リバースモーゲージ」社会福祉協議会の不動産担保型生活資金とは

不動産担保型生活資金は、各自治体の社会福祉協議会が実施している土地を担保に生活資金を提供する公的な制度です。65歳以上の高齢者を対象にした「リバースモーゲージ」の制度ですが、公的な制度のため民間のものとは内容が違います。そこで不動産担保型生活資金の概要を説明し、その注意点や民間のリバースモーゲージとの違いについても説明します。

不動産担保型生活資金とは?制度と目的

不動産担保型生活資金とは、高齢者世帯を対象とし、その土地や建物を担保に生活資金を融資する制度です。土地や建物を財産として持っているのに現金収入が少ない高齢者に、土地や建物を活用して自立支援を図ってもらうことを目的とした公的な制度です。

この制度の受付窓口は、住んでいる市町村の社会福祉協議会が担います。「社協」とも呼ばれる社会福祉協議会は、地域住民が安心して生活できるようにするための「福祉のまちづくり」の実現に向けて活動している営利を目的としない民間団体です。福祉サービスの向上や民生委員の支援など、福祉関連で幅広い活動をしています。

不動産担保型生活資金は高齢者の自立支援を目的としているので、利用者は65歳以上と決まっています。また親以外の同居人がいないことも利用条件となっています。つまり子どもが同居している場合は、この制度を利用することができません。

担保となるのは住宅用の土地付き一戸建てで、おおむね1,500万円以上の評価額が必要とされています。残念ながら建物だけの所有や分譲マンションを担保にした制度利用はできません。さらに不動産に貸借権等の利用権や抵当権等の担保権が設定されていないことも条件の一つです。

あくまでも土地・建物を利用した生活支援なので、旅行などの資金を借りることはできませんし、市町村税の非課税世帯または均等割課税世帯程度という世帯の所得も条件の一つとなっています。貸付金も月額30万円以内となっています。

貸付限度額は、担保となる土地評価の約70%と決まっています。ただし限度額に達しても自宅に住み続けることができます。住んでいる自宅を手放すことなく、生活を維持したいと思っている人にとっては使いやすい制度と言えます。

金利は、金融機関が企業に対して期限1年以上の融資をするさいの最低限度となる金利「長期プライムレート」が年利3%のいずれか低い方となります。ただし2014年 7月以降、長期プライムレートは1.2%未満となっています。

不動産担保型生活資金を利用する場合の注意点

公的な制度で安全性が高いとはいえ、この制度にも注意すべき点があります。ポイントを3つまとめましたので、順に説明していきましょう。

慎重にしたい借入計画

貸付限度額に達した場合、自宅に住み続けることはできますが、生活費となっていた貸付は止まります。また金利だけは発生し続けます。自身の寿命がどれぐらいなのかは予測できません。それだけに借入計画を慎重に行う必要があります。

相続人の意向を確認

融資を受けた人が死亡したときに契約が終了し、相続人または連帯保証人が貸付金と利子を支払うか、土地・建物を処分することになります。このとき分割の支払いができず、一括返済となっています。そのため土地・建物を相続するのは、ややハードルが高くなります。
遺産の相続人から一人を保証人にしなければならない制度設計になっていますが、申し込む前に相続を含め家族との十分な話し合いが必要です。

同居の制限

子どもとの同居している物件を担保にすることはできませんし、貸付が始まってからの同居もできません。また自宅の大幅な増改築などもできませんし、二世帯住宅も担保にすることができません。
つまり将来的に子どもと同居する可能性のある世帯には向かない制度です。

なお融資を受けた人が死亡したときに契約が終了し、相続人または連帯保証人が貸付金と利子を一括で支払うか、土地・建物を処分することになります。

自治体と民間のリバースモーゲージとの違い

自宅を担保に住み続けながら融資を受けられるリバースモーゲージにもかかわらず、民間の金融機関の商品と公的なサービスである不動産担保型生活資金は大きな違いがあります。その根幹にあるのは、福祉的な生活支援の要素です。具体的に説明していきましょう。

資金用途の違い

民間のリバースモーゲージは、住宅の建て替えや旅行など生活を豊かにするための制度のため、資金の使い方は緩やかです。例えば老人ホームなどへの入居一時金などに対して、まとまった資金を用意することが可能性です。

自治体が実施する制度は、あくまでも生活支援。旅行や孫や子どものために使う資金を受け取ることはできません。住み続けるための自宅の補修のために、通常より多くの資金を受け取るとこもできますが、原則的に年金のように決まった生活資金を受けるシステムとなっています。

制度を使える年齢の違い

地方自治体の場合、高齢者の生活支援を目的としているため、契約時の年齢は65歳以上となっています。
一方、民間のリバースモーゲージの場合は多くの場合55歳以上です。つまり民間の場合は、仕事を続けながら資産運用をしたいといった層も対象にしています。

所得条件の違い

地方自治体が実施する不動産担保型生活資金の場合は、世帯員の収入が市民税非課税世帯または均等割課税程度といった基準が設けられており、現金収入の少ない高齢者を対象にしています。
一方、民間の場合は、年金など含めた一定以上の年収が必要になっています。

活用できる地域の違い

地方自治体の場合は、土地の評価額が1,500万円以上、場合によっては1,000万円以上でも利用できます。しかし民間の場合は、不動産の所在地が問題となってきます。メインとなってくるのは、東京・神奈川・千葉・埼玉の「首都圏」と大阪、京都、兵庫の「関西圏」でしょう。地方銀行が地元の地域を対象としたリバースモーゲージを提供している場合もありますが、融資が可能かは保証会社の審査次第となるケースも少なくありません。

金利の違い

先程の触れた通り、地方自治体の場合は最大でも年利3%です。一方、民間の場合は変動金利です。金融機関によってもことなりますが、現状は4%前後の利子が多く、地方自治体の制度よりも高くなっています。

不動産担保型生活資金の利用が向く人

不動産担保型生活資金の利用に向いているのは、住宅の使い方が決まっている人です。先にも触れた通り、この制度を使うと子どもとの同居や二世帯住宅への改装などは認められません。つまり子どもなどとの同居がないと決まった人が使う制度と言えます。

また土地・建物の相続を家族が望んでいないケースも向いています。借主の死後、貸付金と利子が一括返済となるため、この制度を利用した人は土地・建物を相続できないケールが多いようです。つまり自分の代で財産を処分したいと考えている人には、お勧めの制度です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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