2022年11月21日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージのデメリットやリスクを徹底解説!老後資金の調達方法もご紹介

リバースモーゲージとは、自宅を担保に融資を受けられる仕組みです。自宅に住み続けながら生活資金を借り入れ、生きている間は利息を返済し、契約者が亡くなったら、相続人の方が自宅を売却すること等で元金を返済します。苦しい年金暮らしを救う、無理のない借り入れ方法に見えますが、デメリットはないのでしょうか。リバースモーゲージのデメリットやリスクとその対処法、さらにリバースモーゲージ以外の資金調達方法をご紹介します。

リバースモーゲージの問題点とデメリット

リバースモーゲージの問題点とデメリットは、以下の5つです。

対象エリアが限定されている場合が多い

リバースモーゲージの対象エリアは、サービスを展開する金融機関によって違いますが、ほとんどが都市近郊に限られています。都心の一等地や、居住エリアとして人気の高い場所に一戸建てを構えている人ほど、多くの融資を受けられる可能性があります。

資金使途が限定されていることが多い

取り扱い機関によって、認められている資金使途が違います。多くの金融機関では、事業用、投資目的での借り入れはできない決まりです。純粋に生活資金として借り入れるなら、問題はありません。

相続人に迷惑をかけるかもしれない

一般的には、自分が亡くなった後に元金返済の手続きをするため、元金の支払いは相続人にゆだねられることになります。多くの金融機関の場合、自宅を売却して返済する方法を選んだとしても、借入額が売却額を超えてしまったら、相続人は不足した金額を返済しなければなりません。無理のない範囲での借り入れが原則です。

元金が減らないことがストレスになる

利息だけを毎月返済していく仕組みなので、元金が減りません。「借金自体がストレスになる」という人には向かない仕組みです。ただ、例えばローンの支払い中にリバースモーゲージに切り替えたなら、借金返済中という状態は変わらないものの返済額がぐっと軽減されるので、かなり心が軽くなるでしょう。

子供と同居できない場合がある

リバースモーゲージは、単身や夫婦のみの世帯が対象であることがほとんどです。子どもと同居している場合は、対象外となる金融機関も数多くあります。また、対象となる家で将来子どもと同居するということもできなくなるので、気をつけましょう。

リバースモーゲージのリスク

リバースモーゲージを利用するにあたって、次の3つのリスクを考慮しておきましょう。前もって知っておけば、いざというとき慌てずに済みます。

長生きリスク

自宅を担保としているため、借入額は土地評価額を基準に計算され、限度があります。もし、融資額を使い切ってしまうほど長生きしたら、高齢の身のまま無一文になり、家を手放さなければならないかもしれません。借入額を老人ホームへの入居費用に充てることもできますから、「●歳まで健康だったら住み替えよう」など、ライフプランを決めておきましょう。

金利変動リスク

借り入れを行っている最中に金利が著しく上昇したら、毎月の返済額も膨らむことでしょう。限度額まで借り入れを申し込まず、少しずつ利用するのが賢いと言えるでしょう。

土地の価格が下がるリスク

リバースモーゲージでは、一定期間ごとに土地の評価額が見直される場合もあります。評価額が下がれば、融資限度額も下がってしまう恐れがあります。また、売却の際にも契約時の想定より売却額が下がるため、相続人が返済額を負担するリスクが高まります。土地評価額が下がることを見越したうえで、無理のない金額を借り入れることが大事です。

リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージのメリットは、主に以下の3つです。

  • 今までの生活を変えずに済む

一般的な不動産売却方法であれば、自宅を売ってしまったら、あとはもう住めなくなります。その点、リバースモーゲージであれば、自宅を売却する約束はしても、そのままずっと住み慣れた場所で生活できます。
仮に引っ越しをするとなると、大きな労力を強いられます。住み替えの場所探しに始まり、荷物の整理、家財の運搬、各種手続きに至るまで、引っ越し自体は業者に依頼するとしても、かなりの負担です。引っ越しをしたら、今度は新しい環境に慣れるまで一苦労。リバースモーゲージなら、そのような負担は一切なく、融資を受けることができるのです。

  • 返済がラク

リバースモーゲージの月々の返済は利息だけなので、融資を受けた金額をしっかり有効活用できます。年金生活のため収入面が不安なシニアであっても、ゆとりある生活が実現できるでしょう。趣味に、旅行にと、第二の人生を楽しむことが可能です。

  • 空き家対策になる

リバースモーゲージは、自宅の最終的な売却意思を決めたうえで、安心して生活を継続できる融資の仕組みです。これは、相続人が自宅を住み継ぐことができない家の空き家対策になります。
空き家になってしまうと、さまざまなリスクが降りかかることになります。定期的に相続人が空き家に通って空気を入れ換え、草抜きをするなどの手入れをしないと、害獣のすみかになってしまったり、草が生い茂って隣家へ迷惑をかけたりといったトラブルになりかねません。放火の危険もつきまといます。
日本の空き家は今後もどんどん増えていくと考えられています。リバースモーゲージは、空き家対策に最適の方法といえるでしょう。

リバースモーゲージの注意点

メリットが魅力的なリバースモーゲージですが、一方で気をつけなければならないこともあります。以下の6つに留意しましょう。

  • 自宅の評価額は基準を満たしているか

リバースモーゲージは、金融機関が指定するエリア内に家があれば誰でも申し込みが可能というわけではありません。金融機関ごとに定めている最低評価額の基準をクリアしなければ、審査に通るのは難しいでしょう。基準額は、都市部をエリアに定めている金融機関ほど高額な傾向があります。一度調べてみましょう。

  • 希望する金融機関がマンションも可としているか

所有している自宅が一戸建てではなく、マンションの場合は要注意です。マンションの申し込みを不可としている金融機関もあるためです。マンションを可としている金融機関であっても、マンションの評価額基準が一戸建てよりも低額であることが多いため、調べてみましょう。

  • 子世代の収入は安定しているか

最終的に自宅を売却するのは相続人です。もし自宅を売却する際、売却額が融資額を下回ったら、契約によっては相続人が残債を支払う必要があります。もしものとき、子世代が残金を支払えるかどうかに留意しましょう。
もしも残債のことが不安であれば、契約時に「ノンリコース型」を選びましょう。ノンリコース型であれば、残債があったとしても相続人が支払うことはありません。ただそのぶん、金利が高く設定され、月々の返済額が大きくなる恐れがあります。

  • 自宅は本当に契約者所有のものか

古くからある家の場合、もしかしたら相続の手続きが終わっておらず、名義がご先祖のものとなっているかもしれません。リバースモーゲージでは、原則として契約者か配偶者名義の住宅しか融資対象にならないため、名義を変更する必要があります。
数代前からの相続手続きは煩雑になる場合もあります。もしリバースモーゲージの利用を考えているのであれば、真っ先に登記簿を確認しておきましょう。

  • 融資される金額は希望を満たすか

融資可能額が「月々このくらい借り入れをしたい」という希望を満たしていなければ、借り入れをしたとしても理想とする生活は送れずに、借入金額が積み重なってしまうことになります。
融資を受けてリフォームをしたい場合も同様です。借り入れできる金額がリフォームに必要な費用に届かなければ、結局リフォームはできず、相続人は相続できる家を失うことになります。
まずは、「ゆとりある生活」や「バリアフリー化」などの目的を果たすために必要な金額を割り出しましょう。そして、希望する金額を融資してくれる金融機関を、じっくり探すのがおすすめです。

  • 利息は支払い続けられる金額か

毎月の返済額が利息だけで済むとはいえ、年金暮らしの家計から捻出するのは、容易ではありません。月々の返済予想額を、家計に組み込んでシミュレーションしてみましょう。融資を受けても大きく赤字になってしまうようであれば、返済を続けるのは難しいといわざるを得ません。

リバースモーゲージの申込前に確認すること

デメリットやリスクを避けるために、リバースモーゲージを申し込む前には、以下のことを確認しましょう。

物件エリア

まずは、自宅が取扱金融機関の物件エリアに入っているかを確認します。

相続人の意向

自分たちが亡くなったら、相続人は相続する家を失うことになる場合もあります。それでもよいかをきちんと確認しておきましょう。また、自宅売却の際に返済金が生じるかもしれないことも、伝えておいたほうがよいでしょう。

認められる資金使途の種類と金額

資金使途の縛りは、各金融機関によって違います。自分たちが希望する用途が認められるかどうかを確認しましょう。
そのときに住み替えなども考慮に入れたライフプランを立てましょう。夫婦二人で、「●歳まで元気なら老人ホームを探す」などといった話し合いを行いましょう。
また金利変動リスクや土地評価額の下落リスクを考えると、借り入れは少しずつ行ったほうがいいでしょう。毎月、いくら借り入れたいのかを夫婦で話し合い、「最低でもこの金額は借り入れたい」「可能ならこのくらい借り入れたい」といった下限と上限を決めておくのが理想です。

不動産を活用した老後資金の調達方法「リースバック」

リバースモーゲージ以外にも、自宅を活用した老後資金の調達方法があります。それが「リースバック」です。

リースバックとは

リースバックとは、自宅を売却してからも、家賃を払いながら自宅に住み続けられる仕組みです。まとまったお金を手に入れつつ、我が家に住み続けることができます。

持ち家を売却するので、名義人としての権利は失いますが、新たに賃貸契約を結ぶことで、変わらず自宅を使用できます。老後、住宅ローンが支払えなくなったけれど自宅に住み続けたい、生活資金が必要だけれど今の生活を変えたくないといった人に向いています。

リースバックの特徴

リースバックの特徴は、通常の不動産売却と違い、家を売っても自宅を手放さずに済む点です。売却した後、再び自宅を購入することもできます。自宅の利用を、所有から賃貸に切り替えることで、老後の資金繰りを楽にできるサービスです。

リースバックを行うと、家が自分の所有権ではなくなるので、固定資産税がかからなくなります。また、売却先によっては、売却金の一部を賃料にあてられるため、毎月の家賃を心配する必要がありません。

リバースモーゲージとの違い

リースバックがリバースモーゲージと違うのは、売却金であり借入金ではないため、資金使途を制限されることが無いことです。事業資金にしたり、運用したり、債務整理に利用したりすることができます。

ただし、リバースモーゲージは所有権を確保できますが、リースバックは所有権を手放すため、いつまでも住み続けられるとは限りません。あくまで「賃貸」の扱いとなるため、いずれは転居をしなければならないことも、頭に入れておいた方がいいでしょう。

老後に必要な資金はどれくらい?老後資金の貯め方や今からできる準備方法を説明

リバースモーゲージを利用するならデメリットへの対策を行おう

生活を大きく変えることなく必要な生活資金が手に入るリバースモーゲージは、老後資金の新たな調達方法として注目を浴びています。メリットも大きいですが、当然のことながら、ご紹介したようなデメリットもあります。大事なのは、デメリットをきちんと理解した上で、対処法や対策を練っておくことです。万全の態勢で老後を迎え、悠々自適な生活を楽しみましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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