2023年1月10日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージの仕組みや背景をわかりやすく解説!住宅ローンとの違いも説明

リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受けられ、そのまま自宅に住み続けられるシニア向けのサービスです。元本の返済は、一般的には契約者が亡くなってから、相続人が自宅を売却すること等で行います。「住宅ローンと何が違うの?」「普通に売却するよりもお得なの?」といった疑問を持つ人のために、リバースモーゲージが普及するようになった背景や詳しい仕組み、メリットやデメリットについて解説します。

リバースモーゲージが普及している背景

今、リバースモーゲージが注目を浴びている理由は、大きく2つあります。ひとつは、都心や都市近郊に一軒家を構えた「持ち家世代」が高齢化してきていること。もうひとつは、年金制度でシニアを支えるには無理が生じてきていることです。

高度成長期に上京し、マイホームを建てた世代が、シニアに差し掛かる時代になりました。バブル期には土地が高騰し、億のお金をかけて念願の一戸建てを構えた人もいることでしょう。そういったシニアにとって、持ち家は最も資産価値の高い財産です。老後の生活資金が苦しいと悩んだとき、真っ先に「手放すか」と頭に浮かぶ存在が、持ち家といえるでしょう。これまでどおり住み続けながら、家を担保に融資を受けられるリバースモーゲージは、理想的な仕組みです。世帯分離が進み、子どもが家を継ぐというケースが少なくなってきたことも、リバースモーゲージの普及を後押ししています。

また、リバースモーゲージ普及の背景には、高齢化が進んだことで必要な老後の生活資金が増大し、さらに年金制度だけではシニアの生活を支えられないといった事情もあります。総務省の統計により「老後は(公的年金のほかに)2000万円~3000万円の資金が必要」という衝撃的な事実が洗い出されたことは、あまりに有名です。

リバースモーゲージは、各金融機関のほか、自治体の社会福祉協議会も制度の一つとして運営しています。シニアの「自助」の一環として、大きな財産である持ち家を活用することが推奨されていると捉えてもよいでしょう。

リバースモーゲージの仕組みや利用条件

リバースモーゲージの一般的な仕組みや、利用条件などについて解説します。取扱機関によって若干違ってくるため、実際に利用を検討するときには、個別によく確認しましょう。

リバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージは、自宅を担保にして、金融機関などから借り入れを受ける仕組みです。借り入れに対する返済は、契約者が生きている間は毎月利子だけを支払い、元金の返済は契約者が亡くなったら、自宅を売却すること等で行います。

「家を売りたいけれど、住む家がなくなるのは困る」「いずれ老人ホームに移りたいが、住み替えのための費用が足りない」といった人は、リバースモーゲージを活用すれば、今の家を自分の名義で残したまま、融資を受けることができます。

リバースモーゲージの利用条件

リバースモーゲージの主な利用条件は、以下の通りです。

  • 年齢は55歳から
    55歳以上から申し込み可能という機関がほとんどです。
  • 対象となるエリア
    各機関がエリアを設定しています。都市部の一戸建てが対象となり、基本的にはマンションは除外されます。※マンションが対象となる場合もあり
  • 資金の用途が事業用ではなく、生活のためであること
    とくに社会福祉協議会など自治体が運営するリバースモーゲージの場合、社会福祉目的のため、資金の用途は生活費に限るなど限定されています。ほか、多くの金融機関でも、事業用に借り入れをするのはNGとされています。

リバースモーゲージを利用するための条件は?マンションでの利用条件など

リバースモーゲージと住宅ローンの違い

リバースモーゲージは毎月の返済が利子だけで、元金は契約者が亡くなってから、自宅売却等により返済します。自宅売却による返済を選択した場合、契約人が亡くなれば土地も建物も売却するため、相続人は以後の固定資産税を負担することがありません。「空き家を売らなければならない」という悩みも不要です。

住宅ローンは完済時期をあらかじめ設定し、元金と利子分を月割で返済します。住んでいる人が亡くなった場合、名義は相続人に移るため、固定資産税を負担し続けることになります。空き家の管理や売却手続きなどは、全て相続人にゆだねられます。

リバースモーゲージのメリット・デメリット

リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージのメリットは、以下の通りです。

①自宅に住み続けながら資金調達ができる

済んでいる家を、住みながら担保にしてお金を借りられるので、無理がありません。「資金調達をしたいけれど、やったことのない株や投資信託に手を出すのは怖い」と足踏みしている人にもおすすめです。

②引っ越し費用がかからない

通常、家を売ってしまえば引っ越しをしなければなりません。新たに移る住居を取得する費用、賃貸契約のための初期費用などにはまとまったお金が必要です。家財を丸ごと移す肉体的負担も、シニアには辛いものです。リバースモーゲージなら、経済的、肉体的負担が一気に減らせます。

③シニアでも借り入れが可能

シニアが融資を受けたいと考えたとき、年齢制限の壁に阻まれてしまうことがあります。リバースモーゲージは、そもそもシニア向け商品なので、シニアでも借り入れが可能な数少ないサービスの一つです。

④死後スムーズに自宅を売却できる

親の死後、空き家になった実家の管理に苦労する子世代が増えてきました。家の売却を生存中に決めておけば、死後、スムーズに空き家の整理ができます。

リバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージには、デメリットもあります。主なものは以下の通りです。

①長生きリスクがある

長寿は喜ばしいことながら、長生きすると融資限度額まで借り入れてしまい、必要な時に追加の借り入れが出来なくなる危険性があります。契約時には、毎月いくらずつ、何年継続して借りられるかを確認し、「●歳になったタイミングで老人ホームに入る」などといったライフプランを練りましょう。

②土地評価額が下がるリスクがある

土地評価額が下がってしまい、最終的な売却時に、返済金額が売却金額よりも多くなってしまえば、相続人がオーバーした分の支払いを求められる場合もあります。

③通常の不動産売買より手にすることの出来る金額が少ない

融資可能額は、評価額の50%前後で設定するのが一般的です。純粋に不動産として土地を売却した場合よりも、手にするお金は少なくなります。

④金利変動リスクがある

リバースモーゲージの融資金利は、変動金利を基準としているのが一般的です。金利が著しく変動したら、毎月の支払額の負担が大きくなる場合があります。

⑤資金用途に制限がある

資金用途は事業用以外に限られていることが多いため、投資目的でお金を得たい、借入金を事業の救済措置に使いたいといった人は要注意です。

リバースモーゲージで老後の人生を快適なものに

リバースモーゲージは、老後資金を調達してゆとりのある人生を送りたいと考えているシニアに最適な方法です。「年金暮らしでは貯金を潰していくだけ、何か方法はないか」と考えているなら、最大の資産である「家」に注目しましょう。

夫婦二人でこれからのライフプランを描き出し、また子どもたちなど相続人の了承を得ながら、リバースモーゲージの利用を検討するのが大事です。みんなが健康で長生きできる時代ですから、退職してからの人生を、より実り多いものにしていきましょう。

老後に悠々自適な生活を送るために知っておきたいこと

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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