2022年11月21日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージ型住宅ローンとは?従来の住宅ローンとの違いやメリット、デメリットを解説

リバースモーゲージ型住宅ローンとは、リバースモーゲージの仕組みを活用した住宅ローンです。リバースモーゲージは自宅を担保に老後の生活資金を借り入れできる仕組みで、自分が亡くなった後、自宅を売却すること等で返済を行います。従来の住宅ローンとの違いや特徴、メリットやデメリットをご紹介します。「リバースモーゲージ型住宅ローンの申し込みを迷っている」という方は、ぜひこの記事を判断材料としてください。

リバースモーゲージ型住宅ローンとは

リバースモーゲージ型住宅ローンとは、リバースモーゲージを活用し、住宅の建設・購入、リフォームなどの費用の借入を行い、利息を返済していくシステムです。住宅金融支援機構の【リ・バース60】を活用した商品で、複数の金融機関が取り扱っています。

リバースモーゲージは、大きな資産である自宅を担保に銀行などから融資を受ける仕組みです。返済額は、存命中は利息のみで、契約者が亡くなった後、自宅を売却すること等で一括返済します。老後、年金だけでは生活が難しいという昨今の問題を受け、注目されています。

通常のリバースモーゲージは、借入金を老後の生活資金などに使えます。一方で、リバースモーゲージ型住宅ローンは、住宅関連資金への融資であり、生活資金等には使えません。

利用例としては、「一軒家からマンションへの住み替え」「住宅のバリアフリー化のためのリフォーム」「高齢者施設への入居一時金」「今までの住宅ローンの借り換え」などがあります。定年を機に住み替えを検討している人、自分や配偶者の足腰が弱ったときのためにリフォームしておきたい人などにおすすめです。

リバースモーゲージ型住宅ローンの魅力(ポイント)

リバースモーゲージ型住宅ローンには、次の3つの魅力があります。それぞれ、詳しくご紹介します。

老後、ゆとりある生活を送れる

リバースモーゲージ型住宅ローンは、従来の住宅ローンよりも、月々の返済額を安く抑えられます。これは、がむしゃらに働くことで収入を増やすことが難しいシニア世代にとって、老後の生活を安心して遅れるという意味を持ちます。

物価が高騰しているのに年金の金額はなかなか上がらず、不安を抱えている人も多いことでしょう。物価上昇がいつまで続くかは見通しが立っていません。「通常のローン返済では毎月赤字となってしまう」というご家庭もあるのではないでしょうか。

収入が増えない以上、生活を切り詰めるには節約しかありません。しかし、電気をこまめに消す、使っていない水は止めるといった節約をしたところで、環境のためにはなりますが、節約面においては微々たる効果しか生み出しません。食費を過度に節約すると、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

その点、通常の住宅ローンをリバースモーゲージ型住宅ローンに借り換えれば、月々の返済額は利息のみ。月々の返済額をぐっと減らすことができ、どんな節約方法よりも効果があります。節約しているにもかかわらず、生活に変化が生まれないのも、大きな魅力です。

新たな生活を安全安心な住まいで始められる

定年まで働いていた人は、シニアになると家にいる時間がかなり長くなります。それまで気づかなかった家の傷みや、老朽化した水回りが目について、「リフォームしようか」と思い立つ人もいるでしょう。若いころには気にならなかった段差や階段を負担に思い始めるのも、この頃です。

しかし、先行き不安なこの時代です。たとえ退職金が手元にあっても、リフォームをためらってしまう気持ちはありませんか。少しの負担で、安全安心な住まいを実現したい。そんな願いをかなえるのが、リバースモーゲージ型住宅ローンなのです。

完全バリアフリーで、水回りもすっかりきれいになった我が家なら、きっと家にいる時間がぐっと楽しくなります。料理やオンラインでのヨガレッスン、お風呂でアロマを焚いてリラックスなど、新たな趣味が増えるかもしれません。

利便性の高いマンション暮らしを実現できる

郊外の一軒家をマイホームとして購入した人の中には、「年を取って車を手放したら、どうやって生活しよう」「普段よく通う病院やスーパーが遠くて、若い頃より疲れてしまう」という悩みを抱えている人がいると思われます。庭の手入れをするのも、大変になってきているのではないでしょうか。

騒音が気にならない、子どもに部屋を与えられるなど、子育て世代の頃にはメリットの大きかった一軒家も、夫婦二人だけの生活になると負担を感じる場面が多くなるものです。

一方、駅近のマンションであれば、生活に必要なことのほとんどは徒歩数分の圏内で済ませられます。庭の草むしりをしなくて済みますし、専有部分以外であれば、修繕をする必要もありません。マンション住まいは、シニア向きのライフスタイルであるといえるでしょう。

シニアになってからの住み替えは、とくに金銭面で容易ではありません。しかし、リバースモーゲージ型住宅ローンを利用すれば、一軒家からマンションへの住み替えも、少ない負担で実現します。

この際、いつも遊びに行っている街や、住んでみたいと感じていた街へ、夫婦で引っ越してみませんか。玄関を出れば、いつでもお気に入りの風景が現れる。そんな街なら、ふだんのお散歩すら楽しくなります。

従来の住宅ローンとの違い

リバースモーゲージ型住宅ローンと、従来の住宅ローンとの違いは、大きく3つあります。それぞれご紹介します。

毎月の返済額が少ない

リバースモーゲージ型住宅ローンは、毎月の返済が利息のみです。一方、従来の住宅ローンは、元金と利息を毎月返済していきます。よって、リバースモーゲージ型のほうが毎月の返済額がぐっと少なくなります。

定年を迎え、収入が減ってしまったシニアにとって、毎月かなりの金額を返済していくのは現実的ではありません。生活資金をきちんと確保するためにも、負担は少ないほうがいいでしょう。

対象が60歳あるいは50歳以降である

リバースモーゲージの対象はシニア世代です。一般的には、満50歳以上が契約できます。金融機関によって年齢が異なりますので、確認が必要です。

一方、従来の住宅ローンを、収入の少ない高齢者が利用するのはなかなか難しいといえます。審査が通ったとしても、借りられる金額が少なくなってしまったり、返済可能期間が短いため毎月の返済額が多くなってしまったりして、新居購入や高額のリフォームは諦めなければならないかもしれません。また、次世代に負担をかける可能性も高くなります。

亡くなった後に家や土地が売却される

リバースモーゲージ型住宅ローンは、繰り上げ返済などを行わない場合、契約者本人や配偶者が亡くなってから、誰も住まなくなった家を売却すること等で返済にあてます。自宅を売却しての返済方法を選択した場合、資産としての家や土地は残りません。

一方、従来の住宅ローンでは、返済が終われば家や土地は資産として残ります。子世代に相続させたり、借家として活用したりすることが可能です。

リバースモーゲージ型住宅ローンの条件や必要書類

リバースモーゲージ型住宅ローンを利用するには、いくつかの条件があります。必要書類と合わせて解説します。条件も必要書類も、各金融機関で変わってきますので、一般的な例をご紹介します。

利用条件と資金使途

まずは申し込み時の年齢が、満60歳以上であることをクリアしていなければなりません(一部金融機関では50歳以上)。また、各金融機関が対象エリアとしている地域に住んでいることが条件です。保証人は、必要な場合と不要な場合があります。

資金使途は、金融機関が示す住宅費用のための支払いに限られます。「住宅購入資金」「既存の住宅ローンの借り換え」「子世帯などが済む住宅の購入資金」「居住する住宅のリフォーム資金」などです。

必要な書類

申し込みに必要な書類は、各金融機関によって違います。免許証や保険証などの身分を証明できるもの、前年度の源泉徴収票や確定申告書など収入を証明できるもの、担保の対象となる自宅の土地面積や築年月が分かる書類などが必要です。

リバースモーゲージ型住宅ローンのメリットとデメリット

リバースモーゲージ型住宅ローンには、メリットとデメリットがあります。それぞれ、主なものを解説します。

リバースモーゲージ型住宅ローンのメリット

・低負担で住宅費用を確保できる

毎月の返済額が利息だけなので、収入が少なくなるシニアであっても安心して新居購入やリフォームを行うことができます。快適な住まいでの生活が、お金の心配をせず、すぐに手に入ります。

・返済のタイミングを自分で決められる

リバースモーゲージの場合、通常は契約者やその配偶者など、住人が全て亡くなってから住宅を売却し、元金返済にあてます。しかし、存命中であっても自宅が不要になったタイミングで売却したり、一括で現金返済したりといったことも可能です。「相続人に金融機関とのやり取りや手続きなど、手間をかけさせたくない」といった場合に有効です。

・終活の一環になる

死後、自宅売却によって元金を返済するということは、存命中に、すでに自宅の売り先を決めておくことと同じです。葬儀や墓、相続などについて用意しておく「終活」の一環になります。実家の売り先が決まっていれば、残された子世代は安心です。

終活とは?終活をするための準備方法やいつから始めるのかなどやり方を解説

リバースモーゲージ型住宅ローンのデメリット

・最終的に、子世代に負担がかかる可能性がある

元金の金額が大きくなると、最終的に自宅を売却しても、返済額としては不足してしまうかもしれません。その場合、相続人が現金などで返済を行うことになります。ただし、売却金額が元金に届かない場合でも残金が返済不要となる「ノンリコース型」を選んでおけば、相続人に負担をかけることはありません。

・自宅を相続させられない

契約人夫婦が亡くなれば、住宅は売却され、資産としてはなくなります。相続人は、慣れ親しんだ実家を失ってしまうということになりますから、子世代とよく話し合って決めることが必要です。

・金利変動のリスクがある

リバースモーゲージ型住宅ローンの多くは、変動金利での契約となります。市場の動きにより、毎月に支払額は変動するため、注意が必要です。

安心できるシニアライフを考えシミュレーションしよう

リバースモーゲージ型住宅ローンは、シニアでも低負担で住み替えやリフォームが行える融資の仕組みです。定年後の住まいについて考えるなら、検討材料の一つに加えてみてはいかがでしょうか。「二世代ローンを利用する」「リバースモーゲージ型にする」「今の家を売却する」など、いろいろなケースをシミュレーションし、家族が一番納得する形を見つけましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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