2023年1月10日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージを利用するための条件は?マンションでの利用条件など

自宅を担保に融資を受けられるリバースモーゲージは、契約者が亡くなった後に自宅を売却等して元金を返済する、シニア向けの借り入れシステムです。老後の生活資金調達のために検討している人も多いのではないでしょうか。便利な仕組みではありますが、契約者の年齢や土地、建物などに条件があります。中には、リースバックに向いている人もいるかもしれません。リバースモーゲージの基本的な条件について解説します。

リバースモーゲージとは?

まずはリバースモーゲージの基礎知識や、住宅ローンとの違いについて解説します。

基礎知識

リバースモーゲージとは、自宅を担保にし、金融機関などから借り入れを行うシニア向けの融資システムです。担保になった自宅には、契約者が亡くなるまでずっと住み続けることができます。

契約者が亡くなるまでは、毎月の返済は利息のみです。元金は、契約者が亡くなり空き家になった後、相続人が自宅を売却する等して返済します。

なかには、契約者が一人暮らしをしている家ばかりではなく、夫婦2人暮らしというケースもあるでしょう。その場合、金融機関と相談の上、配偶者が亡くなり空き家となった後に売却するという契約にすることもできます。

シニア世代を迎え、年金生活に突入すると、急に家計が苦しくなる世帯もみられます。そんなとき、シニアはたくさん働いて家計を補填したり、金融機関から大きな資金を借り入れたりといったことができません。リバースモーゲージは、シニアの住環境を大きく変えることなく、少しの返済で生活を楽にできる借り入れの仕組みなのです。

また、高齢になるとバリアフリーのためのリフォームや、高齢者専用マンションへの住み替えが必要になることもあります。まとまったお金を調達する手段としても、リバースモーゲージは有効です。

住宅ローンとの違い

多くの人が利用する代表的な借り入れシステムとして、住宅ローンがあります。「住宅ローンとはどう違うのだろう?」と疑問に思う人もいるでしょう。リバースモーゲージと住宅ローンの主な違いは、「目的」「使途」「返済の仕組み」「対象年齢」の4つです。

住宅ローンを組む目的は、自宅の取得にあります。対してリバースモーゲージは、最終的に家を手放します。また、住宅ローンのために借り入れる資金は、住宅取得のための用途に限られます。リバースモーゲージの場合、事業や投資目的でなければ、資金の使途は自由です。

なお、住宅ローンでは毎月の返済額に元金が含まれますが、リバースモーゲージは利息のみです。そしてシニアが住宅ローンを組むのは難しいですが、リバースモーゲージの対象年齢はむしろシニア層で、若年層が利用することはできません。

公的機関と民間のリバースモーゲージの違い

リバースモーゲージには、銀行などの金融機関が提供しているものと、公的機関が提供しているものとがあります。仕組みの基本的なところは同じですが、年齢や金利、融資金額の上限などに違いがあります。

公的機関も、金融機関も、毎月利息だけを支払って契約者が亡くなった後に相続人が一括返済するという仕組みは同じです。ただ、公的機関のリバースモーゲージには困窮者救済の意味合いがあります。財産がなく生活が逼迫して、自分たちが住んでいる自宅くらいしか財産がないといった人向けの制度です。よって所得制限があったり、融資金額が限られていたりします。金利も低めに設定されています。

リバースモーゲージを利用できる条件

リバースモーゲージには、利用できる条件があります。各自治体の社会福祉協議会が扱っている「不動産担保型生活資金」と、金融機関が扱う商品とでは条件が違う場合もありますから、それぞれ説明します。※公的機関のリバースモーゲージには、要保護(生活保護受給)世帯向けにもう少し条件の緩い不動産担保型生活資金もあります。

利用できる年齢条件

・公的機関の場合

原則として世帯全員が65歳以上であること、所得が一定以下であることが条件です。世帯員の収入が、市区町村民税非課税または均等割課税程度の世帯が対象になります。

・金融機関の場合

50歳以上、60歳以上など、公的機関より若い年齢から利用できるところがほとんどです。所得の上限の制限はありません。

貸付金額

・公的機関の場合

1か月あたり30万円以内、3ヶ月ごとに融資を受けられます。貸付限度額は、土地評価額の70%程度です。

・金融機関の場合

顧客の希望と審査の内容により、借入可能金額が決まります。融資の上限は土地評価額の50%程度です。

資金用途

公的機関であっても、金融機関であっても、あくまで生活資金としての貸し付けを想定しています。事業目的や投資には使えませんので、注意が必要です。

リバースモーゲージを活用できる人

条件を踏まえ、リバースモーゲージを活用できる人の事例をご紹介します。

生活資金の赤字補填として10万円ほどの借り入れ

公的年金だけで生活するには無理があります。国がまとめたデータによると、シニア夫婦2人世帯の場合、公的年金以外に毎月8万円ほどの資金が必要との試算も。月々、決まった額を借り入れられれば、手元の資金を取り崩す必要はありません。

住宅ローンを借り換え

毎月、多額の返済を必要とする住宅ローンを借り換え、リバースモーゲージ型にすることができます。元金を毎月返済する必要がなく、利息だけを返済すればよいため、負担額はぐっと小さくなります。

バリアフリーにリフォーム

自宅をバリアフリーにリフォームするために多額の現金が必要な場合があります。この際も、リバースモーゲージの仕組みを利用すれば、預金を崩す心配はありません。

リバースモーゲージの担保となる不動産の条件

気になるのは、不動産の条件かと思われます。例えば一戸建てではなく、マンションを担保としたいときは、どうすればよいのでしょうか。金融機関によって違いますが、一般的な不動産の条件を解説します。

不動産の条件

・公的機関の場合

所属する自治体に居住用不動産を有し、自治体が定める土地評価額以上であることが条件です(東京都社会福祉協議会の場合はおおむね1500万円以上)。また、マンションなどの集合住宅は対象外となります。持ち家に、実際に契約者やその夫婦が住んでいることも、条件として挙げられます。

・金融機関の場合

金融機関が対象エリアとしているところに住居を構えていることが条件です。土地評価額の下限は金融機関によって違い(例:千葉銀行「ちばぎんセカンドライフローン」の場合は500万円以上)、また審査のうえ融資が可能かどうかを決定します。なお、マンションなど集合住宅を対象とする金融機関もあります。

マンションの場合は、好条件であればあるほど、条件をクリアできる可能性が高まります。都心など都市近郊にあり、「築浅」「駅近」といったニーズの高いマンションであれば、マンション可能としている金融機関に相談してみましょう。

リバースモーゲージの対象となるマンションの条件や取り扱う金融機関を紹介

リバースモーゲージのメリット

ここで、リバースモーゲージのメリットを確認しておきましょう。

住み慣れた家にずっと住める

契約者が生きている間はずっと住み続けられるので、安心感があります。住環境を変えずに資金を調達したいと考えている人にぴったりです。

もしかしたら、リバースモーゲージの恩恵を最大に感じられるのは、リフォーム時かもしれません。「自宅をバリアフリーにリフォームしたいけれど手持ちの資金がない」という人の中には、金利が高いなど返済負担が重めのローンに申込んでしまう人もいます。するとリフォームは可能でも、返済が辛く生活が立ちゆかなくなる可能性があります。せっかくリフォームした自宅を手放してお金を作る羽目になるかもしれません。

リバースモーゲージなら、まとまった金額を借り入れてしっかりリフォームできるうえ、返済金額が家計を過度に圧迫することもありません。家を手放さないで済むどころか、自宅をさらに住みやすい住環境にアップデートできるのです。

住み替え費用が手に入るうえ、持ち家も手放さずに済む

なかには、高齢者専用マンションなどへの住み替え費用のためにリバースモーゲージを検討している人もいるでしょう。リバースモーゲージは、住み替え時にも大きなメリットがあります。

自宅を売却して資金を作り高齢者マンションに住み替えた場合、多くのケースで居住面積が元の自宅より狭くなります。自宅から持ち出せる家財が限られてしまう状況で、持って行けない家財は処分したり、貸倉庫などを新たに契約して保管したりしなければなりません。大変な労力がかかり、精神的にも負担です。

リバースモーゲージなら、持ち出せない家財はそのまま元の自宅に置いておくことができます。ときおり自宅へ戻り、衣替えのため衣類を入れ替えたり、ゆっくり生前整理を進めたりと言ったことが可能になるのです。

生活にゆとりが生まれる

月々の返済負担が少ないため、経済的なゆとりが生まれます。経済的なゆとりは、精神的なゆとりにつながります。

定年を迎え、悠々自適な生活を送りたいと願う人の中には、「年金生活では趣味にお金をかけられない」と危惧する人もいるでしょう。リバースモーゲージで毎月少しずつ趣味のためのお金を借り入れられれば、第二の人生を謳歌できるでしょう。

また、民間の金融機関が提供するリバースモーゲージでは、受け取り方をある程度自由に選べます。ときには一括して少しまとまったお金を借りるなど、ライフスタイルや必要性に合わせて資金を調達できます。

リバースモーゲージのデメリット

リバースモーゲージには、デメリットもあります。主なデメリットは以下の3点です。

長生きリスクがある

長寿は喜ばしいことですが、存命中に借り入れた金額が上限に達すると、それ以上の融資は受けられなくなってしまいます。家計の補填にと借り入れを続けていた人は、借り入れがストップした後に生じる赤字額をどう補填するか、考えなければならなくなります。

また、元金を返済しない間は利息を支払い続けなければならないため、長く生きるほど総返済額が大きくなっていきます。

金利上昇リスクがある

リバースモーゲージの多くは、金利を定期的に見直す「変動金利」型です。よって金利が上がれば、借入金額が変わらなくても返済額は増えます。

今後金利がどうなるか分かりません。常に市場動向をチェックし、急な多額返済に備える必要があります。

借入金が自宅の売却額を超えてしまうかもしれない

不動産価格が急に下落した場合など、借入総額が自宅の売却額を超えてしまうケースもあります。契約の内容によっては、超過分を相続人が支払わなければならないかもしれません。

大抵は不動産価格の変動幅を見込んだ上限額が設定されるので、あまり問題になることはありません。また、超過分が生じても相続人が支払の責任を負わない「ノンリコース型」を設定することも可能です。不安な場合は、「ノンリコース型」を選ぶのがよいでしょう。ただしその場合、金利は少し高めに設定されます。

リバースモーゲージが利用できない場合のリースバック

年齢や不動産がリバースモーゲージの条件に合わないなら、リースバックを検討するのも一つの手です。リースバックとは、自宅を売却した後もそのまま賃貸として自宅に住み続けられる仕組みで、自宅に住んでいられるという点では、リバースモーゲージと似ています。

リースバックとリバースモーゲージの違いで決定的なことは、権利関係です。リースバックは、存命中に自宅を売却してしまうので、土地の権利は買主に移ります。一方、リバースモーゲージは自宅を担保とするだけなので、存命中は土地の権利を持ったままです。

また、リースバックは自宅を売却した後、賃貸として家賃を支払い続けることになります。一戸建ての家賃となると、土地柄によってはかなりの金額になることが予想されます。一方で、リバースモーゲージの毎月返済額は利息のみです。

リースバックは「借入」ではなく「売却」です。資金用途を限定されることもなく、自由度が高いものです。「リバースモーゲージが条件に合わない」と感じる人は、検討してみるのもいいでしょう。

リバースモーゲージでゆとりのある老後を実現

リバースモーゲージの条件がクリアできたなら、活用しない手はないといっていいでしょう。手持ちの資金を崩すことなく、安定した生活をしたいと望む人に、リバースモーゲージの仕組みは最適です。

また「子どもは跡を継ぎたくないと言っている。死後、この家をどうしよう?」と終活に悩む人にとっても、リバースモーゲージは便利なシステムといえます。老後も自活し、家をスマートに手放すことは、子世代の負担を減らすことにつながるためです。家族みんながゆとりある生活を実現するためにも、リバースモーゲージを検討しましょう。

終活とは?終活をするための準備方法やいつから始めるのかなどやり方を解説

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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