2023年2月3日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージは田舎の空き家問題を解決する?高齢化社会の救世主なのか?

最近、シニアの新たな資金調達法として注目を浴びているのがリバースモーゲージです。自宅を担保に金融機関等から融資を受ける仕組みで、毎月の返済は利息だけ。ご契約者がお亡くなりになられた後に相続人が家を売却するなどして元金を返済します。このリバースモーゲージ、「空き家問題を解決する」「高齢化社会の救世主」などと言われていますが、本当なのでしょうか?リバースモーゲージが生まれた背景や、現代社会における役割について解説します。

リバースモーゲージとは

リバースモーゲージとは、自宅を担保としてまとまった金額の借り入れを行うローンの仕組みです。借り入れ方法は金融機関によりますが、毎月一定額を借り入れたり、一括してまとまった金額を借り入れたりすることができます。

通常のローンと最も違うところが、返済方法です。借り入れた元金を返済するのはご契約者がお亡くなりになられた後、相続人が行うこととなります。相続人は、担保となっている家を売却するか、現金で一括返済するなどして支払いを終了します。契約者が返済するのは、毎月の利息だけです。

借り入れができる金額に対して毎月の返済額が低額なため、年金しか収入がない高齢者などにはとくに嬉しい融資方法といえます。実際、借り入れから返済までの期間が長くなるのを避けるため、リバースモーゲージの対象年齢は60歳以上、あるいは50歳代後半からとしている金融機関が多いのが特徴です。

また、資金の用途が限られているのも特徴の一つです。一般的な担保型ローンであれば使い途は自由ですが、リバースモーゲージの場合は、あくまで生活資金やリフォーム、介護など、生活のための費用に限られます。用途の縛りは金融機関によっても若干違いますが、基本的には投資や事業を始めるための資金としては使えません。

シニアからしか契約できず、また生活資金としてしか使えないという特徴から見れば、経済的に不安定になる老後を支えるためのローンであるといえるでしょう。

リバースモーゲージが出来た背景

リバースモーゲージは欧米で生まれた融資方法です。とくにアメリカで発展し、「家を担保にお金を受け取り、契約者の死後に家を売却する」という今の形を確立しました。

日本にリバースモーゲージの制度ができたのは1981年、武蔵野市の福祉制度が初めてです。その後、複数の銀行や自治体が仕組みを作りましたが、バブル崩壊以降は不動産の価値が暴落して継続が難しくなりました。

しかし、2000年代以降、また各金融機関や自治体でリバースモーゲージの仕組みが誕生するようになりました。その背景には、以下の3つの社会課題があります。

超高齢化社会の到来

日本は平均寿命が延び続け、今では男女ともに80歳を超えています。60歳を定年とした人生設計では、その後数十年の人生を支えて行くにはあまりに心許なく、老後資金の調達方法が切実に望まれるようになってきました。

現役世代の平均年収の下降

バブル以後、現役世代の平均年収は下がり続けています。結果、親の老後の面倒を見ることができる人は少なくなってきました。子どもからの仕送りを当てにできる高齢者が減り、年金だけでやりくりしなければならないシニアが増えています。

ライフスタイルの変化による相続人不在

高度成長期以降、「子世代は親の家から出て、マイホームを建てて初めて独立したといえる」という感覚が一般的になってきました。三世代同居の家が減ったことで、家族がまとまって暮らすことで生じるコスト軽減効果が享受できなくなってきています。このため、子世代と同居していない高齢者の貧困が目立つようになりました。

以上のような背景から、リバースモーゲージは収入の少ないシニアであっても借り入れができる「高齢社会の救世主」であるといわれています。

リバースモーゲージと田舎の空き家問題

また、リバースモーゲージは田舎の空き家問題を解決するとも言われています。

リバースモーゲージでは、契約者の死後、誰も住む人がいなくなった家を相続人が売却することで返済が完了しますが、借り入れをした金融機関などが家の売却活動を支援してくれるケースもございます。家を相続する気のない子どもにとっては、実はとてもありがたいことです。

なぜなら、相続が始まってから家の売り先を探す場合、「老朽化した家を買い取ってくれるところがどうしても決まらない」と困ることがあり得るためです。

相続後、売り先が決まらなければ決まらないほど、家の維持費がかかります。電気や水道などのライフラインは止めたとしても、定期的に空き家へ通って風を通さなければ家は湿気で傷んでしまいますし、草抜きを怠れば近隣からクレームが来るかもしれません。台風の後には、窓ガラスなどが割れていないかといった点検が不可欠です。

こういった空き家の維持が可能な現役世代は、どれほどいるでしょうか。自宅が近くだったら通えるかもしれませんが、遠方の場合は、業者等に委託するほかありません。

リバースモーゲージはある程度資産価値のある家でなければ十分な融資が受けられないため、「田舎の古い一軒家」などではまだ利用が難しいかもしれません。しかし、今後リバースモーゲージの商品が増えれば、また田舎での需要が増えてくれば、田舎の空き家問題を解決する可能性も十分に考えられます。

リバースモーゲージと高齢化社会

高齢化社会にとって、リバースモーゲージは豊かな生活を約束してくれる切り札といえます。担保となっている自宅に住みながら融資を受けられ、しかも毎月の返済額が低額なので、手元に資金がなくて不安な高齢者には最適な制度です。

退職後の生活が不安な人も、親の年金生活に限界を感じている子世代も、今住んでいる「家」が融資を受けるための財産になると意識しましょう。「借金」に抵抗感がある方も、こうして財産を有効活用できると気づけば、他の余剰不動産等の財産にも目が向くはず。リバースモーゲージは、「資産の活用が下手」といわれる日本人が、高齢化社会をきっかけに運用上手になるための仕組みなのかもしれません。

まとめ

リバースモーゲージは、高齢化社会に生きる私たちにとって、また空き家問題に苦しむ子世代にとって、救世主となり得る存在です。資金不足に頭を悩ませている人は、ぜひ、リバースモーゲージを取り扱っている金融機関に一度問い合わせてみてはいかがでしょうか。資産額と融資可能額を見積もってもらうだけでも、将来不安を少し取り除けるのではないでしょうか。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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