2023年6月14日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージと任意売却の違いとは?どちらが良いのか選択するポイントを解説

住宅ローンの返済が難しくなったとき、競売を避けるには主に「任意売却」と「リバースモーゲージ」、「リースバック」の3つの選択肢があります。任意売却は競売前に家を売却し、売却金でローンのいくらかを返済する方法です。リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受けローンを返済する方法で、そのまま家に暮らすことができます。今回は、とくに任意売却とリバースモーゲージについて、どちらを選択すべきかのポイントを解説します。

リバースモーゲージとは?

リバースモーゲージとは、自宅を担保に借り入れを行う融資の仕組みです。毎月、利息だけを返済し、元金は契約者の死後に相続人が家を売却するなどの方法で完済します。金融機関ごとに対象年齢や金利条件、融資限度額は違いますが、一般的な仕組みは以下の通りです。

対象年齢はシニア層

リバースモーゲージは「55歳以上」「60歳以上」などといった年齢制限があり、シニア向けの商品です。シニアとなって生じる、以下のようなニーズに応えています。

  • 年金暮らしとなり、住宅ローンを払うのが苦しい
  • 収入が減って毎月の生活費を工面できない
  • 老後のためバリアフリー住宅にリフォームしたい
  • 子世代のマイホーム費用や孫世代の教育費用を支援したい
  • 子世代が住み継がない自宅の処分方法を生前に決めておきたい

融資限度額は自宅の評価額の5~6割

融資限度額は5000万円~1億円ほどとしている金融機関が多いですが、実際の融資限度額は、自宅の評価額で決まります。一般に、リバースモーゲージの融資限度額は物件評価額の50%から60%程度です。

借り入れ方法は3パターン

借り入れの方法は、やはり金融機関によって違いますが、主に次の3パターンがあります。複数の借り入れ方法から選べる機関がほとんどです。

【融資限度額に達するまで】

  • 毎月、一定額を借り入れる
  • 一括でまとまった金額を借り入れる
  • 店頭やATMで随時借り入れができる

投資や事業目的の借り入れはNG

使い道は、月々の生活費や旅行費、リフォーム費など、老後の生活資金の範囲で自由に決められます。ただし、投資目的や事業目的の借り入れはできないため、「定年後、新しく事業を興したい」といった人の資金調達先とはなりません。

リコース型とノンリコース型がある

リバースモーゲージは月々の返済が利息のみなので、生前は負担が軽減されます。しかし、相続人は家を売却するなどして元金を一括返済しなければなりません。このとき、家を売却しても財産が残ったら、相続人が残債を負担しなければならないのが「リコース型」、負担しなくてもよいのが「ノンリコース型」です。

ノンリコース型はリコース型に比べて金利が高くなる傾向にありますが、ノンリコース型の方が人気です。契約者としては「相続人にあまり迷惑をかけたくない」という意向があるのでしょう。

住宅ローンに特化した商品がある

リバースモーゲージには、使い道を「住宅費用のため」と制限した住宅ローン特化型の商品が用意されています。リバースモーゲージ型住宅ローンとしては、住宅金融支援機構が提携する「リ・バース60」が有名で、多くの金融機関が「リ・バース60」を利用した住宅ローン商品を展開しています。

リバースモーゲージ型住宅ローンであれば、住宅ローンの借り換えも可能です。毎月の返済額が利息のみとなるので、負担がぐっと軽くなります。

任意売却とは

任意売却とは、住宅ローンが返済できなくなったとき、売却しても残債が出てしまう自宅を売りに出すことをいいます。

通常、家を売りに出すときは、住宅ローンを返し終えていなければなりません。あるいは、家を売却することで借入金を一括全額返済し、抵当権を解除してもらう必要があります。売却しても残債があり、残債をすぐに支払うことができない状態であっても、抵当権を解除してもらって家を売るのが「任意売却」です。

任意売却を行う場合には、住宅ローンを組んでいる金融機関に相談し、抵当権解除について承諾を得る必要があります。家を売却しても残ってしまう債務については、金融機関と話し合いのうえ、月ごとの返済額などを決めます。

住宅ローンが返済できないのに任意売却の相談を行わないでいると、滞納するごとに立場は悪くなり、最終的には自宅が強制的に競売にかけられてしまいます。競売と任意売却とでは、以下のような違いがあります。

  • 競売だとネットなどに競売物件として掲載されてしまうため、近隣に知られてしまう可能性が高い
  • 競売では明け渡しの日を決められないが、任意売却であれば交渉できる
  • 競売よりも任意売却の方が、売却金が高くなる

以上のように、競売にはメリットがないケースがほとんどです。競売にかけられる前に、金融機関へ「競売以外の方法を」と相談しに行くのが賢明です。

リバースモーゲージと任意売却の違い

リバースモーゲージと任意売却には、以下の5つの違いがあります。

自宅に住み続けられるか

通常の売却でも、任意売却でも同様ですが、家を売ってしまえば住み慣れた我が家を手放すことになります。一方で、リバースモーゲージは、担保契約を行った後も、亡くなるその日まで我が家で暮らせます。

エリア

リバースモーゲージは、金融機関ごとに対象エリアが定められています。家を担保として融資を行うという性格上、都市部から外れた土地はエリア外になりやすいのが特徴です。

年齢制限

任意売却は、年齢に制限はありません。一方でリバースモーゲージは、シニアのための融資システムなので、50代、60代からの人が使えます。

債務の返済方法

任意売却の場合、家が売却されたら売却金は一括でそのままローンの返済に充てられます。残債は、新たに返済方法を決めることになります。一方でリバースモーゲージは、毎月少しずつ返済していくことが可能です。

持ち家のタイプ

任意売却は、マンションであっても一戸建てであっても、金融機関が承諾し、また買い手が現れれば取引が可能です。一方でリバースモーゲージは、一部の金融機関では「一戸建てのみ」「マンションの場合は利便性の高い地域に限定」など、マンションでの契約が難しい場合があります。

リバースモーゲージと任意売却を選択するときのポイント

リバースモーゲージと任意売却、どちらがよいのか悩んだときは、次の3つを選択のポイントにしましょう。

自宅を手放してもよいか

「住み慣れた我が家を手放したくない」「病気の家族がいる」など、自宅を手放したくない事情があるのであれば、まずは任意売却よりもリバースモーゲージを検討してみましょう。

転居先はあるか

売却後、子世代の家へ身を寄せられるというなら安心ですが、「住み替えるなら賃貸しかない」という人には、まずはリバースモーゲージの検討をおすすめします。高齢になればなるほど、賃貸契約が難しくなりますし、家賃負担も重く感じられるようになります。

「長生きリスク」を受け入れられるか

リバースモーゲージは、月々の返済が利息のみなので、一般的な住宅ローンを支払うよりは負担が軽くなります。しかし住宅ローンの支払いには終わりがありますが、リバースモーゲージは、契約者が亡くなるか、あるいは自宅を売却して元金を一括返済しなければ、ずっと利息を払い続けなければなりません。長生きはめでたいことですが、このリスクを受け入れられるかどうかを考えましょう。

相続人は死後にきちんと手続きをしてくれそうか

リバースモーゲージは、契約者の死後に相続人が家の売却手続きをすることで元金を完済します。リバースモーゲージを検討するときには、相続人にもきちんと相談をするようにしましょう。

まとめ

以上、リバースモーゲージと任意売却の違いや、選択するときのポイントについて解説しました。定年後、収入が激減することで「住宅ローンが払えない」という問題に直面する人は多いでしょう。実際に滞納してしまうと、立場はどんどん悪くなります。返済が滞らないうちに、なるべく早く金融機関へ相談に行きましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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