2023年5月23日
リバースモーゲージ
【FP解説】リバースモーゲージのノンリコース型とは?メリットとデメリットを解説

リバースモーゲージは、高齢者が自宅を担保に借り入れを行う融資の仕組みです。毎月の返済は利息のみで、元金は相続人が家を売却するなどして完済します。リバースモーゲージには、住宅金融支援機構と各金融機関が提携して展開する「リ・バース60」をはじめ、「リコース型」と「ノンリコース型」の2つのタイプが用意されていることがあります。ノンリコース型の概要や、リコース型と比較したメリットとデメリットを解説します。

リバースモーゲージのノンリコース型とは

ノンリコース型とは、リバースモーゲージで相続人が元金を返済するときに、契約者が住んでいた家を売っても完済できないケースがあります。この残債を支払わなくてもよいとあらかじめ決めておく契約内容のことです。

リバースモーゲージはシニアが利用できる借り入れシステムです。自宅を担保として金融機関から融資を行ってもらい、定年からの収入減少などで苦しくなる日々の生活費などに充てます。毎月の返済は利息だけなので、月々の返済負担が軽いのが特徴です。

元金は、担保となった自宅を売却することなどで完済します。完済のタイミングとして一般的に想定されているのが「契約者の死亡時」です。この仕組みにより、契約者は月々の負担を減らしながら、亡くなるまで自宅に住み続けることができます。

しかし、相続人が家の売却を行おうとすると、家を売ったとしても借入金を完済できないという事態が起こりえます。このとき、相続人が残った債務を返済する必要があるのが「リコース型」、返済する必要がないのが「ノンリコース型」です。

ノンリコースの仕組みは、リバースモーゲージだけではなく、さまざまな担保型の融資サービスに採用されています。広くは、「返済に関して、借主の責任範囲を限定する」という意味です。

リバースモーゲージのノンリコース型のメリット

リバースモーゲージのノンリコース型のメリットは、以下の通りです。

相続人の負担が軽減される

相続人は家の売却手続きを行うことで責任が完了します。他に持ち出し金を用意する必要がありません。「親の自宅を住み継ぐつもりはないけれど、空き家になるのも困る」といった悩みからも解放されます。

契約者の不安要素が減る

リコース型だと、契約者は借入金が多くなるたび「後できちんと元金を完済できるのだろうか」と気がかりになることが多いです。完済が自分の死後だと思えばなおさらです。ノンリコース型であれば、安心してお金を使え、経済的にも精神的にもゆとりある暮らしができます。

融資に対する不安が軽減される

「融資」や「資金調達」と聞くと、要するに「借金」のことだと思い、身構えてしまう人も多いのではないでしょうか。ノンリコース型であれば、後になって「借金」が返せず困るということがありません。自宅を資産の一つと考え、上手に活用することを後押ししてくれます。

リバースモーゲージのノンリコース型のデメリット

リバースモーゲージにおけるノンリコース型のデメリットは、以下の通りです。

金利が高くなる傾向がある

借主の責任が限定されているぶん、金利が高くなる傾向があります。リコース型との差は、金融機関によって違います。必ず、リコース型の金利と比較して検討しましょう。

融資限度額が低くなる可能性がある

ノンリコース型を選ぶと、担保割れを防ぐため、あらかじめ融資限度額が低めに設定される可能性があります。希望の融資額に届かないかもしれません。

返済不要の残債務分に税金がかかる可能性がある

返済不要となった残債務分が「債務免除益」とみなされると、税金がかかる場合があります。これは金融機関から免除してもらった残債務分の「贈与を受けた」とみなされるためです。ただ、必ず税金がかかるとはいえないため、税理士等専門家に相談する必要があります。
参考:No.4424 債務免除等を受けた場合(国税庁)

ノンリコース型とリコース型を選ぶポイント

ノンリコース型か、リコース型かで迷ったら、次の3つのポイントを確認して選びましょう。

融資額が必要資金に届くか

ノンリコース型を選択する場合に示された融資限度額が、必要資金に届くかどうかを検討しましょう。

純粋に「生活費のため」に借り入れをするのだとすれば、今後、平均寿命に達するまで必要となる生活費用をシミュレーションし、足りない分をリバースモーゲージで補えるかどうかを計算します。家のリフォーム費用など、決まった目的がある場合にも、必要な金額を具体的に算出した上で、提案された融資額と照らし合わせます。

必要資金に届かない金額を融資してもらっても、目的を遂行することができないのであればあまり意味がありません。ノンリコース型で必要資金に届かないのであれば、リコース型を選び、少しでも融資枠を広げる必要があります。

月々の返済額は支払い可能な範囲か

ノンリコース型を選ぶと金利が上がる可能性がありますが、これは月々の返済額がアップするということです。毎月の生活費用を算出した上で「この程度の返済であればできる」という金額を割り出しましょう。提案金利では毎月の返済が苦しいということであれば、リコース型を選び、少しでも金利を低くしてもらうしかありません。

契約者や相続人の手元資産には余裕があるか

融資額が低くとも、金利が高くなったとしても、契約者や相続人の手元資金に余裕がない場合には、ノンリコース型を選ぶのがいいでしょう。残債を完済できないという状況に陥ることは避けなければなりません。

リコース型を選べば、月々の返済額はノンリコース型よりも楽になり、融資額が増える可能性が高くなります。もしも契約者に資金の余裕があり、相続人に現金を残せる状態であれば、リコース型はメリットが大きいケースもあります。

また、相続人自身に余剰の資金があり、「残債があれば清算できる」という意思を示してくれるようであれば、安心してリコース型を選べます。

ただ、リコース型の場合には、残債は余剰資産で支払える範囲にとどまるのか不安が残ります。正確な金額はわからないにしても、見込額を金融機関に十分確認しておくのがおすすめです。

まとめ

以上、リバースモーゲージのノンリコース型について解説しました。ノンリコース型は、「残される相続人に迷惑をかけられない」と悩むシニアに適したプランです。ただ、借り入れができる金額はやや少なくなる可能性が高いため、手元資金や必要な金額をきちんと割り出し、相続人とも相談した上でプランを決めましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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