2023年6月14日
リバースモーゲージ
【FP解説】終身型融資のリバースモーゲージとは?融資期間や内容に関してわかりやすく解説

自宅を担保に借り入れを行うリバースモーゲージは、元金の返済が契約者が亡くなられた後となる終身型融資で、住宅ローンの借り換えなどにも利用可能です。毎月の返済額は利息のみで、元金の返済は契約者が亡くなってから、担保不動産である自宅を相続人が売却することなどで行います。終身型融資と聞くと「亡くなるまでお金を貸してもらえる」というイメージですが、実際にはどんなことを指すのでしょうか。融資期間や内容を詳しく解説します。

終身型融資のリバースモーゲージとは

リバースモーゲージは、契約者が亡くなってから相続人が元金を返済する融資の形です。よって、「終身型融資」と呼ばれることがあります。契約者が生きているうちに返済しなければならないのは、利息の部分のみ。毎月利息だけを支払うことになるため、負担は非常に軽いといえます。

老後の生活資金に悩む人は少なくありません。近年、「老後、2000万円が必要」と報道され、「そんなに貯金があるわけない」とうろたえた人は多いです。しかし、手元に現金がなくても、他の資産を活用することで、老後の資金を用意することが可能になります。今のシニアにとって「現金以外の資産」といえる、その最たるものが「自宅」です。

都市部にマイホームを建てた人にとって、自宅の財産価値はかなりのもの。子世代が全て独立して、自宅を継ぐ人がいないとなれば、活用しない手はありません。リバースモーゲージなら、自宅を担保とし、評価額に見合った金額を融資してもらえるうえ、引き続き住み慣れた我が家にとどまることができます。

亡くなるまで自宅に住み続けられ、融資してもらった元金は、自分が生きているうちは返さなくても良い。この意味で、リバースモーゲージは終身型融資と呼ばれます。

終身型融資のリバースモーゲージのメリット

終身型融資のリバースモーゲージのメリットは、主に以下の4つです。

融資を受けつつ、ふだん通り、亡くなるまで生活できる

通常、借り入れを行えば、「どこかのタイミングで返済しなければならない」「毎月の返済が負担」と悩むことになります。しかし、終身型融資のリバースモーゲージであれば、担保不動産にそのまま住みながら、利息の返済だけで暮らしていくことが可能。それまでの暮らしを、亡くなるまで維持できます。

住宅ローンの借り換えができる

老後、収入が減少すると、住宅ローンの返済が苦しくなります。そこで、リバースモーゲージを利用して住宅ローンの借り換えを行えば、毎月の返済額がぐっと減ることに。住宅ローンの借り換えに対応しているリバースモーゲージは、「リバースモーゲージ型住宅ローン」と呼ばれ、さまざまな金融機関で取り扱っています。

リフォーム代にも利用できる

シニア世代にさしかかると、住み慣れたマイホームも、老朽化してきたり、老後のためにバリアフリー化を検討したりと、メンテナンスが必要になってきます。手持ち金ではリフォーム代が足りない、もしくは老後の生活のためになるべく手元資金を残しておきたいという人に、リバースモーゲージは適しています。

終活の一環になる

自宅を住み継いでくれる子世代がいなければ、家はそのうち空き家となります。空き家の管理は大変で、売却したり賃貸にしたりするにも手間がかかります。「死後、子どもに迷惑をかけたくない」と感じている人がリバースモーゲージを利用すれば、自分が亡くなった後、金融機関が自宅の売却について相談にのってくれるため、終活につながります。

終身型融資のリバースモーゲージのデメリット

終身型融資のリバースモーゲージには、以下の3つのデメリットもあります。

住宅ローンの借り換えの場合は総返済額が高くなる可能性が高い

住宅ローンの返済が厳しくてリバースモーゲージ型に借り換えを行った場合、毎月の返済額は利息のみなので、契約者の負担は軽減されます。ただ、一般の住宅ローンであれば、毎月元金の部分も返済するため、利息分は徐々に減っていきます。一方で、リバースモーゲージは元金が減りません。

よって、もとの住宅ローンと、リバースモーゲージの返済期間が同じだった場合、総返済額はリバースモーゲージを利用した方が高くなります。「リバースモーゲージの返済期間」とは、途中で解約などをしない限り、契約者の存命中となります。

相続人に負担をかけることがある

リバースモーゲージでは、契約者が亡くなった後、相続人が自宅を売却するなどで元金を返済します。このとき、自宅の売却額が元金に届かないというケースもあり、その場合は相続人が残債を負担しなければならない可能性も。

リバースモーゲージには「リコース型」と「ノンリコース型」があり、リコース型を選ぶと、相続人がこの残債を負担することになります。ノンリコース型であれば、残債を相続人が負担することはありません。ノンリコース型は、リコース型よりも金利が高く設定されがちですが、相続人に迷惑をかけたくない場合は、ノンリコース型を選ぶのがいいでしょう。

認知症を患ったら、以降は借り入れができない

借り入れを行う際は、融資限度額まで一括で借りるパターンと、融資限度額に至るまで毎月同額を振り込んでもらうパターン、金融機関の店頭やATMで随時引き出せるパターンがあります。少しずつ借りた方が計画的に使えそうですが、新しい融資は「80歳まで」「84歳まで」と決められている場合もあり、また認知症を患ってしまったら、以降は借り入れが難しくなります。

契約者が高齢になっても借り入れができるよう、あるいは認知症を患っても不安がないよう、子世代と信託契約を結んだうえで利用できるリバースモーゲージもあります。

終身型融資のリバースモーゲージの注意点

以上のメリットとデメリットを踏まえ、リバースモーゲージを利用するときには、以下の3点に注意しましょう。

リコース型とノンリコース型、どちらにするか検討する

相続人が残債を返済する義務がないノンリコース型は、リコース型と比べると金利が高くなる傾向にあります。相続人に迷惑がかからないようにとノンリコース型を選んでも、毎月の返済が厳しくなれば本末転倒です。相続人とも相談の上、どちらにするかよく検討しましょう。

必要額を算出し、計画的に利用する

早くから限度額いっぱいまで借り入れを行ってしまうと、毎月の返済額が高くなります。「リフォームのため」「生活費として足りない○万円を毎月補填したいから」など、融資の目的を明らかにしたうえで必要額を算出し、計画的に利用しましょう。住宅ローンやリフォーム代に資金用途を限定したリバースモーゲージ型住宅ローンであれば、必要額をあらかじめきちんと算出したうえで、そのぶんだけ借りることになります。

相続人に、実家相続の意思を確認する

自宅を担保とするため、契約者が亡くなった後は、子世代などが住み継ぐことができません。自分では「子世代が実家に戻ることはないだろう」と考えていても、当の子どもは「いつかは実家に戻りたい」と思っている可能性もあります。家の相続をする意思があるかどうか、推定相続人にしっかり確認しておきましょう。

まとめ

以上、リバースモーゲージが終身型融資と呼ばれる理由について、またそのメリットやデメリット、注意点について解説しました。リバースモーゲージは、生活資金に余裕がないシニアの救世主と言われます。メリットは絶大ですが、その分デメリットも存在するため、じゅうぶん理解したうえで契約に臨みましょう。

奥山晶子

リバースモーゲージ商品を見る
ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
金融機関を探す
Related

関連記事