2023年1月10日
老後
【FP解説】終活とは?終活をするための準備方法やいつから始めるのかなどやり方を解説

終活とは、自分が病気で倒れたり、亡くなってしまったりしたときに家族が困らないよう、また自分の希望通りの介護や医療、葬儀、相続などが叶えられるように準備や整理をしておくことです。エンディングノートを書いたり、遺言書を作成したりして、家族に示しておきます。身の回りの不用品を処分したりして身辺整理するのも、終活の一つです。終活のメリットや始める時期、具体的な方法について解説します。

終活とは

終活とは、自分の死後に向けた活動全般を指します。「終活」という言葉が生まれたのは2010年のことで、週刊誌で組まれた特集記事が発端でした。

それまでは、生きているうちから死後について準備をするのは縁起が悪いといった風潮がありました。しかし高齢社会に突入し、「葬儀代が高すぎる」「お墓が高くて買えない」「希望する介護施設が混んでいて入居できない」といった問題が大きく取り上げられるようになってから、「介護や葬儀で困らないよう、生きて元気なうちに準備をしておこう」という機運が高まってきたのです。ちょうど人口の多い団塊世代が60代に差し掛かったことも、終活が広まった大きな要因でした。

終活の目的は、自らの死後「家族が困らないようにすること」と「自分の希望がかなえられること」の2つです。家族が困らないようにするために、自分に何かあったときのための連絡先をリストアップしたり、財産目録を作ったり、家の中の不用品を処分したりしておきます。自分の希望が叶えられるように、葬儀社を決めておいたり、墓を買っておいたり、遺言書を書いたりしておきます。

終活をするメリット

終活をするメリットは、以下の3つです。

死後も自分の意志を遂行できる

例えば葬儀は「お世話になった人みんなを呼んでお礼をしたい」「家族だけでひっそりと行いたい」など、人によって希望は様さまざまです。エンディングノートなどによって希望を残しておけば、死後も自分の意志を全うできます。

家族が安心する

お墓を買っておく、財産を整理しておくなどすれば、死後、家族に負担をかけずに済みます。また、生前に希望するプランで葬儀社と契約を結んでおけば、家族は「本人の希望通りに送ってあげられる」と安心します。

今後の自分の生き方を考えるきっかけになる

終活の一環として、生前整理があります。ものごとの用、不用を決め、生活をサイズダウンさせる生前整理は、自分のこれまでの人生を振り返る作業です。自分の来し方に思いを巡らせていると、「今後、どう生きていきたいか」もおのずと考えることになります。いっそう味わい深い人生を送っていくためにも、必要な時間といえるでしょう。

終活をはじめる時期と準備

終活を始める時期は、人によってさまざまですが、健康なうちから始めるのがベストです。気になる介護施設や葬儀社、霊園などへ見学に出かけるのは、健康でなければできません。また、家財の処分なども必要となる生前整理は、気力と体力が大事です。60代後半、あるいは70代に差し掛かったら、準備を始めたほうがいいでしょう。

終活を始めるまでに、老後資金を確保しておきましょう。死後のことをしっかり準備できたとしても、生きている間に資金が尽きてしまえば、元も子もありません。

老後に必要な資金はどれくらい?老後資金の貯め方や今からできる準備方法を説明

生活費をシミュレーションしてみましょう。今後の生活は、年金だけでやりくりできるでしょうか、それとも働くことが必要でしょうか。借り入れを行うという方法もあります。例えば、自宅を担保として生活資金を借り入れる「リバースモーゲージ」は、自分の死後、相続人により自宅を売却して返済を終了させることも可能なため空き家対策にもつながり、終活の一環としても注目されています。

リバースモーゲージとは? 仕組みとメリットやリスクなど注意点をわかりやすく解説!

終活の始め方と方法

終活は、以下のように行いましょう。エンディングノートを手に入れたら、あとは自分が取り組みやすいことから始めます。

エンディングノートを入手する

まずはエンディングノートを手に入れましょう。エンディングノートとは、介護や医療、葬儀、墓、相続の希望などをしたためておくノートです。終活でやるべきことが全て詰まっています。市販でたくさんの種類が出ているため、実際に手にとって、書きやすいと感じるものを購入するのがおすすめです。

連絡先リストを作る

連絡先リストは、あなたが突然倒れたときに役立ちます。「倒れたとき、すぐに知られて欲しい親戚」や「葬儀に読んで欲しい人」などに分けてリスト化しておくと、のちに家族が活用できて便利です。

生前整理を行う

あなたが亡くなったとき、大量の家財を処分しなければならないとしたら、家族は困ってしまいます。身体が自由に動くうちに、不用品の仕分けをしたり、使っていない家財を処分したりしておきましょう。家が整理されると高齢者にも住みやすい住居となり、一石二鳥です。

財産をリストアップする

どの銀行にいくら預けているか、どんな保険に入っていて満期はいくらか、ローンはどれほど残っているかなど、財産情報は本人が把握するのも大変です。残された人が一から調べるとなると、大変な苦労が予想されます。全財産をリストアップし、負の財産については、なるべく早いうちに返済をしておきましょう。

気になる介護施設や葬儀場、霊園を見に行く

認知症になり介護が必要になったらどんな施設に入りたいか、どんな葬儀がいいか、どんなお墓に入りたいか。言い残しておくのは大事ですが、できればより具体的に示しておきたいものです。気になる施設や葬儀場があったら見学に行きましょう。そして、介護施設は難しいですが、葬儀場は「ここが良い」と感じたら、見積もりをもらって生前契約するのがおすすめです。葬儀代金は、前もって準備しておきます。お墓も、できれば買っておきましょう。

遺言書を作成する

エンディングノートに書いたことには、法的効力がありません。自分が思い描く通りの相続にするために、遺言書を作成しましょう。法的に効力を有する自筆証書遺言や公正証書遺言を作成するのがおすすめです。

エンディングノートの書き方

エンディングノートには、さまざまな項目があります。取り組みやすいと感じたものから書き始めてけっこうです。一般的に、以下の5つの項目に分かれています。

①連絡簿

親族や友人、仕事先などの連絡先を書き入れる項目です。急な入院となったとき、家族がこの連絡簿を参照すれば、必要な人へ連絡を入れることが可能になります。亡くなったときも同様です。

②介護・医療

介護が生じたとき、誰にどこで介護を受けたいかといった希望を記します。「自宅で家族に介護を受けたい」「介護施設でプロに介護を受けたい」などと書き入れます。なお終末医療が必要になったとき、臓器提供を希望するか、延命措置を受けるかといった希望も記します。

③葬儀・墓

葬儀の宗派や規模、式場、遺影などについて希望を記します。もし生前に葬儀社を決めておきたい場合は、生前打ち合わせをして見積書をもらい、エンディングノートに添付しておきましょう。お墓については、先祖代々のお墓がよいか、新しくお墓を設けたいか、承継者の必要がない永代供養墓が良いかなどの希望を記します。

④財産・相続

自分の財産をリストアップした上で、誰に何を相続させたいかを書き入れます。前述したように、エンディングノートには法的効力がないため、最終的には法的効力を有する遺言書として清書するのがおすすめです。

⑤自分史・家系図・家族へのメッセージ

自分の想いを書き記す項目です。生まれてから今までの来し方を自分史として記し、家系図を整えておきます。そのうえで、家族に残したいメッセージをしたためます。

終活に必要な老後資金

生活に不安があると、終活はなかなかうまくいきません。長い老後を生きていくためには、まとまった老後資金が必要です。

総務省の調査によると、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦世帯における月々の支出は平均27万円。これを年金で全てカバーできるかといえば、残念ながらそう簡単ではありません。公的年金の平均給付額は、月額およそ19万円なのです。年金だけで暮らすとなると、月々8万円が持ち出しになります。

65歳の夫が、男性の平均寿命である81歳まで生きるとすると、16年間ずっと8万円の赤字が出ることになります。総額およそ1536万円です。家のリフォームや子、孫への支援等でまとまった金額が必要になるなら、もっと多くのお金が必要です。

定年後、「お金がない」と慌てないためにはどのように老後資金を用意すればよいのでしょうか。次の3つが考えられます。

投資

株式やFX、先物取引などで資金を運用します。初心者であれば、銀行等プロを通して行うのが安全でしょう。また、個人投資制度として有名なのが「NISA」です。一般的なNISAは、年間120万円まで株式や投資信託を購入でき、最大5年間、非課税で保有できます。つみたてNISAは、一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できます。

個人年金

月々いくらか積み立てを行い、60歳、あるいは65歳などシニアになったら毎月一定額を引き出せるのが個人年金です。有名なのが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」で、自分で掛金の金額を決めることができ、掛金の全額が所得控除の対象になります。「iDeCo」は国民年金基金連合会が運営しており、運営管理機関として指定されている金融機関や証券会社のなかから自分で加入口座を選び、申込みます。

リバースモーゲージ

自宅を担保に借り入れを行う、シニア向けの融資の仕組みです。毎月の返済は利息のみで、元金は契約者が亡くなってから、相続人が自宅を売却すること等で返済します。持ち家を相続する人がいないという事情を持つ人に適しています。

参考:総務省統計局「高齢者の家計」

老後の生活を支える契約

老後のために資金を準備しても、認知症になり財産の管理ができなくなっては大変です。自分で自分に関わることが判断できなくなったり、希望を巧く伝えられなくなったりしたときのために、さまざまな契約が用意されています。老後の生活や死後のことを委任できる契約について知っておきましょう。

任意後見契約

認知症などにより判断能力が低下し、身の回りのことができなくなったときのために、あらかじめ子どもや専門家などの第三者を後見人として指定しておく契約です。後見人は、契約者の生活をサポートしたり、介護のプロを手配したり、財産を管理したりします。

任意後見制度は、自分の判断能力がはっきりしているうちに、万が一のときの後見人を自分で選択しておける制度です。財産をどう管理するか、誰にどこで介護を受けたいかといった希望も伝えておくことができます。契約通りに執行されているかどうかは、家庭裁判所によって選任された任意監督後見人がしっかり判断してくれます。

任意後見制度は認知症になってからでは使えない制度なので、シニアになったら早めに後見人を選出し、契約を結んでおくと安心です。認知症になってから使える後見制度には「法定後見制度」がありますが、こちらは自分で後見人を選べず、家庭裁判所が選任することになります。

財産管理委任契約

財産管理委任契約は、自分がケガや病気で入院したり、介護が必要になったり、認知症になってしまったりしたとき、代わりに入院などの手続きや財産管理を行ってくれる代理人を決めておくものです。希望する介護サービスや財産管理のあり方など、委任の内容もあらかじめ決めておきます。

任意後見制度と違うのは、判断能力が残っている段階から利用できる点です。足腰が弱くなってきた、入院先で動くことができないといった事情があるとき、契約書さえあれば必要な手続きなどは代理人に行ってもらえます。ただし、代理人が契約書に従って財産を管理しているかどうかは監督されないため、本当に信頼できる人物を慎重に選ぶ必要があります。

死後事務委任契約

死後事務委任契約は、自分が亡くなった後の手続きを、友人や士業などの専門家に委任する契約です。契約を結んでおくと、葬儀の手配やお墓への埋葬、役所への届出、遺産相続の手続きなどを行ってくれます。とくに死後のことを託す人がいないおひとりさまは、契約を行っておくと安心です。

ただし死後事務委任契約には重大な注意点があります。それは、自分が亡くなった後、契約書の存在を身近な人が誰も知らなければ、契約が失効されなくなってしまうということです。契約書の存在を、生前に身近な人へ伝えておくことが重要です。もしくは、任意後見契約や財産管理委任契約と同時に、この死後事務委任契約も締結しましょう。自分が亡くなったことは後見人や代理人が確実に把握するため、死後事務委任契約もスムーズに執行されます。

まとめ:終活はアクティブに動けるうちから!

終活の内容がお分かりいただけたでしょうか。たくさんのことをこなさなければならないため、なるべく健康で、アクティブに動けるうちから活動するのがポイントになります。

元気な状態で自分の死後を考えるのは難しいかもしれません。そんなときは、生死にかかわらず「自分が突然倒れたら」どうなるかをイメージしながら終活を進めましょう。老いや病気の進行に関わらず、事故や発作などで「突然倒れる」ことは誰の身にも起こりえます。

自分が突然倒れたら、関係者への連絡は誰がするのか。電気や水道などの各種支払いはどうなるのか。意識がなく回復の余地もないとしたら、どんな医療を望むのか――。そのように想像を巡らせながら、自分なりの終活を行いましょう。

終活での身辺整理とは?身辺整理の方法や注意点など始め方を解説

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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