2023年1月14日
老後
【FP解説】介護保険料はいつから支払う? いつから使える? 介護保険制度の基礎知識

介護保険が老後の生活に重要なものだと理解している人は多いものの、どんな制度で、何歳から保険者として介護保険料の支払いが始まり、いつから、どんな条件を満たせば介護サービスを使えるようになるのかを詳しく知っている人は多くはないでしょう。介護保険料は40歳から支払いが始まり、65歳から必要に応じて介護サービスが使えるようになります。この記事では、介護保険制度の基礎をわかりやすく解説しました。また介護保険料を滞納すると、どんな罰が科されるのかといった内容もまとめています。

介護保険制度とは

介護保険制度とは、介護が必要な人に費用を給付してくれる制度です。介護が必要になったときに、住居サービスや施設サービスを1~3割の費用負担で活用できるもので、2000年に創設されました。2020年8月の段階で、674万人もの人が要介護(要支援)認定を受けています。

40歳から64歳まで介護保険の支払い方法

介護保険への加入は40歳以上となっているので、40歳を超えると介護保険料を納めなければいけません。ただ介護保険料を支払っている意識がない人も多いことでしょう。というのも40~64歳までの医療保険加入者は健康保険料と一緒に給料から天引きされているからです。

介護保険制度においては40歳から64歳までの人を「第二号被保険者」と呼びます。第二号被保険者の介護保険料は、加入している医療保険の算定方法に基づいて設定されています。

会社員など健康保険加入者は、給与によって介護保険料が変わってきます。介護保険料を決める基準は、会社が加入している健康保険組合や、都道府県によっても異なります。国民健康保険の加入者は、市区町村が所得などに応じて介護保険料を決定します。

65歳以降の介護保険の支払い方

介護保険制度では、65歳以上の人を「第一号被保険者」と呼びます。64歳までの第二号被保険者と、65歳以上の第一号被保険者とでは、介護保険料の支払い方が変わります。

65歳以上の介護保険料の支払い方は、2種類あります。年金から天引きされる「特別徴収」と、納付書で納める「普通徴収」です。原則的に老齢年金、遺族年金、障害年金を年額18万円以上受給している人は、手続きのいらない「特別徴収」となります。

ただし、4月1日以降に65歳になった人や引っ越しなどで新しい地方自治体に転入した人は、「普通徴収」となります。また年金受給権を担保にしている人や年度の途中で介護保険料の減額変更などがあった場合なども、納付書で納める「普通徴収」となります。

つまり年金額が年額18万円以上であれば自動的に天引きされるものの、年度途中での変更などがあった場合には納付書で納めることになるのです。

介護保険が適用される年齢

介護保険制度による介護サービスが使えるようになる年齢は、原則として65歳以上です。なかでも適用されるのは、要介護認定の判定により、要支援もしくは要介護の基準を満たしている人です。

ただし、65歳以下であっても介護サービスが使える人がいます。40歳以上で、かつ加齢を原因とした特定疾病を発症しており、要支援または要介護の状態になっている人です。介護保険法により、16の疾病が特定疾病として定められています。

介護保険料が免除される場合

介護保険料は、免除されるケースもあります。次の6つのケースです。

海外居住者

海外に住所がある人は、介護保険料を支払う必要がありません。移住のほか、海外赴任など仕事上の理由で海外に滞在することになった人も同様です。

適用除外施設入居・入院者

介護保険の適用除外施設に入居もしくは入院している人は、介護保険料を支払う必要がありません。

3カ月以内の滞在となる40歳以上の外国人

短期滞在であれば介護保険料は免除されます。ただし、保険料を支払う義務が生じない代わりに、介護サービスを受けることもできません。

生活保護受給者

40歳から64歳までの生活保護受給者は、介護保険の被保険者になれないため、保険料は発生しません。介護状態になったら、生活保護費の介護扶助でサービス料がまかなわれます。

一方、65歳以上の生活保護受給者は介護保険の被保険者であり、保険料が発生します。ただし、支給分に介護保険料の金額分が加算されるため、実質的な負担はありません。

被扶養者

専業主婦など、介護保険に加入している人の扶養になっている被扶養者は、介護保険料を負担しません。介護が必要になったときは、介護保険料を納めている人と同じ条件でサービスを受けられます。

災害や大黒柱の死亡などで生活に困っている人

災害で家を失った、一家の稼ぎ頭が亡くなったなど、一時的な困窮状態に陥った人は、自治体が設ける基準により介護保険料の減免措置を受けられる可能性があります。コロナ禍により大幅に収入が減少した人向けの減免措置を行なっている自治体もあります。

介護保険で受けられるサービス

介護保険で利用できるサービスと聞いて多くの人が思い出すのが、ホームヘルパーが入浴や食事の介護、掃除、洗濯などを行う「訪問介護」でしょう。しかし実際のサービスは、かなり幅広いものです。そこで主な介護サービスを紹介していきましょう。

訪問介護

介護福祉士やホームヘルパーなど介護のプロが自宅を訪れ、排泄や入浴、食事など日常生活の介助を行なってくれるサービスです。必要に応じて掃除や洗濯、調理も行ないます。

訪問看護

看護師が、床ずれなどの医療処置や日常生活を送る上で必要な看護を自宅で提供してくれます。

福祉用具貸与

介護用のベッドや立ち上がるとき補助となる手すりなど、福祉用具のレンタルサービスが受けられます。

デイサービス

日帰りで食事や入浴などの支援を受けられるサービスです。日常生活が困難な一人暮らしの方はもちろんのこと、家族の介護負担を減らすという役割もあります。

デイケア

施設に通い、理学療法士や作業療法士による日帰りのリハビリテーションを受けられるサービスです。

ショートステイ

日帰りではなく宿泊し、食事や入浴、排泄など日常生活のサポートを受けられるサービスです。普段はデイケアを利用し、同居家族が不在になる日などはショートステイを利用するなど、使い分けることができます。

特別養護老人ホーム

在宅生活が困難な方向けの居住サービスです。自宅から特別養護老人ホームへ居を移し、食事や入浴などの介護を受けながら生活します。原則として介護度が3以上など、症状が重い人のための施設です。

介護老人保健施設

自立した在宅生活に戻れるよう、食事や入浴などの介助を受けながらリハビリテーションを行なうための施設です。回復すれば退所し、自宅へ戻ります。

介護保険料を滞納した場合の注意点

介護サービスは老後の生活の大きな柱となるものです。そうした大事なサービスを受けるためには、当たり前ですが介護保険料をしっかりと支払うことが重要です。しかし介護保険料を滞納して、預貯金や不動産などを差し押さえられる65歳以上の高齢者が増加しています。厚生労働省の調査によれば、2018年度は過去最多の1万9221人が資産の差し押さえを受けたそうです。

介護保険を滞納した場合は、介護サービスを受ける際の国などが負担する給付金が制限されてしまいます。また保険料納付までの滞納金が科されるケースもあります。
では、実際にどのような給付制限があるのか紹介していきましょう。

介護保険料を1年以上滞納した場合

保険料を1年以上滞納した場合は、サービスを利用するときに、いったん費用全額を自己負担し、その後、保険給付分が支給されます。つまりサービス利用時に、通常1~3割の負担率が全額負担に変わるというわけです。ちなみに保険料が戻ってくるのに2ヵ月以上必要です。

介護保険料を16ヵ月以上滞納した場合

保険料を1年6ヵ月以上滞納した場合、いったん全額自己負担になるのは、1年滞納時と同様です。その後も保険給付分が一部あるいはすべてが差し止めとなり、滞納している保険料として徴収されます。つまり介護サービスの自己負担の比率が変わってしまうのです。

介護保険料を2年以上滞納してしまった場合

保険料を2年以上滞納してしまった場合は、未納期間の介護保険料の納付ができません。その代わり自己負担額が高くなり、一定の負担額を超えた場合の高額介護サービス費が給付されなくなります。つまり2年以上滞納してしまうと、生涯にわたって大きな影響が出てしまうのです。

介護保険料で滞納が起きやすいタイミング

介護保険料で滞納が起きやすいタイミングが定年退職です。
介護保険と健康保険は定年後に3つの選択肢があります。

 ①被扶養者になる
 ②任意継続被保険者になる
 ③国民健康保険に加入する

保険料がかからないのは①で、②と③は保障内容こそ変わらないものの人によって負担額が変わります。こうした選択や事務手続きをしないことが滞納の原因となります。

なお、経済的に介護保険の支払いが厳しい場合は、地方自治体の介護保険担当に相談し、減免措置の申請を行えば介護サービスを受けることができます。

いずれにしても介護保険料の滞納は、非常に大きなペナルティーを科されることになります。介護サービスを利用する状況になったときには、現役時代と同じような経済状況でないケースがほとんど。そうした中で自己負担額が増えると、老後の生活設計が根本から狂ってしまいます。滞納には気を付けましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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