2023年3月16日
老後
【FP解説】終の住処とは?自宅を終の住処にする場合の方法と注意点を解説

終の住処と聞いたとき、どこが思い浮かびますか。長年住んできた自分の家で、最後まで暮らしたいと考える人は多いでしょう。しかし、自宅で最後まで暮らすことは、年々難しくなっています。願いとは裏腹に、高齢者向けの施設に入居したり、長期入院の末に亡くなったりする人もたくさんいます。自宅を終の住処にするにはどうすればよいか、注意点は何かについて解説します。

終の住処とは

終の住処とは、人生を終えるときまで生活をする場所を指します。最後をどこで迎えたいかは、人によって違うでしょう。住み慣れた自宅がよいという人もいれば、「自宅は一人暮らしで寂しいので不安」という人も。そして、「介護のプロがいるところで安心して最期を迎えたい」と考える人は、自宅から老人ホームなどへの住み替えを考えているのではないでしょうか。

ただ、住み替えをするとしても、タイミングやお金の面でできないこともあります。この記事では、有料老人ホームへの住み替えと、自宅を終の住処にする方法とに分けて、両者のメリットやデメリット、費用等を解説します。

有料老人ホームへの住み替え

終の住処として、有料老人ホームを選ぶ場合は、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。また、費用面としてはどの程度を考えておくと良いのでしょうか。詳しく解説します。

有料老人ホームを終の住処にするときのメリット

有料老人ホームを終の住処にするメリットは以下の4つです。

・バリアフリー化された住宅で安全に暮らせる

全室バリアフリーで段差につまずくことなく、車椅子生活になっても室内の移動がスムーズなのでストレスフリーです。高齢者の転倒による骨折と入院は、寝たきりの始まりともいわれます。転倒を防止できるつくりの室内は、長く健康でいられる可能性を高めます。

・生活の利便性が高いところが多い

有料老人ホームは駅近、あるいはスーパーが徒歩圏内になるなど、生活の利便性が高いところが多いのが特徴です。自宅はどこへ行くにも車が必要、駅まで徒歩で何十分もかかるという人は、住み替えを検討したほうがいいかもしれません。

・質の高い介護サービスを受けられる

有料老人ホームの中には、介護資格者が従事しているところが多いため、質の高い介護サービスを受けられます。介護度が変動しても住み続けられるところであれば、ずっとサポートしてもらえて安心です。

・他の住人との交流が刺激になる

家族以外の人との交流が増えて、良い刺激を受けます。自宅に引きこもるよりも、生活に張りが出るでしょう。

有料老人ホームを終の住処にするときのデメリット

有料老人ホームを終の住処にするデメリットは以下の4つです。

・老人ホームの種類によって受けられる介護サービスが違う

老人ホームにはさまざまな種類があります。老人ホームの種類によって受けられる介護サービスが違い、健康な高齢者を受け入れているところは、要介護度が高くなると住めなくなることもあるので、契約条件をよく読みましょう。

・家族と離れてしまい、孤独感が高まる

それまで他世帯で暮らしていた人などは、家族と離れて暮らすことになるので、孤独感を募らせるかもしれません。一人暮らしをしたことがないといった人はとくに心のケアが必要です。

・集団生活がストレスになることがある

有料老人ホームの中には、介護サービスの一環としてレクレーションやイベントなどを行うところもあります。集団生活がストレスになるかもしれません。

・費用がかかる

当然のことながら、住み替えには費用がかかります。なかには高額な入居金が必要になるところもあります。

・タイミングによっては入居できない

希望の物件があっても、タイミングによっては入居できず、待ちの期間が生まれることもあります。人気のある老人ホームほど、待ち人数は多くなります。

有料老人ホームを終の住処にするための費用

有料老人ホームの費用は、種類や必要とする介護サービスによって違います。

・入居一時金

介護付き有料老人ホームや、住宅型有料老人ホームなど民間施設は、入居一時金が通常の敷金・礼金レベルであるところから、数千万円にもなるところまで存在します。公的施設である特別養護老人ホームの初期費用は0円ですが、要介護度の条件が厳しく人気も高いため、狭き門といえるでしょう。

・月額料金

住居費、食費を含めた月額料金は、10万円から30万円程度が相場で、立地やサービスの手厚さなどによっても違ってきます。年金の範囲内で入居できるのが理想ですが、実際にはなかなか厳しいといえるでしょう。

・介護サービス自己負担額

施設側が月額料金内としている介護サービス以外のサービスを受けた場合は、自己負担額がかかります。介護保険適用により、1~3割が自己負担額となります。

・医療費

高齢者は病気になりがちです。医療費は、月額料金の他に確保しておかなければなりません。

・生活用品等雑費

トイレットぺーパーなど消耗品費がどの程度まで月額料金の範囲に入るかは、施設ごとに違います。被服費や娯楽費などについても確保しておかなければなりません。

自宅を終の住処にする方法

自宅を終の住処にするには、バリアフリー化が必須です。具体的には、次のようなことが必要になります。

生前整理と家具の配置換え

まずは改装前にできることから。家具などにつまずいて転倒するのを防ぐため、生前整理を行いましょう。不用品を処分したり、リサイクルショップへ手放したりした後は、動線がスムーズになるように家具の配置換えを行います。生前整理によって不要になる家具もあることでしょう。

玄関にスロープを設置

転倒すると大きなけがにつながる危険のある玄関をバリアフリーにします。玄関にスロープをつけたり、ドアを開き戸から引き戸にして段差を減らしたりする工夫が考えられます。引き戸になれば、車椅子での移動もスムーズです。

各部屋の段差を解消し扉を引き戸にする

部屋と廊下、廊下とトイレ、脱衣所と風呂場の間などつまずきやすい段差を解消し、扉を引き戸にします。

階段の勾配をゆるやかにする

昔ながらの住宅によくあるのが、急な階段です。会談の勾配を緩やかにできる工事があります。

要所に手すりをつける

玄関の上り口や階段などに手すりをつけます。慎重を考慮し、使いやすい位置に手すりをつけてもらうのがポイントです。

なお、要介護認定を受けていれば、介護保険の補助金を利用することが可能です。

自宅を終の住処にする場合の注意点

自宅をバリアフリー化して終の住処にする場合は、次のことに気をつけましょう。

予算を明確にする

バリアフリーにかかる費用は、家の作りによって違ってきます。せっかく家をバリアフリー化しても、預貯金が乏しくなり、老後の生活資金に不安が生じてしまったら元も子もありません。バリアフリー化したいと考えたら、予算を明確に出し、見積もりをもらいましょう。

自宅で受けられる介護サービスを知っておく

最後まで自宅で暮らせるかどうかは、良質な居宅サービスを受けられるかどうかにかかっています。ただ、自分にどんな介護が必要になるかは、実際に要介護とならなければわからないものです。事前に介護サービスを知っておく手立てとして、地域包括支援センターへの相談があります。住所地を管轄するセンターへ行き、最後まで自宅で過ごしたいことを伝えてみましょう。さまざまな介護サービスや、いざというときの連絡先といった具体的な情報が得られます。

家族と話し合っておく

最後まで自宅にいるためには、家族のサポートが必須です。一人暮らしをしているならなおさら、離れて暮らす家族にきちんと話しておきましょう。電話やメールでの定期的な見守りを依頼するのも大事なことです。

定年を迎えたら終の住処について考え始めよう

漠然と「今のこの家に、ずっと住むのではないか」と考えている人も、年を重ねるにつれて、自宅に住むのが困難になってくるかもしれないことは頭に置いておきましょう。定年を迎えたときが、考え始める一つのきっかけといえます。夫婦で、家族で、最後の暮らし方について話し合いましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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