2023年3月16日
老後
【FP解説】住宅ローンを払えないとどうなる?払えない原因と解決策を解説

「もうすぐ定年なのに、住宅ローンを払い終えていない」という方は、本当に最後まで支払えるのか不安になってしまうでしょう。滞納を繰り返すと競売にかけられてしまうかもしれません。定年退職後、住宅ローンを返済できなければどうなるのか、返済せずに自宅を売却できるのか、借り換えできるのかといった不安にお答えします。なお、住宅ローンの支払いができなければ、リバースモーゲージやリースバック、任意売却といった方法があります。そちらについても、詳しくご案内します。

住宅ローンを払えない人の割合

住宅ローンを払えない人の割合を明確に示す公的資料はありません。しかし、住宅購入資金の融資業務を行っている住宅金融支援機構の資料から、推定値を割り出すことは可能です。

住宅金融支援機構が公表している令和4年3月末時点のリスク管理債権(破綻、延滞などが発生している債権、及び、利息の支払い猶予や金利の減免など貸し出し条件の緩和を行った債権)8,090億円です。一方で、貸付金の残高は255,565億円です。支払いの難しい状態であると考えられる住宅ローンの割合は3.17%となります。

この計算はあくまで金額ベースであり、住宅ローンを利用している人数ベースではないものの、払えない人の割合を示す推計値として大いに参考にできる情報といえるでしょう。

参考:住宅金融支援機構 2022年度 投資家向け説明資料 P38 ご参照

住宅ローンを払えない原因

住宅ローンを払えない原因としては、仕事を失う、病気を抱えてしまうなどで収入が途絶える、減少するなどといったものが考えられます。ここでは、定年後に住宅ローンを払えなくなる原因に言及します。

退職金が思ったよりも少ない

数十年勤めあげた後の退職金が思いのほか少ないと、ローン返済に退職金を当て込んでいた場合は、支払いが困難になります。また、子供の結婚費用や孫の学費など、定年後は住居の他にも入用になるお金があり、退職金からそのぶんを差し引いた結果、ローンが返せないという事態もありえます。

定年後に再雇用されたときの賃金が少ない

定年後、再雇用されたときの賃金は、多くとも現役時代の7割から8割にとどまるのが一般的です。「定年後も働けばいいから」と、現役時代と同じ金額の返済を組んでいると、返せなくなります。

定年後に再就職しても思うような給与が得られない

定年後に再就職すれば、現役時代と同じように稼げるかといえば、そう簡単ではありません。再雇用されるよりも条件が厳しくなってしまうかもしれないのです。定年後は少し住宅ローンの返済額を減らす計画を立てていても、それすら返すのが難しくなるというケースが考えられます。

住宅ローンを払えないとどうなるか

住宅ローンを払えないまま、なんの対策もしないでいると、次のようなことが起こります。

督促状が届くようになる

金融機関からの電話を無視し続けたり、要領を得ない対応が続いたりすると、督促状が届くようになります。

残債の一括払いを請求される

督促状がきて、来店の依頼があっても、そのまま無視することが続くと、次は「分割ではなく、一括での返済を行ってほしい」といった文面の書状が届きます。残っているローンを一度にすべて返済しなければならなくなるのです。契約相手としての信用を、完全に失ってしまいます。なお、住宅ローン契約には保証会社がついているケースが多く、この場合、保証会社が返済を肩代わりし、保証会社からの督促に代わります。

また、ローンが支払えなくなったことが信用情報に響き、クレジットカードの作成や他のローンの契約に支障が出てきます。

競売の手続きが始まり、家が競売にかけられる

一括払いの請求にも無視を決め込んでいると、ついには金融機関や保証会社からではなく、裁判所から書状が届くようになります。「あなたの家の競売を開始します」という内容の競売開始決定通知が届き、裁判所の担当者が自宅の現況調査に訪れます。

立ち退きを要求される

家が競売にかけられると、不動産が差し押さえられ、落札されれば、立ち退きが要求されます。立ち退きに応じなければ強制執行となり、裁判所により強制的に私物が運び出され、退去させられます。

ローン滞納から立ち退き要求までは、1年ほどといわれています。ローンが支払えなくなってからわずか1年で家を手放さなければならないなんて、切ない話です。また、競売情報は公開されますので、近所に知れ渡ります。競売にかかった費用が請求されてしまうこともあります。

住宅ローンを払えない場合の解決策

住宅ローンを払えないなら、次のような解決策があります。さまざまな解決策の中から、今の生活をなるべく維持できそうなものを選びましょう。

一般的な不動産売却

ローンがまだ滞らないうちに不動産として売却してしまう方法です。売却金をローン返済に充てることができます。ただし、売却後に住む場所が必要です。一時、子ども夫婦のもとに身を寄せるなど、次に住む場所のめどが立ってからのほうがいいでしょう。

金融機関である銀行などに相談する

滞納しないうちに、金融機関へ出向いて正直に話をし、返済計画の見直しを行います。返済期間を延長してもらうかわりに月々の返済額を減らすなど、どうすれば完済が可能か話し合いましょう。

リバースモーゲージ

自宅を担保にお金を借り入れ、元本は契約者の死後に自宅を売却することで返済するのが、リバースモーゲージです。月々の支払いは利子のみなので住宅ローンをリバースモーゲージに借り換えできれば、毎月の支払いが軽減できます。

リバースモーゲージとは? 仕組みとメリットやリスクなど注意点をわかりやすく解説!

リースバック

自宅を売却した後も、家賃を払うことでそのまま住み続けられるのがリースバックです。リースバックを行えば、売却時にまとまった金額が手に入るため、ローン返済に回せます。

リバースモーゲージとリースバックの違いは?どちらを活用するのが良いか徹底比較

任意売却

住宅ローンを滞納してしまった後では、一般的な不動産売却はできません。家を売りたい場合は、任意売却という方法で不動産を手放すことになります。金融機関と話し合いを行い、合意の上で売却を行います。競売とは違い、一般的な方法で販売に出されるため、近所などにローンの滞納が知れ渡ることはありません。なお、任意売却の場合、売却後に住む場所が必要であり、売却金をもってしても支払えない金額が残債として残る場合には、新たに分割支払いが必要になります。

住宅ローンが払えなくなる前に実施しておくこと

住宅ローンが払えなくなれば、たびたび督促されたり、ブラックリストに載ってしまったりなど、面倒なことが起こります。払えなくなる前に、次のような準備をしておきましょう。

老後の生活資金を計算しておく

定年後、どの程度の生活資金が必要か、夫婦や世帯単位でシミュレーションしておきましょう。今の収支よりもかなり抑えめにしなければならないぶん、住宅ローンの返済額はかなり負担感が増してきます。

定年後に再就職するため準備をする

老後の生活資金についてシミュレーションし、「月に●万円足りない・稼がなければならない」とめどがついたら、再就職のための準備を始めましょう。シニア向け人材紹介・派遣会社に足を運ぶほか、定年後、自分のスキルを活かせる仕事がないか、知人をあたってみるのもおすすめです。

定年後、再雇用されたときの賃金を確認する

定年後、再雇用されれば、これまでのスキルを活かしながら、慣れた人間関係の中で働けます。ただ、思わぬところに異動になったり、賃金がかなり少なくなったりするケースもあります。「こんなはずじゃなかった」と言う羽目に陥らないよう、再雇用後の賃金水準を確認しておきましょう。

定年後に再就職するため準備をする

再雇用後の賃金水準では「月に●万円足りない、稼がなければならない」場合には、再就職のための準備を始めましょう。シニア向け人材紹介・派遣会社に足を運ぶほか、定年後、自分のスキルを活かせる仕事がないか、知人をあたってみるのもおすすめです。

長く働けるよう健康でいる

健康でさえいれば、長く働くことができ、たとえ生活レベルがやや落ちたとしても笑って過ごせます。お酒やたばこ、嗜好品を少しずつ控えていくなど、健康を意識した生活を始めましょう。適度な運動も忘れずに。

住宅ローンが払えなくなる前に動こう

定年後、しばらく生活してみて、気づけば住宅ローンが払えなくなっていた、金融機関からの「引き落としができない」という電話で滞納に気づいた、などという事態になってしまうと、かなりやっかいです。払えなくなる前に、金融機関に相談したり、売却を検討したりといった行動をするのが大事です。老後、どんな生活が待っているか、今すぐ収支を想定計算してみましょう。

奥山晶子

リバースモーゲージ商品を見る
ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
金融機関を探す