2023年3月16日
老後
【FP解説】介護施設や老人ホームの費用相場は?かかる費用や使える制度に関して解説

最後まで自宅に住むのは難しい、いずれは高齢者向きの住宅へ住み替えたいと考えている人は、老人ホームなどにかかる費用の相場を知っているでしょうか。親を介護施設に入居させたいと考えている人にとっても、費用の問題は重要です。介護施設や有料老人ホームの種類や、それぞれの入居一時金、月々の費用相場について解説し、最後に利用できる制度をご案内します。

介護施設や老人ホームの費用と内訳

介護施設や老人ホームにかかる費用は、公的施設と民間施設ではかなり相場に開きがあります。また、内訳については、種類ごとというよりも、施設ごとに違ってきます。ここでは、一般的な内訳とその費用についてご紹介します。

入居一時金

公的施設なら、入居一時金はかかりません。民間施設の入居一時金は0円から数千万円までピンキリで、都心の施設や高級老人ホームになるほど高くなります。また、月額利用料を抑える狙いで、まとまった入居一時金を最初に支払える形式を採用している民間施設もあります。

月額費用

公的施設の月額費用相場は、生活するのに必要な基本費用を合わせて10~15万円程度で、有料老人ホームの場合は20~25万円程度です。公的施設はなるべく年金やこれまでの資産の範囲で入居できるよう制度設計されており、食費や施設介護サービスの自己負担額については限度額があります。所得や資産の額により段階的に変わってきますから、所得が低ければ安く利用でき、所得が高ければ負担額が大きくなります。

生活するのに必要な基本費用については、具体的には次のようなものがあります。

  • 賃料
    いわゆる家賃です。
  • 維持管理費
    住宅部分の修繕や、共用部分の管理に使われます。
  • 施設介護サービスの自己負担額
    介護保険内で施設介護サービスを受けるための費用です。所得により、1割あるいは3割負担となります。
  • 食費
    予約利用したぶんだけ日割りで支払うケースが大半です。
  • サービス加算、保険外サービス費用
    介護保険制度に設定されている施設介護サービスの範囲を超えて、または保険外のサービスを利用した際は、月額費用等にプラスして請求されます。

そのつど自分で負担する費用としては、次のようなものがあります。

  • 日用消耗品費
    多くの場合、専有部分で使う日用品はそのつど自己負担となります。共用部分の消耗品費は、賃料などに含まれているパターンが多いでしょう。
  • 医療費
    病院に行けばそのつど自分で料金を支払います。
  • 娯楽費、嗜好品費など

介護施設や老人ホームにかかる費用の支払い方法

公的施設の場合は月額料金を月に一度支払うシステムですが、民間施設の場合は、支払方法を選べることもあります。次の3つが選べる可能性があります。

入居一時金としてまとまった金額を支払い、月々の利用料を抑える

入居一時金の金額を、施設が定める範囲内で設定できます。ある程度まとまった金額を支払えば、月々の利用料金を抑えられます。「入居一時金はこれまでの預貯金から出して、月々の利用料は年金の範囲で」などと、今後の支払額を自分で調整できます。

月ごとの利用料を毎月支払う

入居一時金を支払わず、月ごとに利用料を支払っていくスタイルです。入居一時金を支払うスタイルよりも月々の支払いが大きくなりますが、「まとまった資金がない」「かなり年老いてからの入居で、長くいる可能性が低い」「ずっといるかどうか、まだわからない」といったケースには適しています。

全額を入居金として一括払いする

施設と相談のうえ決めた年数分の全額を、入居時に一括払いするスタイルです。サービス加算額など変動費については支払う必要がありますが、以後の負担が微額で済むのは、安心につながります。ただし、施設の老朽化や時代の情勢によって賃料が安くなっても返金されないケースがほとんどです。

介護施設や老人ホームの種類

一口に「公的施設」「民間施設」といっても、さまざまな種類があり、入居条件等も違ってきます。それぞれご紹介します。

公的施設

  • 特別養護老人ホーム(特養)
    受け入れは原則として要介護3以上となります。民間施設よりも費用が安いので人気があり、入所困難な場合も珍しくありません。
  • 介護老人福祉施設(老健)
    リハビリを行う施設で、在宅復帰を目的としています。つまり「終の住家」を必要としている人には向きません。
  • グループホーム
    認知症者が機能訓練を行いながら共同生活を営む施設です。認知症の人でなければ、入居できません。施設と同一市区町村に住民票があることが、入居条件となります。
  • 軽費老人ホーム(ケアハウス)
    低所得や、独居の高齢者を受け入れている施設です。介護型と一般型の2つがあります。安価ですが、人気が高いため待機時間が長くなり、またあてはまる範囲が狭くなります。

民間施設

  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
    バリアフリー型の賃貸住宅です。見守りや生活相談の他、食事サービス、買い物の付き添いといった生活支援を行うなど、施設によってサービス内容が違い、サービスによって料金も違ってきます。
  • シニア向け分譲マンション
    バリアフリー型の分譲マンションで、賃貸ではなく購入することになります。つまり、売却や子どもに譲るといったことが可能です。食事サービスや生活支援など、物件によってサービス内容が違います。
  • 介護付き有料老人ホーム
    自立者から要介護者まで受け入れる「混合型」と、「介護専用型」があります。看取りまで行ってくれるところもあります。柔軟な対応をしてくれる半面、利用料は比較的高い傾向があります。
  • 住宅型有料老人ホーム
    自立した生活をサポートすることを目的とし、比較的介護度の軽い人が対象です。健康管理や介護サービスを選択して受けられます。

介護施設や老人ホーム入居者が使える制度

介護施設や老人ホーム入居者は、介護保険制度によりさまざまなサービスを使うことができます。使えるサービスの種類や頻度は介護度によっても、また施設によっても違いますが、おおむね次のようなものです。

  • 食事、排泄、入浴の介護
    基本的な生活のための介助行動を行います。
  • リハビリテーション
    機能回復訓練等、体の状態に合わせたリハビリテーションを行います。
  • レクレーション
    ゲートボールなど体を使ったレクレーションや、パズル、ゲームなど頭を使うレクレーションがあります。希望者が参加します。
  • 医療処置
    必要な医療処置を行います。施設によっては24時間看護師が常駐しているところもあります。
  • 買い物、薬の受け取り
    生活のための買い物支援や、処方された薬の受け取りなどを行います。介護の必要がない人が同居しているときは、利用できません。

興味のある施設があったら、必ず見学に行こう

以上のように、介護施設の費用は施設によってばらつきがあり、介護度などによって利用できるサービスの種類や頻度も変わってきます。気になる施設があったら、必ず見学に出向き、費用について詳細を確認するのがおすすめです。入居後に「こんなはずではなかった」と思っても、別の施設を探すには体力も気力も必要になってきます。元気なうちに、「終の住家」候補を複数押さえておきましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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