2023年3月31日
老後
任意継続とは?健康保険の任意継続のメリットとデメリットや手続き方法を解説

退職時に知っていると役立つのが、健康保険の仕組みや手続きについてです。日本には「国民皆保険制度」があり、何かしらの健康保険への加入が求められますが、退職後は自動的に勤務先の健康保険の被保険者から外されてしまいます。しかし、会社員であれば退職後2年間は、任意継続で勤務先の健康保険に加入することができます。これが「任意継続被保険者制度」です。加入条件や、メリットやデメリットについて解説します。

健康保険の任意継続とは

任意継続とは、退職前に健康保険の被保険者である期間が2か月以上あった場合、退職後も勤務先の健康保険に2年間継続加入できる制度です。

会社の健康保険は会社で加入しているため、退職者は加入資格を喪失しますが、この制度を利用すれば前職と同じ健康保険を継続することができます。退職後は国民健康保険への加入が義務だと考えている人が多いかもしれませんが、一定の条件を満たしていれば、任意継続制度を利用することができます。

任意継続のよいところは、国民健康保険以外の健康保険が選べる点です。
日本では国民に保険加入が求められていますが、国民健康保険しか加入先がない場合、万一退職金を受け取って所得が高額になると、翌年からの保険料が大幅に上がり、家計を圧迫してしまうもこともあります。これは、国民健康保険は前年度の所得によって算定されるからです。

そうならないための措置として、この制度が設けられています。

健康保険の任意継続のメリット

前職と同じ健康保険に加入している人のことを、任意継続被保険者といいます。勤務先で加入していた健康保険をそのまま継続できるメリットを紹介します。

国民健康保険より保険料を安く抑えられる場合がある

任意継続で保険に加入をすると、会社と折半だった健康保険が全額自己負担になりますが、それでも国民健康保険より安く抑えられることがあります。

保険料は、退職時の標準報酬月額か、加入者全体の標準報酬月額を平均したものを比べ、どちらか低いほうに保険料率を掛けた金額の全額になります。

任意継続被保険者の標準報酬月額には上限があるため、高所得者ほど任意継続を選んだ方が有利になります。任意継続の詳しい保険料は、加入している健康保険に確認してみましょう。

健康保険の無加入状態を回避できる

再就職の予定があったとしても、実際に入社するまでの健康保険未加入の期間に、もしケガや病気をしたら医療費が全額自己負担になってしまいます。それは扶養として今まで健康保険に加入していた配偶者や家族も同様です。

しかし、任意継続により被保険者1人分の保険料で、今まで通り扶養家族に健康保険が適用されます。

会社の健康保険組合のサービスが利用できる

加入している健康保険によって異なることもありますが、任意継続することによって、退職後であっても会社の保養所が利用できたり、人間ドッグの受診補助を受けることができる場合があります。

健康保険の任意継続のデメリット

健康保険の任意継続を選択すると、デメリットになりうる部分もあります。

保険料は全額自己負担

保険料は収入の有無に関わらず、全額自己負担です。会社員時代であれば、会社が折半してくれたのが全額負担になるので、保険料が高く感じます。

任意継続よりも安い保険料になる場合がある

保険加入の選択は、任意継続と国民健康保険のみ、ということはありません。場合によっては、国民健康保険や任意継続よりも保険料が安くなる場合があります。

まずひとつが、家族の扶養に入るケースです。家族が他の健康保険の被保険者である場合、被扶養者として健康保険に加入することができます。ただし、扶養に入るには、年収130万円(60歳以上は年収180万円)未満などの条件があります。

また、もうひとつは、該当する人は多くはありませんが、厚生労働省認可の特定健保組合に一定期間加入していたケースです。その場合、特例退職者医療制度により、後期高齢者医療制度に加入するまで在職者と同等の保健給付を受けることができます。なお、保険料は健保組合により異なります。

自己都合で辞めることはできない

任意継続は2年間継続し、保険料は収入の有無にかかわらず基本的に変わりません。途中で、国民健康保険に切り替えたい、家族の健康保険の扶養に入るといった理由で辞めることは原則できないので注意しましょう。

辞めることが可能なのは、以下の理由に該当した場合です。

  • 期間が満了した時(2年間)
  • 再就職で他の医療保険の被保険者となった場合
  • 保険料を期限まで納めなかった場合
  • 後期高齢者医療制度の被保険者となった場合
  • 任意継続の被保険者が死亡した場合

健康保険の任意継続の条件と手続き方法

健康保険の任意継続には、手続きが必要です。手続き可能な期間を過ぎてしまうと、任意継続はできません。条件や手続き方法を確認しておきましょう。

任意継続できる条件

資格喪失日(退職日)までに、保険加入期間が継続して2か月以上あること。短期間で転職を繰り返し、加入期間が2か月に満たない人には、任意継続の資格はありません。

任意継続に必要な書類

退職手続きの最中に、任意継続について担当者が教えてくれない場合もあります。任意継続を希望するのであれば、自分から加入している健康保険に問い合わせをしましょう。

必要な書類は、「任意継続被保険者資格取得申出書」です。任意継続する健康保険からダウンロード等で取り寄せ、必要事項を記入して健康保険に提出します。資格喪失日より必ず20日以内に行いましょう。

扶養する家族がいる場合は、続柄を証明できる戸籍謄本、または世帯全員の住民票(在職時から引き続いて扶養になる場合は省略可)のほか、扶養の事実を確認する書類(市区町村が発行する非課税証明書や所得証明書、源泉徴収票のコピー、雇用保険受給者資格者証のコピーなど)の提出が必要になります。手続きの前に、必要書類はしっかり確認しておきましょう。

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任意継続の手続き先

任意継続の手続き先は、加入する健康保険になります。喪失日より20日以内に申し込まないとならないので、日にちは間違えないようにしましょう。

手続きが完了すると、新規の保険証と共に保険料の納付書が届きます。保険料は納付期限までに指定された金融機関等に納付します。

任意継続の注意点

任意継続の手続き中であっても、退職日の翌日から保険給付を受けることがでます。もし治療中で通院している病院があれば、窓口で「任意継続の申請中」と伝えれば問題ありません。

健康保険扱いで対応してくれる病院もありますが、もしそれができなかった場合は、一旦自費で払い、後日領収証とともに「療養費支給申請書」を健康保険に申請すれば、保険金の給付を受けることができます。

任意継続を知っておけば、退職後の負担を抑えられる

退職後であっても、引き続き健康保険の恩恵が受けることができる任意継続被保険者制度。保険料は在職時と違って全額自己負担、期間も2年間と限定的で、加えて手続きは少し手間かもしれませんが、高所得者だったほどメリットは大きいもの。何かと出費を抑えたい退職時は健康への不安が重なる時期でもあります。退職後の金銭的な負担を減らし、安心を確保するためにも、ぜひ選択肢のひとつとして任意継続制度を頭に入れておきましょう。

平川恵

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編集ライター。FP(2級)、整理収納アドバイザー(2級)等の資格を生かし、編集・執筆。雑誌、書籍、Web、 広告などの制作に携わる。マネー記事のほか、主婦実用、ダイエット、美容記事も数多く執筆。
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