2023年4月30日
老後
税金を払えないとどうなる?滞納した場合の対処方法やそうならないための準備を解説

「老後の税金」について考えたことはありますか? 老後は義務から解放されて悠々自適に、と想像しがちですが、実際には老後にも様々な税金を払う義務があります。特に会社員だった人は税金が給与から天引きされることも多く、払っていた自覚が薄いため、「老後の税金」は“寝耳に水”。知らずにいると、老後に税金を払えなくなることも。当記事では老後に税金が払えない時の対処方法と、そうならないための準備に触れていきます。

老後に税金が支払えなくなる場合

では、老後に税金を払えなくなるのは、どんな場合でしょうか? 老後に払う税金は主に、住民税、所得税があり、家や土地を所有していれば固定資産税、自動車を所有していれば自動車税などがあります。所得税は、年金給付額が65歳未満の場合は年108万円、65歳以上の場合は年158万円以下であれば、免除されることになっています。この金額は夫か妻、1人分の年金受給額のこと。税金は個々に課せられるものなので、夫婦それぞれ別に算出するのがポイントです。

そもそも年金頼みの生活はギリギリ収支

総務省の「家計調査報告 家計収支編 2020年(令和2年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の1か月の収入は25万6千660円で、消費支出は22万4千390円ですが、税金や国民健康保険などの社会保険料を指す「非消費支出」が3万1千160円かかっており、差し引くと、かろうじて1千110円の黒字です。このように、老後は平均的に暮らしていても、毎月ギリギリの収支のなか、結構な割合を占める税金を払い続けることになるのです。こういった現状を知らずに、現役時代と同じように消費していると、家計はあっという間に赤字になります。

持ち家世代を悩ます固定資産税

家賃を支払い続けなくて済むという意味では、持ち家にしたのは正解でしたが、家や土地などを所有すると固定資産税を払う必要があります。所有する不動産の評価額によって金額が決定する固定資産税は、月割りにすると都市部で家賃を払い続けるよりも安いかもしれません。しかし、あとでまとめて払おうと思っていると、20万や30万というまとまった金額になり、年金だけが頼りの生活では払えなくなります。加えて持ち家は、経年劣化による修繕費やバリアフリー化の費用などがかかってくることを念頭におかなくてはなりません。

夫婦どちらかに先立たれると収入も激減

意外と想定されていないのが、配偶者に先立たれた場合。たとえば、夫が月12万円、妻が月6万円で月18万円を給付されていた夫婦の場合、夫が亡くなると、収入は妻の年金6万円のみになります。しかし、固定資産税などは2人で暮らしていた時と同じく支払う必要がありますので、急に負担が大きくなります。

税金を払えないとどうなるのか

では、万が一、税金を払えなくなったら、どうなるのでしょうか? つい食費や水道光熱費など、生活に直結しているものを優先して、「1人くらい払わなくても大丈夫なのでは…」と思ってしまうことがあるかもしれません。法律的には5年間滞納すると「時効」となりますが、それを放置する自治体はなく、次のような段階を踏んで役所から通達や訪問があるので、払わないという考えは払拭したほうがよさそうです。住民税の場合で見てみましょう。

①督促状が届く

住民税を支払えない場合には、支払い期日から20日以内に「督促状」が発送されます。振込用紙が同封されていますので、この時点で支払えば問題になりません。しかし、支払えないと次の段階に進みます。

②催告状が届く

催告状は、送られてくると、督促状と違って法的な措置を視野に入れたものであることがわかります。まず、普通郵便ではなく内容証明郵便で届きます。内容証明郵便は、いつ、どんな文書が誰から誰あてに出されたかを、差出人が作成した謄本によって郵便局より証明される制度ですから、これにより、税金の時効を中断する効果があるといいます。ここでも振込用紙が同封されていますので、この段階で払えれば、問題ありません。しかし、放置すると次の深刻なステップに進みます。

③差し押さえが実行される

催告状を送っても支払いがないと、自治体による差し押さえが始まります。差し押さえの前に「差押予告書」が送付され、この段階では住民税を一括で支払うか、財産を差し押さえるかの二択になります。
送付されてから10日経過しても住民税が一括で払われない場合は、資産の差し押さえ、銀行口座の凍結などが実行されます。

税金を払えない時の対処方法

それでも、どうしてもすぐには払えない場合、どうしたらよいのでしょうか。
大事なのは、払えないからといって放置しないことです。督促状や催告状を放置すると、どんどん手続きが進んで取り返しのつかないことになります。自治体に払う意思があることを示すだけでも、差し押さえを待ってもらえるなど、温情措置が受けられる場合もありますので、まずは窓口などで相談してみましょう。対処方法はおもに3つあります。

分割の相談をする

未払いは放置せずに、まず自治体の窓口に連絡し、分割ができないか相談してみましょう。もちろん同じ金額を払うには払いますが、1~2年など長期間で計画的に支払うことができるので、無理なく未払いを解消できます。

猶予の相談をする

住民税は「免除」や「減免」はありませんが、「猶予」はあります。その人の状況にもよりますが、自治体の窓口に相談して支払いを一定期間待ってもらうということが可能です。担保の提供や延滞金の支払いといった条件が課されたうえで、一定期間の猶予がされます。

生活保護の相談をする

年金を受給していても、最低生活費(地域・年齢によって異なる)を下回っていれば、不足金額を生活保護として受給できます。国民年金は満額受給しても6万5千75円。たとえば、東京23区内だと最低低活費は約12~13万円(2020年)なので、不足金額5万4千円ほどを生活保護として受給するかたちです。ただし、生活保護を申請すると資産を所有することが認められないため、貯金ができない、不動産や自家用車を所有できないなど、いくつかの制約が発生します。申し込む前によく確認しましょう。

老後に税金を払えなくならないための準備

年金頼みの老後だと、税金が払えない困窮生活に陥ることも少なくありません。このような“老後危機”に備え、次のような対策が考えられます。

住民税の節税を検討する

公的制度を活用することで、住民税の節税ができます。「個人型確定拠出年金(iDecCo)」は、拠出した掛け金を運用し、60歳から受け取る制度。ただ貯める、増やすだけでなく、拠出する掛け金全額が所得控除になるため、翌年の住民税が安くなるのです。また、「個人年金」は1年間の保険料に応じて所得税、住民税が安くなりますし、「ふるさと納税」も寄付した金額から2000円を差し引いた分が、翌年の住民税や所得税から還付されます。

シルバー人材センターなどで特技を生かして収入を得る

とくに自営で店舗などを経営していた人は、店舗の維持費用などが家計を圧迫することも。そこで、経費が掛かる店舗をたたみ、シルバー人材センターなどで自営していた技術を生かして収入を得るというのも一つの考え方です。

持ち家があるなら、リースバックやリバースモーゲージなどを検討

自宅を所有しているのであれば、住みながら資金調達ができる「リースバック」や「リバースモーゲージ」を検討するのも手です。
「リースバック」は、自宅を売却して代金を一括受け取りし、賃貸料を支払ってそのまま自宅に住み続ける方法。まとまった資金を手にすることができ、年齢制限なく、マンションでも住宅ローンが残っていても検討可能なのが特徴です。ただし、その後賃貸料を払い続ける必要があります。
「リバースモーゲージ」は、自宅を担保に融資を受ける方法。まとまった資金を一括または定期的に受け取れ、一般的には、毎月利息分のみを支払うものです。契約者が死亡後に、相続人が自宅を売却して一括弁済するか、手元資金等により一括弁済することも可能です。こちらは年齢制限やマンションは不可の場合があるなど、リースバックと条件が異なりますので、自分たちの状況にはどちらが適しているか、よく検討することが大事です。

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まとめ

老後に税金が払えなくなるケースは、今後、物価上昇や少子高齢化が加速するにつれて、ますます増加すると考えられます。まさに他人事ではありません。「老後」と一口に言っても70代、80代、90代では状況が違ってきて当然です。老後を安心して過ごすためにも、その時の状況に合わせて対策できるように、さまざまな対処策を調べて検討しておきたいですね。

岩崎周子

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雑誌、書籍編集を経て、シニア層の生活・健康にかかわる記事を手がける。特に近年は、相続・実家じまい関連のテーマに力を入れて活動中。
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