2023年6月1日
老後
【FP解説】単身・夫婦2人世帯の老後資金の目安とは?ゆとりある老後を過ごすための貯め方

老後資金にいくら必要なのかが不透明だと不安になってしまいますよね。
「最低限、必要なのは月にいくらくらいなのだろう?」「ゆとりある老後を過ごすために必要な金額は?」と疑問に思っている人のために、単身・夫婦2人世帯の生活費や、ゆとりある生活をするための目安資金についてお伝えした後、資金の貯め方についてご案内します。
大変な金額が必要となりますが、大事なのは「備え」です。

老後の生活費の目安

総務省の調査から、老後の生活費の目安が見えてきます。単身世帯と夫婦2人世帯、それぞれ解説します。

単身世帯の老後の生活費

家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」によると65歳以上の単身無職世帯の消費支出は、1世帯当たり1か月平均、約13万3千円です。なお、この支出額は、コロナ禍の影響で支出を抑えている状況であり、前年度は約14万円でした。以下、単身世帯の生活費の項目例を割り出してみました。

消費支出:13万3千円

  • 食費 3万7千円
  • 住居費 1万2千円
  • 水道光熱費 1万3千円
  • 家具・家事用品費 5千円
  • 被服費 3千円
  • 保健医療費 8千円
  • 交通・通信費 1万2千円
  • 教養・娯楽費 1万3千円
  • 交際費 1万5千円
  • その他消費支出 1万5千円

夫婦2人世帯の老後の生活費

先に出てきた「家計調査報告」によると高齢夫婦無職世帯(夫婦ともに65歳以上)の消費支出は1世帯当たり1か月平均、約22万6千円です。こちらも、コロナ禍の影響で支出を抑えている状況であり、前年度は約24万円でした。この資料を参考に、夫婦2人暮らしの老後の生活費について、支出内訳を割り出してみました。

消費支出:22万6千円

  • 食費 6万6千円
  • 住居費 1万5千円
  • 水道光熱費 2万円
  • 家具・家事用品 1万円
  • 被服費 5千円
  • 保健医療費 1万6千円
  • 交通・通信費 2万7千円
  • 教養・娯楽費 2万円
  • 交際費 2万円
  • その他消費支出 2万7千円

生活費以外の老後資金の目安

最低限の生活費以外には、どのような項目に対し、どのくらい金額がかかるのでしょうか。具体的な金額を割り出してみました。

単身世帯における生活費以外の老後資金の目安

先の調査によると、単身世帯(平均年齢58.5歳)の消費支出は、1世帯当たり1か月平均、約15万1千円です。

生活費以外の老後資金を考えるとき、この生活水準を老後も保つことを意味すると考えると、最低限の生活費の他、およそ1万8千円が必要になります。 生活費以外の資金項目として、主なものは以下の通りです。

  • 旅行、レジャー
  • 車の買い替え
  • 住居のための費用(リフォームやメンテナンス)
  • 介護費

以上のような項目があることを考えると、「月に1万8千円の余剰資金では、とうてい足りない」と考える人もいるでしょう。

単身世帯でも、子どもがいる場合は、子世代への援助についても考えなければなりません。

夫婦2人世帯における生活費以外の老後資金

夫婦2人世帯においても、資金項目としては以下のものが挙げられます。

  • 旅行、レジャー
  • 子どもや孫への資金援助
  • 車の買い替え
  • 住居のための費用(リフォームやメンテナンス)
  • 介護費
  • 他、日常生活の充実(たまの外食など)

2人で旅行に行こうと思えば、一度につき数万円の出費となりますし、医療費、介護費についても、2人分がかかってきます。

老後の収入の目安

老後の支出について押さえたところで、今度は収入面を見ていきましょう。

単身世帯における老後の収入の目安

先に出てきた「家計調査報告」を参照すると、高齢単身無職世帯(65歳以上)の社会保険給付の平均額は、月々12万2千円ほどです。老後、とくに働かなければ、公的年金だけの収入となります。消費支出が13万3千円ほどなので、1万1千円は預貯金などからの持ち出しとなります。

65歳の人が90歳まで生きるとすると、老後は25年あります。老後は1万1千円を25年分、つまり、最低限でも330万円を用意しておく必要があります。
働いているときの生活水準を続けるとなれば、あと1万8千円を25年分、つまり540万円を用意しておかなければなりません。

夫婦2人世帯における老後の収入の目安

同様に、社会保障給付(夫婦二人平均)は22万円です。つまり、定年後働かず、公的年金しか収入がないとすると、同様に、月々では赤字ということになります。

さらにゆとりある生活のためには、預貯金としてかなりの金額を用意しておかなければならないことが推測されます。例えば、住居をバリアフリーにリフォームするなら数百万円が必要になることが多いですし、子世代が「家を建てたい」と言ったり、孫が「留学したい」等と言ったりすれば、まとまった資金援助をしたいという気持ちが湧き上がるでしょう。突発的でまとまったお金が必要になるとき、もうボーナスを充当させたり、ローンを組んだりといったことは難しくなります。

老後資金の準備方法

老後資金については、定年になる前からの備えが必要です。なかには、定年にならないと使えない制度等もありますが、知っておくのと知らないのとでは、かなりの差があります。主な資金準備方法は以下の5つです。

個人年金保険

将来の年金を、自分で準備できる保険の一種です。毎月、一定額を積み立てし、契約時の設定年齢から、毎年一定額の年金を受け取れるようになります。年金額は契約時に決めるため、公的年金ではフォローできない部分を確実に貯蓄したい人に向いています。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

掛け金を運用し、将来受け取れる年金額が運用実績によって変動する年金です。運用益は非課税となります。

リバースモーゲージ

自宅を担保に融資を受け、毎月利息のみ(金融機関によっては利息の返済も不要)を支払って住み慣れた家に暮らせる、シニア世代向けの金融制度です。死亡後に対象物件を売却することで返済できます。空き家問題の解決策として利用する人もいます。

リースバック

自宅を売却し、一括でまとまった資金を受け取り、その後も賃貸の形で住み続けられるサービスです。まとまった資金が一括で調達できるうえ、住み慣れた家にそのまま暮らすことができます。維持費や修繕費も不要となります。

再就職や起業

老後、再就職によって、公的年金ではフォローできない生活費のぶんを稼ぐことも可能です。健康なうちにしかできないことなので、介護が必要になってからの生活費用等をあらかじめ貯金しながら働くのが理想です。

50代になったら定年後の備えを真剣に考えよう

以上のように、老後は公的年金だけで暮らすのは難しいといえます。なんとなく貯金をするだけでなく、将来を見据えた具体的な金額の用意をしておくのが大事です。そのためには、50代になったら定年後の備えを真剣に考えるべきといえるでしょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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