老後のため、コツコツ貯金をしていても、各種保険をかけていても、「老後、破綻しないほどの備えができているのかわからない」と不安に思っている人はいませんか。
生活保護の受給世帯は、その半分を高齢者世帯が占めています。老後破綻は、誰にでも起こりえることです。しかし、何が原因で老後に破綻してしまうのかを知っておけば、対策は立てられます。老後破綻に陥る原因や、予防のための備えについてお伝えします。
厚生労働省「被保護者調査(令和3年2月分概数)」 によると、生活保護を受けている人は204万7778人。その55.2%が高齢者世帯で、ほとんどが単身世帯となっています。
年ごとの同調査では「保護開始の主な理由」も挙げられており、そこから老後破綻の主な原因を推測することができます。
生活保護開始の主な理由として、ダントツの1位が「貯金等の減少・喪失」です。2019年度には全原因のうち、40.2%を占めています。
高年齢になると働くことができず、公的年金しか収入がないような人はとくに貯金を切り崩す生活となるため、気がつけば貯金が底をついていたという状況は少なくありません。
生活保護開始の理由第2位が「傷病による」ものです。とくに老後は体調を崩しがちです。病気になってしまえば、せっかく定年後も働いていたとしても、辞めざるを得なくなります。
すると収入が減るため、貯蓄を十分に行っていない人は、あっという間に破綻してしまうでしょう。治療費もかさみます。
自身の介護が生じると、病気のときと同様に働くことができなくなります。家族に介護が生じた状態であっても、自分がケアする側にまわればフルタイムで働くことはなかなか難しくなるでしょう。
介護サービスを利用するとその分サービス料金がかさむため、八方ふさがりになる人もいます。
定年後も再雇用などにより定年前と同じように働いている人であっても、収入は定年前よりも減少する傾向があります。定年前の6割程度まで下がってしまうことも珍しくありません。
給与が下がったことを見て見ぬふりをして、「働いているのだから、大丈夫」と生活水準を下げないで暮らしていれば、破綻へまっしぐらとなってしまいます。
引きこもりや離婚して子どもを連れて戻ってきたなど、様々な事情で働けない子世代と暮らしていると、親の公的年金しか主な収入がない場合は、あっという間に困窮することが想定されます。
総務省「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」によると、定年後、65歳以上の夫婦のみの無職世帯当たり一か月平均の社会保険給付額は約22万円で、一方、消費支出は約22万6千円です。つまり1か月あたりの平均額ベースでは、消費支出だけでも、社会保障給付のみの収入では、赤字となる計算となります。
子世代を年金者が支えるのは、とうてい無理な場合が多いと思われます 。
以上の傾向を踏まえて、どんな人が老後破綻しやすいかを考察します。
たとえば1か月あたり3万円の赤字でも、25年続けば900万円です。
毎月の支出が収入を3万円上回る生活を続ける場合、900万円程度の貯蓄がなければ、老後25年の生活を支え切れませんので、貯蓄が少なければ、破綻への道を進むことになります。
「年金者になったから」「再雇用で収入が減ったから」と思えば、通常は生活レベルを落とすことを意識します。
継続的な赤字が貯蓄の範囲で収まるように、 「ビールをやめて発泡酒にする」といったコツコツ系から、「海外旅行はやめて国内近場にする」といったことまで、様々な工夫で生活レベルを落とさなければ、破綻は目に見えています。
病気や介護が生じると、今まで働くことができていた人はその分の収入が減り、年金生活者だった人は治療費や介護費がかさんでさらに生活が苦しくなります。健康を損ねてしまうと、工夫の仕方で節約できる、収入を増やせるといった可能性がほとんどなくなってしまいます。
老後破綻しないためには、定年前からの心構えが大切です。具体的にどんなことをすればよいか、要点を3つに絞ってお伝えします。
収入が減少したとたん、一気に生活レベルを下げるのは難しいものです。50代のうちから少しずつレベルを落とすことにチャレンジしておけば、定年後もそう苦しまずに慎ましい生活を送れます。
「休肝日を週一から週二へ」「昼食を外食からお弁当に」など、健康維持につながるものから始めてみてはいかがでしょうか。節約すれば、貯蓄の増加にもつながります。
過去一年間の生活費用を算出し、また自分の世帯が定年後にもらうことになる公的年金額を想定して割り出し、生活費と年金収入にどの程度のギャップがあるかを具体的に知りましょう。
そのうえで、「生活費をどのくらい絞れるか」「再雇用やパート・アルバイトに出ることでどの程度稼げるか」「いくら貯蓄があればよいか」をシミュレーションし、老後の生活費と収入を見える化します。必要な金額が見えれば、貯蓄や再雇用制度の活用など、やるべきことも見えてきます。
貧困に陥るリスクの中で最も避けたいのが、健康を損ねること、要介護状態になることです。規則正しくいろいろな食材をとる食生活と、適度な運動で健康をキープしましょう。
老後破綻しないためには、老後の手前からさまざまな対策を練っておくことが必要です。具体的には、次の3つを意識しましょう。
貯蓄や個人年金などの手法で老後に備えるにしても、限界があります。手持ち財産の中で運用できるものがないかどうか、考えておきましょう。 例えば、自宅を担保に資金を借りることができるリバースモーゲージという手法があります。
月々、足りない金額を補填する形で融資を受けることも、まとまった金額を一括で借り受けることもでき、毎月の返済は利息のみ、金融機関によっては利息の返済も不要です。元金や返済していない利息は、死亡後に自宅を売却することで返済できます。
また、自宅を売却した後も、家賃を支払うことで住み慣れた家に残れるリースバックという手法もあります。一括でまとまった老後資金が手に入るうえ、以後の固定資産税や修繕費を支払う必要がなく、身軽に暮らせます。
ローンが残っている場合、早めに返して、年金生活になった際の支出に大きな固定費が残らないようにしておくことも考えておきましょう。ただし、返済により貯蓄を減らしてしまうことが、破綻につながるリスクもあるので、シミュレーションを踏まえた慎重な対応が必要です。
既存ローンの金利が高い場合には、借り換えを検討するなど、ローンを見直すことも重要です。
社内の人脈作りは再雇用につながり、社外の人脈作りは会社を離れた後の就職に役立ちます。サラリーマン一筋だった人にとって、社外の人脈作りはなかなか難しいものかもしれません。
近所の趣味サークルに顔を出す、ネットで共通の趣味を持つ人のサークルに入るなどして、人脈を広げておくと、いざというとき公私ともに助け合うことが期待できます。
老後破綻が不安であれば、定年前から老後の生活の基盤を作っておくことが大事です。まずは体力づくりと健康的な食生活で病気や介護のリスクを減らし、いつでも働ける身体を維持しましょう。
そのうえで、月々の収支を見直したり、資産の合計額をしっかり把握したりすることで、スムーズに老後の生活へ移行できるよう準備をしておくことがおすすめです。