2023年6月30日
老後
【FP解説】50歳での貯金額は?50代の平均貯蓄額や老後資金を貯める方法を解説

50歳を迎えると、そろそろ老後の生活費を貯めておかなければと意識をしはじめる人も多いでしょう。実際、世の中の50代の人たちは、どのくらい貯蓄があるのでしょうか。また、老後必要なお金は、どのくらいなのでしょうか。定年後の生活について考えなければならない50代の方向けに、同世代の平均貯蓄額や、老後資金を貯める方法について解説します。

50代の平均貯蓄額と中央値

金融広報中央委員会の「家計の金融公道に関する世論調査(令和2年)」 によると、2人以上世帯(世帯主20歳以上)の場合、預貯金や保険、有価証券等を含めた金融資産の保有額の平均値は1,436万円、中央値は650万円です。

一方で、同調査によると、単身世帯の場合、金融資産の保有額平均は653万円です。中央値は、50万円となっています。
2人以上の世帯と単身世帯では、金融資産の保有額にかなり開きがあることがわかります。単身世帯は「自分一人の面倒を見るだけだから」と、いささか貯蓄に無頓着になりがちなのでしょうか。

年収別の50代の貯蓄額

先のデータを参照すると、年収別の50代の貯金額は、以下のような平均値と中央値になっています。

  • 年収300万円未満:平均値は826万円、中央値は350万円
  • 年収300万円~500万円未満:平均値は663万円、中央値は303万円
  • 年収500万円~750万円未満:平均値は1,265万円、中央値は700万円
  • 年収750万円~1千万円未満:平均値は1,964万円、中央値は1,200万円
  • 年収一千万円~1,200万円未満:平均値は2,148万円、中央値は1,583万円
  • 年収1200万円以上:平均値は5,555万円、中央値は2,900万円

年収300万円未満の方が、年収300万円から500万円の層よりも金融資産保有額が大きい傾向であることがみてとれます。また、年収500万円から750万円の層になると、一気に平均額が倍になるのも特徴的です。

出典:家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和2年調査結果

老後に必要な資金

では、実際に老後に必要な資金はどのくらいなのでしょうか。そして世の中の50代は、自分や夫婦の老後のための貯蓄をしっかりできているのでしょうか。

夫婦二人世帯は1,050万円が必要

総務省の家計調査報告(令和2年)によると、65歳以上の夫婦のみで構成される無職世帯の一ヶ月の家計収支の平均値は、社会保障給付は21万9,976円、税金等の非消費支出と生活費等の消費支出を合わせた金額は、25万5,550円となっています。働かずに年金だけで暮らそうとすると、月々3万5,000円ほど赤字となります。

夫婦それぞれが90歳まで生きるとして、65歳からの老後は25年。25年間ほど、毎月3万5,000円を貯蓄から差し引いて生活するとすれば、合計1,050万円ほどを貯蓄として事前に準備しなければなりません。

単身世帯は681万円が必要

単身世帯も同じように計算してみましょう。先の調査では、65歳以上の単身無職世帯の一ヶ月の家計収支の平均値は、社会保障給付が12万1,942円、非消費支出と消費支出を合わせた金額が14万4,687円です。毎月2万2,700円ほどが赤字となり、25年で681万円が必要になります。

2020年の数値はコロナ禍での数値

最新版のデータとして2020年の調査例を出して説明しましたが、2020年といえばコロナ禍の真最中。日本中が旅行をはじめとした外出の出費を抑えた年です。そのような中での平均値ですので、かなり消費を抑えた結果の数値と考えていいでしょう。実際には、もっと貯蓄が必要になる可能性があります。

参考までに、2019年の数値を挙げておきましょう。高齢夫婦無職世帯の、消費支出と非消費支出を合わせた平均額は月々27万929円。
2020年の25万5,550円と比べて、約1万5000円の差があります。高齢無職世帯の全体消費の平均額は15万1,800円なので、これも2020年の14万4,687円と比べると、約7,000円の差があります。

50歳から始める貯金の仕方

50歳から貯金を始めるには、次のような方法があります。

コツコツ積み立てる

ひと月1万円程度の貯金を50歳から始めたとしても、老後の65歳までに貯められるのは、15年でせいぜい180万円程度。では、どれだけ貯めれば、老後を安心して過ごせるのでしょうか。

夫婦二人世帯であれば、1,050万円を15年で貯めるには、年間70万円、月々にして約5.8万円を貯蓄に回さなければならない計算になります。単身者であれば、681万円を15年で貯めるので、月に約3.8万円を貯金していくことになります。

投資型の金融商品を活用する

「毎月の積み立てには、そんなにお金を回せない」という人には、投資型の商品がおすすめです。といっても、投資の初心者がいきなり株を始めるのはリスクが大きいため、投資型の金融商品を利用するのがいいでしょう。

例えば、「つみたてNISA」は、とくに少額からの長期や積立、分散投資等を支援する非課税制度であり、一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益については、非課税となっています。投資の初心者であっても、リスクの少ない投資信託から始められます。

個人年金で積み立てる

「ただの積み立てや貯金では、老後までそれを引き出さないという自信が持てない」という人には、個人年金がおすすめです。個人年金とは、毎月一定額の掛け金を積み立て、60歳以降に私的な年金として契約時に決めた金額を振り込んでもらうものです。

例えば「個人型確定拠出年金(iDECO)」は、節税措置を受けることができる個人年金制度です。掛け金を自分で運用し、運用成果に応じて将来の受取額が決まるので、投資の面もあります。掛け金は全額が所得控除の対象になりますし、受け取るまでは運用益が非課税となります。

自宅を利用して資金調達する

マイホームを購入したにもかかわらず、「自分亡き後、この家に住んでくれる子世代がいない」という人におすすめなのが、自宅を担保に借り入れをする「リバースモーゲージ」です。生きている間は利子だけを支払い、元金は自分の死後、マイホームを売却することで支払う商品が一般的です。このため、少しの負担で生活資金を調達することができます。

なお、自宅を売却した後も、家賃を支払うことによりずっと住み慣れた家で生活できる「リースバック」もあります。売却してしまうので自分の名義ではなくなり、以後は固定資産税を納めることも、メンテナンスを行うこともありません。

まとめ

以上、50歳の貯金の現状や老後の生活資金、50代からの貯蓄のために必要なことなどをまとめました。老後の備えは、50歳からでもまだまだ間に合います。「今の収入だけでは老後を支え切れない」と感じたら、投資タイプの積み立てなども視野に入れましょう。健康を維持し、年齢に関わらずずっと働ける身体をキープするのも大事です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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