2023年6月30日
老後
【FP解説】老後の不安は「お金」と「健康」!老後を安心して過ごすために今からできること

老後に、どんな不安を抱えていますか。具体的に何に不安を感じるかは人それぞれではあるものの、要因は主に「お金」と「健康」に集約されるようです。老後を安心して過ごすために、今からできることは何でしょう。「お金」と「健康」、それぞれにスポットを当てて、漠然とした不安の正体を明確にし、今後の改善策や気をつけるべきことについて解説します。

老後に不安を感じていること

公益財団法人生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査(令和元年度)」によると、老後生活に対して不安を感じている人は84.4%と、かなりの割合を占めています。平成28年では85.7%、平成25年では86.0%と、近年高水準で「老後の不安」を抱える人がいることがみてとれます。

では、具体的にどのようなことに不安を感じているのでしょうか。同調査によると、複数回答可として得られた不安の内容としては「公的年金だけでは不十分なこと」、つまりお金の不安が82.8%と、ダントツのトップ。2位が「健康を害し、日常生活に支障が出ること」で、57.4%となりました。以下、3位が「退職金や企業年金だけでは不十分」、4位が「自助努力による準備が不足する」など、お金の不安が続きます。

老後のお金に関すること

実際、老後にはどのくらい生活費が必要になるのでしょうか。そして、公的年金はどのくらいもらえるのでしょうか。それぞれ解説します。

老後に必要な生活費

総務省の家計調査報告(令和2年)によると、65歳以上の夫婦のみで構成される無職世帯の一ヶ月の支出(生活費等の消費支出と、税金等の非消費支出を合わせた金額)の平均値は、25万5,550円です。現在、家計簿等の記録をつけている夫婦世帯は、今の金額と比較してみましょう。

ただ、まだ子どもが独立していないと、独立後の老後の出費はなかなか見当をつけづらいかもしれません。老後は教育に関する費用が少なくなり、また住宅ローンも払い終えている人が多いでしょう。その一方で、バリアフリーのためのリフォームや、高齢者住宅に住み替えるための費用など、新たな出費が発生します。高齢になると病気になりやすくなるため、病院にかかる費用も増えるものです。

同調査によると、65歳以上の単身無職世帯の一ヶ月の支出(生活費等の消費支出と、税金等の非消費支出を合わせた金額)の平均値は、14万4,687円です。一人暮らしでも、一ヶ月にこのくらいかかります。なお、元気なうちは慎ましい暮らしができても、病気になったり、介護が生じたりすると、通院や介護費用がかさむようになる恐れがあります。介護施設への住み替え費用も必要になるかもしれません。

公的年金の給付水準

先の調査によれば、65歳以上の夫婦のみで構成される無職世帯の一ヶ月の社会保障給付の平均値は21万9,976円、単身無職世帯では12万1,942円です。前項の支出と見比べてみれば、公的年金しか収入がない場合、支出が収入を超えてしまうことが分かります。

これで、「老後のお金の不安」が明確になりました。老後、無職となる場合、貯金を取り崩さなければ生活できないとなると、確かに不安です。また、元気なうちは働いて収入を得ることができても、万が一病気や大けがをしてしまうと、就労が難しくなるとともに通院や介護の費用がかかってきます。このように、健康の不安もまた、お金の不安に直結しています。

老後のお金で気を付けること

老後前に、あるいは老後に、お金の面で気をつけたいのは、以下の5点です。

老後前に、老後の生活資金シミュレーションを

老後、必要になる金額のシミュレーションを行い、公的年金で足りない部分を貯蓄で補填できるようにしておきましょう。足りない分の貯蓄を、何で補うか考えます。コツコツ貯金するか、個人年金として積み立てるか、働いて補填するか。貯金や個人年金として月にいくらかずつ貯めていくのなら、動き始めるのが早ければ早いほど、月々の負担は軽減します。

老後前に資産運用について学んでおく

給与からの貯蓄では足りない、老後働けるかどうかも自信がない、という人は、資産運用について学んでおきましょう。つまり、資産を増やすための準備をするのです。株式などの投資は、初心者が多額をつぎ込んで始めるにはリスクが大きすぎます。プロと始める投資信託を検討したり、株について学んだり、少額から始めてコツをつかんだりするなどして、本格的な資産運用に向けた準備運動をしましょう。

老後前に「起業できないか」を考えておく

ある分野のプロフェッショナルであったり、今まで接点はなくても興味が強い分野があったりすれば、老後に個人事業主として開業するのも一つの手です。とはいえ、老後に起業の準備をスタートすると、ブランクが生まれてしまいます。企業については早期から考え、準備しておきましょう。すでにスキルがあるなら開業方法について学び、人脈を築いておく、これから勉強する分野であれば資格を取得するなどの方法が考えられます。

老後はなるべく支出を抑える

定年退職したら、事前に行なっておいた生活資金シミュレーションに従い、なるべく月々の支出を抑えましょう。旅行やレジャーへ頻繁に行かなくても、お金のかからない趣味を見つけたり、ボランティア活動を行ったりすると、それが生きがいにもなり得ます。

老後に可能な資産活用を始める

老後だからこそ可能な資産活用による資金調達方法もあります。例えば、自宅を担保に借り入れを行う「リバースモーゲージ」もその一つです。一般的には、毎月の返済は利子のみで、元金は自分の死後、自宅を売却することで返済します。

老後の健康で気を付けること

もう一つの大きな不安、「健康」に対して気をつけるべきは、以下の5点です。

老後前には定期的な人間ドックを

定期的な人間ドックを行い、たとえ病気が見つからなくても、判定の悪い数値に注目し、自分の身体の弱い部分や気をつけるべき部分について知っておきましょう。生活習慣において自然と自分の身体をいたわるようになり、健康維持につながります。

老後前に不摂生をやめておく

たとえ人間ドックで悪い数値が見当たらなくても、深酒や煙草、暴飲暴食、夜更かしなどは、老後の身体に悪影響を及ぼす恐れがあります。不摂生は今のうちにやめておいた方が無難です。

老後は健康的な趣味を一つ始める

老後、仕事を辞めて自由な時間が多くなったなら、ぜひ健康的な趣味を一つ始めましょう。ウォーキング、ジョギング、ヨガ、登山など、体を動かすことによって、健康的な身体を維持できます。とはいえ、現役時代にあまり身体を動かさなかった人が急にスポーツを始めると、身体を故障しがちです。まずはソフトな運動から始めましょう。

老後も食費はなるべく削らない

老後は支出を控えることが金銭的な不安の緩和につながりますが、あまりに食費を切り詰めてしまうと、健康に影響が及ぶ恐れがあります。アルコールの消費を抑える代わりに野菜をたっぷり採る生活に切り替える、安価で脂の多い肉より、高価でも脂が少ない肉を購入するなど、健康的な食生活を意識し、そのための支出はなるべく削らないようにしましょう。

老後、生きがいになるものを見つける

健康を維持するには、身体のみならず精神の健康をキープすることが重要です。老後、活き活きと生活できるように、生きがいになるものを見つけましょう。孫の世話や地域のボランティア活動などは、誰かの役に立つことがやりがいに直結します。また、特定の芸能人の応援なども例として挙げられます。

まとめ

老後に漠然とした不安はあっても、「何が不安なのか、ハッキリとはわからない」という人が多いのではないでしょうか。この記事をお読みいただけたなら、不安の具体的な正体や、解決策がつかめたかと思います。安心できる老後のために、「お金」と「健康」に焦点を当てて、定年前から対策を練りましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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