2023年8月4日
老後
【FP解説】60歳の平均貯金額はどれくらい?貯蓄していないとどんなことに苦労するのか?

60歳といえば、一昔前であれば多くの人が定年退職し、老後を迎える年齢です。しかし、現代においては超高齢化社会を迎え、65歳まで定年を延長して働いたり、定年後にパートに出たりする人も増えてきています。まだまだ元気で、今後も人生を謳歌する60歳の平均貯蓄額はどのくらいなのでしょうか。また、年金以外の収入や貯蓄がない場合、どんなことに苦労するのでしょうか。60歳の貯蓄の現状や、老後資金の作り方について解説します。

60歳の平均貯金額

60歳代はどのくらい貯金があるのかを、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和2年)」のデータで見てみましょう。世帯別・収入別に、金融資産保有額の平均値と中央値が調査されています。金融資産とは、現金のほか株式、生命保険などの形で保有している資産のことです。

【60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額】

  • 年収300万円未満:平均値は1045万円、中央値は500万円
  • 年収300万円~500万円未満:平均値は1170万円、中央値は600万円
  • 年収500万円~750万円未満:平均値は2069万円、中央値は1420万円
  • 年収750万円~1000万円未満:平均値は3123万円、中央値は2100万円
  • 年収1000万円~1200万円未満:平均値は4620万円、中央値は3500万円
  • 年収1200万円以上:平均値は5362万円、中央値は5383万円

【60歳代・単身世帯の金融資産保有額】

  • 年収300万円未満:平均値は1037万円、中央値は280万円
  • 年収300万円~500万円未満:平均値は1949万円、中央値は800万円
  • 年収500万円~750万円未満:平均値は2825万円、中央値は1675万円
  • 年収750万円~1000万円未満:平均値は1171万円、中央値は1400万円
  • 年収1000万円~1200万円未満:平均値は400万円、中央値は400万円
  • 年収1200万円以上:平均値は2113万円、中央値は2040万円

平均値と中央値にかなりの差があるところも見られます。貯めている人と、貯めていない人の金額の差が大きいためです。

60歳の家計の収支

次に、60歳代はどんなことにお金を使っているのかを見てみましょう。総務省の「2020年家計調査報告(家計収支編)」には、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」と、「65歳以上の単身無職世帯」の家計収支の平均額が示されています。それぞれ、次の通りです。

65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支

実収入:25万6660円
非消費支出:3万1160円
消費支出:22万4390円
支出計:25万5550円

【消費支出の内訳】
食料費:29.3%
交通・通信:11.9%
教養娯楽:8.8%
交際費:8.8%
水道・光熱費:8.8%
保健医療:7.2%
住居費:6.5%
家具・家事用品:4.6%
被服及び履物:2.1%
その他:12%

65歳以上の単身無職世帯の家計収支

実収入:13万6964円
非消費支出:1万1541円
消費支出:13万3146円
支出計:14万4687円

【消費支出の内訳】
食料費:27.5%
交通・通信:9.0%
教養娯楽:9.7%
交際費:11.5%
水道・光熱費:9.7%
保健医療:6.2%
住居費:9.3%
家具・家事用品:4.0%
被服及び履物:2.4%
その他:10.7%

収入と支出の差額がほぼなく、単身無職世帯ではむしろ不足分が出ていることが分かります。住居費や子どもの教育費の負担が少なくなるにもかかわらず、ゆとりのない現状が見て取れます。

貯金がないことで老後に苦労すること

貯金がないと、老後にどんなことで苦労するのでしょうか。主に以下の5点が考えられます。

レジャー費が捻出できない

収支ギリギリの生活を送っているのですから、貯金がなければ海外旅行などのレジャーを楽しむ余裕はありません。友人との交際の幅も狭くなり、味気ない生活となることが考えられます。

冠婚葬祭に行けない

葬儀であれば一般参列者の香典平均額は5000円、親族であれば1万円。結婚式のご祝儀は2万円から3万円ほどが一気に飛んでいきます。冠婚葬祭に参加することができず、親族と疎遠になってしまうかもしれません。

子や孫への援助ができない

子どもがマイホームを購入する、孫が進学する、結婚するといった節目に、お祝い金を贈りたくなるのが親心です。しかし、貯金がなければそれもできません。

住居のメンテナンスができない

ローンを支払い終わって一安心と思いきや、古びてきた我が家には、水廻りや床下、屋根などの修繕が必要になります。メンテナンス費用は高額であることが多く、支払いができなければ、雨漏りのする家などに住み続けなければならないかもしれません。また、バリアフリー化などのリフォームもできなくなります。

住み替えが困難

マイホームが老朽化する、メンテナンスやリフォームができず住みづらいとなれば、住み替えようと考える人も多いでしょう。とくに60歳を超えたら、高齢者施設への住み替えも選択肢に入ってきます。しかし、貯金がなければ入居金や毎月の家賃を捻出できず、諦めざるを得ない事態になります。

60歳に向けて貯金する方法

以上のように、60歳代で貯金がないと、友人や親族と疎遠になったり、住居の問題が出てきたりして、かなり生きづらくなることが考えられます。60歳になる前に、以下のような方法で貯金を始めましょう。

個人年金保険やiDeCo、NISAを活用する

若いうちから月々いくらかを年金として積み立てておき、60歳以降に年間一定額が振り込まれるようにしたり、一括でまとまった金額を得られるようにしたりできるのが、個人年金保険です。投資ができ、節税効果も期待できるiDeCoやNISAといった積み立て方法もあるため、自分に合ったものを選びましょう。

ローンを見直す

住宅ローンの負担が重くて貯金ができないと感じているなら、ローンの組み換えや繰り上げ返済について考えてみましょう。支払総額を押さえられれば、そのぶん貯金ができます。

住み替えを行う

賃貸の場合、子どもが独立すれば、住居のダウンサイジングが可能になる家庭は多いはずです。シニアになればなるほど、住み替え時の審査が通りにくくなります。今のうちに、夫婦二人暮らしにふさわしい住居へ引越しできれば、浮いた家賃分の金額を貯金に回せます。

リバースモーゲージを検討する

ローンをある程度支払い終えた持ち家があり、さらに「自分たち夫婦の死後、誰も住まないし、相続も喜ばれないだろう」と感じているなら、リバースモーゲージを検討しましょう。リバースモーゲージは、自宅を担保に借り入れを行うシステムです。自宅にそのまま住みながら、借入金を手にすることができます。

リバースモーゲージであれば、毎月の支払いは利息のみで、元金の返済は自分の死後、相続人が家を売却するなどの方法で支払いを行います。つまり返済の負担を最小限に抑えながら、お金を借りることができるのです。多くの金融機関では50歳代以上を契約対象としていることから、シニアが使える資金調達法として注目されています。老後の生活資金が欲しい人のほか、「バリアフリーへリフォームしたいがまとまったお金がない」といった人にもおすすめです。

リースバックを検討する

自宅を売却した後、家賃を支払うことでそのまま自宅に住み続けられるのがリースバックです。売却金が一括で手に入るため、「高齢者施設への住み替えにまとまった金額が必要だけれど、今すぐ住み慣れた自宅を出る気もない」といった人におすすめです。

まとめ

60歳で貯蓄していないと、主に交際面や住居において苦労をすることが多いです。それを防ぐためには、なるべく早いうちから効率的に貯金をしておくこと、お金を捻出する方法を考えることが大事です。明るい老後のために、今からさまざまな方法を検討しましょう。

奥山晶子

リバースモーゲージ商品を見る
ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
金融機関を探す