2023年8月4日
老後
【FP解説】老後に向けて貯蓄はいつまでにどれくらい必要?老後資金の貯め方を解説

老後資金として、どのくらいお金が必要なのかご存知でしょうか。最低限の生活費が必要なほか、たまの旅行や子どもたちへの援助、突然の冠婚葬祭など、お金が必要になるシーンはたくさんあります。「年金だけで暮らしていける?」「NISAなどは、老後資金の貯め先として効果的なのか?」などと疑問を持つ人のために、老後に向けて貯蓄がいつまでにどれくらい必要なのかを説明のうえで、老後資金の貯め方について解説します。

老後の貯蓄はいくら必要なのか

総務省調査による「2020年家計調査報告(家計収支編)」には、65歳以上の単身無職世帯、夫婦のみ無職世帯の家計収支の平均値が掲載されています。それぞれご紹介します。

65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支

実収入:25万6660円
非消費支出:3万1160円
消費支出:22万4390円
支出計:25万5550円
収支:+1110円
以上のように、収入が支出をギリギリ超えていることになります。

65歳以上の単身無職世帯の家計収支

実収入:13万6964円
非消費支出:1万1541円
消費支出:13万3146円
支出計:14万4687円
収支:-7723円
以上のように、支出が収入を超えてしまっている現状が見て取れます。毎月7723円の赤字はわずかに思えますが、65歳から30年間の老後があると計算すると、トータルで278万280円にもなります。

生活費以外にも以下のような費用が必要

家計収支を見ると、単身世帯は持ち出しがありますが、夫婦二人であれば何とかギリギリやりくりができそうです。しかし、基本的な生活費以外にも、以下のような出費が生じる可能性があります。しかも、それぞれかなり高額です。

【生活費以外の出費例】

  • 旅行、レジャー…海外旅行1回につき、一人あたり10~20万円
  • 車の買い替え…中古50万円~、新車150万円~
  • 冠婚葬祭費…弔事5000円~1万円、慶事2万円~3万円
  • 家の修繕費…雨漏り修繕5万円(軽度)~数百万円(重度)など
  • バリアフリー住宅へのリフォーム…数百万円
  • 高齢者施設への住み替え…入居金が数百万円になる場合も

レジャーと違い、車の買い替えや冠婚葬祭費、家の修繕費などは「我慢すればよいもの」とは限りません。調子の悪い車は事故のもとですし、家のどこかが壊れたままでは生活満足度が著しく低下します。
とくに住居に関する出費は、高額かつ避けることができないもの。リフォームや住み替えの資金となる数百万円は、確保しておかなければなりません。また、賃貸の人は無職になっても家賃を支払い続けられるよう貯蓄しなければならないことは、言わずもがなです。

老後の貯蓄はいつまでに必要なのか

老後の貯蓄がいつまでに必要なのかは、ズバリ「定年まで」となります。定年退職をしてしまえば、収入は年金がメインとなります。そこからは貯蓄しようと考えても、なかなかできません。定年のない自営業者だとしても、働くための気力体力がいつまで続くかを考えると、サラリーマンが定年を迎える時期と同時期を目指して貯蓄をするのが良いでしょう。つまり、65歳までに老後の貯蓄が必要ということになります。

老後に向けた貯蓄方法

老後に向けて、どのような貯蓄方法があるのかを、5点紹介します。

個人年金を活用する

個人年金は、自分で積み立てを行う年金のことです。定期的にいくらか積み立てを行い、60歳、65歳など設定した年齢時から毎年一定額が通帳に振り込まれるように設定します。一括でまとまった金額を引き落とせるものもあります。

投資を始める

投資を行うことで運用益を得るのも貯蓄につながります。ただ、知識のない人が株などを始めるとリスクが高いため、まずは銀行に相談し投資信託を始めるなど、リスクの低いものから試しましょう。例えば少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度であるつみたてNISAであれば、リスクが低いうえ非課税枠があります。また、個人型確定拠出年金(iDeCo)は、掛け金と運用益の合計額を給付できる、個人投資機能のある私的年金です。

不動産の活用を検討する

誰も住んでいない家を賃貸に出すなど、不動産の活用を検討しましょう。これまでは「需要がない地域だ」と諦めていたとしても、今は空き家対策に力を入れている自治体が賃貸を後押ししてくれる制度があるなど、調べてみると借り手を探す余地がある場合もあります。

住み替えを行う

住居費用を重く感じているなら、今のうちに住み替えを行うことで、浮いた費用を貯蓄に回せます。子どもが独立したタイミングで今よりも小さな賃貸へ引っ越して家賃を抑える、車がなくても生活できるよう駅近に住まいを変えるなどといったケースが考えられます。

老後の生活を見据えて節約する

老後は収入がガクンと落ち込みますが、生活レベルを一気に引き下げるのは大変です。老後、今よりも慎ましい暮らしになることをふまえ、今から節約生活を送れば、お金が貯まるうえ節約が当たり前になり、一石二鳥です。お酒やたばこ、コーヒーなどといった嗜好品から、節約を始めましょう。

老後に向けた注意点

老後に向けて、どのような注意をしておけばよいかを、5点紹介します。

今の家計収支を把握する

老後の生活が心配なら、まずは今の家計収支を把握することから始めましょう。家計簿を毎月つけているでしょうか。つけていなければ、今日からつけてみて、どれほど支出があるかを月ごとに見てみましょう。先ほどご紹介した通り、65歳以上の夫婦二人無職世帯の消費支出は22万4390円、単身世帯は13万3146円です。今のわが家の支出額と比べてみて、いかがでしょうか。

定年後の家計収支をシミュレーションする

今の家計収支を把握したら、定年後の家計収支をシミュレーションしましょう。平均的な収入があると仮定して、どの支出を押さえればよいかを家族で検討します。また、どうしても持ち出しの金額があると気づいたなら、そのぶんを貯蓄で補えるよう、個人年金保険などを始めましょう。

大きな出費が必要な時期を前もって押さえておく

車の買い替え、家のリフォームなど、大きな出費が必要になりそうな時期を押さえておきましょう。車は5年~10年で乗り換えることになり、日々の移動距離が長いほど、早めに買い替えが必要になります。また、家の修繕は築後10数年で必要になることが多く、お風呂や台所など水まわりの寿命は15~20年ほどです。「車用貯金」「家用貯金」を別に始めるのもいいですね。

健康でいる

病気になると、入院や介護の費用がかさむようになります。夫婦のうち一人が入院すれば、見舞いや届け物など配偶者が病院に通うようになり、交通費も必要です。なるべく健康でいられるよう、日々運動を心がけましょう。また、節約するにしても、食費を過度に削ると健康を損なう恐れがあるため、控えましょう。

できれば老後も働けるよう、今からキャリア設計する

貯蓄と同じくらい大事なのが、働いて収入を増やすことです。定年となっても働き続けるようなキャリア設計を始めましょう。今のスキルを活かして働きたいなら、嘱託やパートとして今の会社に残ったり、フリーランスになって仕事を委託してもらったりといった働き方が考えられます。全く違う分野で働きたいなら、地元の求人を確認して、シニアにはどんな働き口があるかをリサーチしましょう。

まとめ

以上、老後の貯蓄について解説しました。老後のお金にまつわる不安は、払拭されたでしょうか。それとも逆に、強まったでしょうか。安心して老後を送れるよう、貯蓄は今から十分に行っておきましょう。コツコツ積み立てをするほか、余剰な不動産や宝飾骨董を処分するなどして、資金作りをしておくのが大事です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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