無年金という言葉を聞いたことはありますか?無年金とは、保険料の支払い期間が短いことで公的年金を受給できない状態をいいます。「自分の親が、無年金になる可能性はある?」「自分の子どもは国民年金を受けられる?」と思っている人に向けて、何が原因で無年金になってしまうのかを説明し、国が実施している対策や状況について解説します。
無年金とは、公的年金を受け取れない状態を言います。原因は、年金保険料の払込期間が短いことです。年金を受給するには、10年(120ヶ月)以上、保険料を納めなければなりませんが、何らかの理由でそれができなかった人は、年金の受給がないことになります。保険料の払込期間が短い理由として考えられるのが、以下の3点です。
会社員でない場合は給与天引きではなく、年金を毎月、または一括で支払う必要があります。令和3年度の国民年金保険料は、月額1万6610円です。「ただでさえ生活が苦しいのだから、年金保険料は払えない」と意図的に納付をしない人がいます。
国民皆保険として国民年金が始まったのは1961年のことで、強制加入は1986年からです。とくに高齢の世代は「保険料を納めなければ」という意識が薄いことが考えられます。
住民登録が日本になければ、年金の強制加入の対象にはなりません。若い頃に海外へ移住して、シニアになってから日本へ戻ってきたような場合、年金を納める機会がなかったために無年金となります。
「令和元年度 後期高齢者医療制度被保険者実態調査」によると、65歳以上の無年金者は全国に57万7811人。年齢分布としては70歳から74歳の層が最も多く約18万人、次いで80歳から84歳の層で、約13万6000人となっています。
無年金者がいる一方で、年金をもらっている人は、どのくらいもらっているのでしょうか。世代別の平均年金月額は、以下の表の通りです。
年代 |
厚生年金保険(第1号)受給月額 |
国民年金受給月額 |
60~64歳 |
7万6681円 |
4万2023円 |
65~69歳 |
14万2972円 |
5万7108円 |
70~74歳 |
14万6421円 |
5万6697円 |
75~79歳 |
15万1963円 |
5万5922円 |
80~84歳 |
16万575円 |
5万6572円 |
85~89歳 |
16万3489円 |
5万5175円 |
90歳以上 |
16万1044円 |
4万9232円 |
※厚生労働省「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」P28より抜粋して構成
無年金となると、働けなくなってからは生活が著しく困窮します。結果、生活保護を受けざるを得ない状況になる人も少なくありません。これを重く受け止めた国は、以下のような無年金対策を行っています。
2017年より、公的年金受給に必要な保険料納付期間が、25年から10年に短縮されました。10年だけ保険料を納付している人の受給額は、当然ながら平均よりもかなり少なくなりますが、無年金を脱却することができます。
収入減少や失業で保険料を納めることが困難な場合には、国民年金保険料免除制度の手続きを行うことができます。免除期間は年金の受給資格期間に算入されます。ただし、年金額計算時は、免除期間は保険料納付時の1/2(平成21年3月までは1/3)となります。
全額免除、3/4免除、半額免除、1/4免除があります。納付免除が可能な期間は、失業等のあった月の前月から翌々年6月までです。
20歳から50歳未満で、本人や配偶者の前年所得が一定額以下の場合、納付猶予制度の手続きを行うことができます。猶予期間は年金の受給資格期間に算入されますが、年金額が増えることはありません。年金額を増やしたいのであれば、後で猶予期間のぶんの保険料を納付する追納制度を利用する必要があります。
退職等により、厚生年金から国民年金への切り替えを行うタイミングで支払いが途絶える人が多いことから、切り替えの届出がない人には届け出用紙を同封した通知を送付します。また、届出のない人には、職権で国民年金を適用しています。
あなたや、あなたの親が無年金になりそうなら、たった一つの無年金対策があります。それは、任意加入を利用することです。
60歳の誕生日を迎えた後に無年金の人は、年金の受給資格期間を延ばすことができません。しかし、60歳から70歳までは、国民年金に任意で加入できます。年金事務所に出向き、あとどのくらい納付すれば年金がもらえるのかを確認したうえで、加入期間を決めるのがいいでしょう。同様の制度が厚生年金にもあります。
以上、無年金について解説しました。あなたや、あなたの親は、年金をもらえそうでしょうか。毎年誕生月に届く年金定期便で自分や親の納付状況を知り、将来、無年金にならないかどうかを今のうちからしっかり確認しておきましょう。