2023年9月16日
老後
【FP解説】老後の一人暮らしにかかる1か月の食費は?食費を節約する方法を解説

老後、収入が激減する中で必要になるのが節約です。「老後は時間もあるし、自炊しよう」「外食を控えよう」と考えている人も多いでしょう。老後の一人暮らしにかかる1か月の食費は、実際にはどのくらいなのでしょうか。老後の一人暮らしの食費の平均額についてご紹介した後、おすすめの食費節約術や食材、食費を含めた家計を節約して老後のお金を守る方法を解説します。

老後の一人暮らしにかかる食費

「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」によると、高齢者の単身世帯(60歳以上の単身無職世帯)の消費支出は、13万3,146円です。資料には、食料、住居などの支出項目それぞれについての内訳%も掲載されています。以下、およそ14万円を生活費として、単身世帯の生活費の金額内訳を割り出してみました。

全体支出:14万円
内訳

  • 食費 3万6,000円
  • 住居費 1万2,000円
  • 水道光熱費 1万2,000円
  • 消耗品費 5,000円
  • 保健医療費 8,000円
  • 被服費 3,000円
  • 交通・通信費 1万2,000円
  • 教育費 0円
  • 教養・娯楽費 1万2,000円
  • 交際費 1万5,000円
  • その他費用 2万5,000円

一方、単身世帯全体(平均年齢58.5歳)の消費支出は、1世帯当たり1か月平均15万506円で、このうち食費の月平均額は4万1373円です。つまり、食費だけに注目すれば、高齢無職になると5000円ほどを節約するようになるといえます。

老後の一人暮らしにかかる食費の節約術

老後、食費のどこを工夫すれば節約が叶うのでしょうか。考えられる節約術は、以下の通りです。

外食を控える

一人暮らしは自由な反面、仕事帰りにフラッとどこかの飲食店へ「おひとりさま」として立ち寄ることもあるのではないしょうか。お酒、食事と頼めば、会計が2000円、3000円を超えることも。こういった外食が常になっている人は、老後に控えるだけでも、かなりの節約になります。
とくに一人での飲み歩きが習慣化していた人は、数回我慢しただけで、1万円の節約になります。

コンビニ食をやめて自炊中心にする

昼食や夕食でコンビニ弁当を食べていた人は、自炊に切り替えましょう。会社での昼食用にお弁当と飲み物、ついでにお菓子などを買えば1000円程度の出費となりますが、自炊なら半分以下に抑えられます。

自炊で節約をするポイントは、やると決めたら続けること。自炊は調味料やキッチンツールなど、最初に揃えるものが多いので、3日坊主ではコンビニ食より高くついてしまうためです。基本の調味料で作れる料理のレパートリーを増やすと、節約上手になれます。

また、一人暮らしの自炊では食材を買い込みすぎて賞味期限を切らしてしまったり、料理を作りすぎて余らせてしまったりしがちです。野菜は漬物にする、冷凍できるものは早めに冷凍するといった工夫で、せっかくの食材を最後まで使い切りましょう。

釣りや家庭菜園を趣味にする

外食をやめ、自炊中心にすると、どうしても「息が詰まる」「楽しくない」と感じる人もいるでしょう。そんなときは、楽しみながら食材を獲得することを考えます。釣りで「今晩の夕食」をゲットする、家庭菜園で作りやすい野菜にトライする、キノコ狩りや山菜採りに挑戦するなどです。

家庭菜園は初期費用がかかるため、まずはベランダで育てられる野菜を作るなど小規模から始めるのがおすすめです。キノコ狩りや山菜採りは、必ず経験者と一緒に山へ登り、食べられない食材の見分け方や野生動物の避け方などを教えてもらいましょう。

老後の一人暮らしにかかる家計の節約術

ここまで食費にクローズアップしてきましたが、食費に限らず、家計全体で節約できることはあります。老後だからこそ取り組める、家計の節約術をご紹介します。

断捨離

現役時代は忙しくて手が付けられなかった納屋の掃除、不用品の整理など、老後は大規模な断捨離のチャンスです。不用品のうち、まだ使えるものはリサイクルショップに持ち込む、フリマアプリで売るなどして、お金を作りましょう。消耗品が大量に見つかることもあり、以後の生活費を抑えることもできます。宝飾品を鑑定してもらう、ネットオークションに出品するといったことも、時間のたっぷりできる老後ならではです。

住まいのダウンサイジング

断捨離すると、今の住まいが一人暮らしには広すぎることに気づくかもしれません。賃貸の人はとくに、高齢になって賃貸契約が難しくなる前に、より小さく家賃を抑えられる家に引っ越しましょう。持ち家の人も、広すぎる家を売却し、狭くても快適に過ごせる家へ住みかえれば、売却益が生活資金として使える可能性があります。

通信費の見直し

格安スマホにすれば通信費が割安になると知っていても、「現役時代は忙しくて、切り替えができなかった」という人はいませんか。格安スマホに切り替えると、1万円ほど通信費が割安になることもあります。また「現役時代はパソコンを使っていたけれど、老後はスマホで十分」という人は、思い切って光回線を解約してしまうのも手です。

体を動かす趣味を持つ

「なぜこれが節約につながるの?」と不思議に思う人もいるでしょう。支出項目の中で、高齢になるにつれてぐっと増えてくるのが医療費です。生活習慣病になった、足腰を悪くしたなど、高齢者の生活にはケガや病気がつきもの。健康を維持していれば、病気やケガのリスクを減らせます。足腰が丈夫であればパートやアルバイトで収入を得ることもでき、一石二鳥です。

軽自動車に乗り換える、自動車を手放す

ガソリン代のほか駐車場代や保険料、車検代など、自動車の維持費は老後の家計にかなりの負担となります。車検の時期になるなど車を買い替えるタイミングで、維持費の負担が比較的軽い軽自動車への乗り換えを検討しましょう。

なお、最近は高齢者の運転による交通事故が目立つ傾向にあります。車を手放すタイミングを、早いうちから考えておくのも大事です。

老後のお金に関する注意点

以上を踏まえ、とくに家計の節約に関わる面で、老後のお金に関する注意点を解説します。

食事内容を貧しくするような節約はしない

昼食は具のないおにぎり1個、夕食はもやしの炒め物だけ……など、食費を切り詰めようと考えたら、どこまでも切り詰められます。しかし、食事内容を極端に貧しくするような節約をすると、健康を害する可能性があります。食費が抑えられても、医療費が増えては意味がありません。自炊でも栄養バランスを考え、健康的な食生活を維持しましょう。

節約したいと考えたら「より大きな支出」に注目する

光熱費や日々の消耗品代などは、もともとの出費がそれほど多くない上に、節約しようとしても大きな効果は見られません。家計節約の際には、住居費、通信費、自動車の維持費といった、より大きな支出に注目しましょう。大きな支出を見直せば、大きな節約につながります。

家計の節約は「楽しんだもの勝ち」

節約生活は、「つましいもの」と感じてしまうと、どんどんみじめになり、ストレスが増えるばかりです。節約を長続きさせるためには、自分が「楽しい」と感じる節約術を選び、積極的に活用することが大事。また、必ず家計簿をつけ、「今月はこんなに節約できた」と達成感を味わえるよう工夫しましょう。

まとめ

老後の一人暮らしは、現役時代よりも出費を抑えた生活を強いられる人が多いでしょう。健康維持を第一に考え、ストレスを過度に感じない範囲で節約するのが、老後も生き生きと暮らせるコツです。また健康なうちは働いて収入を得て、節約だけではなく生活資金を増やすことを考えましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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