定年後、健康保険の納め方には選択肢があるのをご存じでしょうか。退職後も厚生年金保険への加入を続ける任意継続、自営業者などが利用している国民健康保険、子どもなどの扶養に入る、特例退職被保険者の制度を活用するという、4つの選択肢があります。退職後の健康保険の4つの選択肢に関して、デメリットやメリットを詳しく説明します。自分の場合はどの選択肢がよいか、検討してみましょう。
一つ目の方法は、定年前の厚生年金保険に継続して加入するものです。これを退職後の健康保険の任意継続といい、申請後2年間、継続することができます。資格喪失日の1日前までに継続して2ヶ月以上、被保険者期間があること、また資格喪失日から20日以内に申請することが要件です。
任意継続のメリットは、会社にいたときの保険の内容を、そのまま享受できることです。扶養家族がいる場合には、他の負担金なしでその家族も保険に加入できますし、定期健康診断なども、退職前と同様に利用できます。
任意継続のデメリットは、保険料が高いことです。退職前には会社が半分保険料を負担してくれていましたが、任意継続後は全ての保険料を自分で支払うことになります。保険料負担が今までの倍額になると思うと、躊躇する人もいます。
また、せっかく手続きをしても2年しか継続できないことに、不満を持つ人もいるかもしれません。保険料を一日でも滞納すると資格を失ってしまうというのも厳しい条件です。
勤務先の健保組合に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出します。提出のためには、以下のような書類が必要です。
退職証明書の写し、離職票の写しなど
定年退職後、国民健康保険に入る場合のメリットやデメリット、手続き方法は以下の通りです。
国民健康保険のメリットは、所得が少なければ保険料がかなり割安になることです。定年後、無収入となる人にとってはありがたい制度といえます。保険料は家族の構成員が多ければ多いほど高くなるため、一人暮らしで無収入となる人にとっては、選択できる方法の中で最も税負担が軽くなる方法です。
また、「無料の健康診断をやってくれないから、国保は割高」というイメージを持つ人もいますが、自治体によっては、高齢者だけが利用できる軽費の健診があったり、医療負担が軽減される制度を設けていたりすることがあります。
国民健康保険のデメリットは、定年後1年目の保険料がかなり高く感じられることです。国保の保険料は、前年の所得をもとに計算されます。定年前の所得が高ければ高いほど保険料も高くなるため、無職となった自分には大きすぎる額だと驚く人もいます。
退職後、14日以内に自治体の市役所等へ出向き、窓口で加入の手続きをします。以下のような書類が必要です。
資格喪失証明書、扶養削除証明書、退職証明書、離職票など
マイナンバーカード、運転免許証など
特例退職被保険とは、年金受給が始まってから、後期高齢者医療制度に加入するまでの期間、在職中と同程度の保険給付を受けられる制度です。この制度を持つ企業は少ないですが、自分の勤務先がこの制度を持っているのであれば、一考に値します。メリットやデメリット、手続き方法は以下の通りです。
在職中と同様、扶養家族も追加負担なしで保険事業を利用できます。しかも、任意継続の場合は2年だけですが、特例退職被保険の場合は75歳になるまでずっと利用が可能です。
傷病手当金と出産手当金が受けられません。また、特定の健保加入期間が通算20年以上、あるいは40歳以降10年以上の人が条件となり、長く一ヶ所に勤務した人でなければ、申請は難しいです。年金受給後にいったん国保や家族の被扶養者になることを選択した人も、加入できません。
また、地域によっては高齢者特例として医療負担額が軽減されたり、各種健診が軽費になったりなど助成制度を設けているところも。国保を利用した場合のメリットと併せて考えるのがよいです。
年金請求を行い、年金証書が届いた日の翌日から3ヶ月以内に、勤務先だった会社が加入している健保組合へ必要書類を提出します。必要書類は会社によって、また扶養状況等によって違いますが、おおむね以下の通りです。
子世代と同居していれば、定年退職を機に子どもの扶養に入るという方法もあります。別居している場合でも、子によって扶養されている事実を証明できれば可能です。
厚生年金保険料は、扶養家族の人数によって負担額が変わることはありません。家族の扶養に入れば、加入料の負担なしで健康保険を利用できます。扶養控除額も増えるため、一家の節税対策に役立ちます。
健康のためにも体を動かすアルバイトをしようと考えている人は、年収が一定額を超えないようにコントロールしなければなりません。60歳以上の高齢者の場合、被扶養者になれる条件は以下のいずれかです。
家族の扶養に入るときには、扶養する子どもの勤務先に相談し、以下のような書類を提出します。
定年を迎える前に、定年後の健康保険について調べておくのはとても大事なことです。さまざまな選択肢があるからこそ、それぞれのメリットとデメリットをしっかり把握したうえで、自分に合う方法を見つけましょう。