2023年9月10日
相続
【FP解説】終活での身辺整理とは?身辺整理の方法や注意点など始め方を解説

終活での身辺整理とは、不用品を処分したり、思い出の品を整理したりして、自分の死後、家族に迷惑が掛からないようにしておくことです。身辺整理をすることで気持ちがスッキリし、老後の人生が身軽で明るいものになるというメリットもあります。終活での身辺整理を行うタイミングは、退職後や引っ越し前など人それぞれです。自分で行う人もいますが、家族や業者の力を借りる人もいます。身辺整理の方法や注意点などを解説します。

身辺整理とは?

身辺整理とは、今後まったく新しい生き方をしていくために、現在身の周りにあるものごとを清算するという意味を持ちます。

「あの人は自殺前に身辺整理をしていた」とか、「仕事で大きなミスをして会社を辞めなければならないので、身辺整理しておけと言われた」などといったネガティブな文脈で使われることも多いため、「身辺整理」という言葉にはいいイメージがないという人も多いかもしれません。

しかし、終活における身辺整理は、必ずしもネガティブな意味では使われません。家族と自分の未来のために、身辺整理をするのです。自分の死後、残すと家族が困るようなものは処分しておいたり、自分自身が今後快適に暮らしていくために家の中を整理したりするのが、終活の身辺整理です。

終活とは?終活をするための準備方法やいつから始めるのかなどやり方を解説

いつから身辺整理をするのか

身辺整理をする時期はさまざまですが、タイミングとして多いのが、定年退職したときです。仕事で使っていたスーツやネクタイ、仕事関連の資料など、もう使わないものを処分します。机やキャビネット、スーツ用のタンスなど、大きなものも不要になるかもしれません。

また、福祉施設や子どもの家の近くなどに引越しをするときも、身辺整理にふさわしいタイミングです。生活をかなりサイズダウンしなければならないため、大掛かりな整理となるでしょう。

ほか、介護が必要になったときや配偶者が亡くなったときなど、身辺整理の時期は人によって違います。ただ、身辺整理は体力、気力ともに必要な作業なので、なるべく健康なうちに行なったほうがよいでしょう。

身辺整理をする方法とやり方

身辺整理の手順は以下の通りです。

処分品のリストアップ

まずは主な処分品をリストアップしましょう。リストができれば、自分や家族だけで処分できるのか、業者の手を借りたほうがよいのかがわかります。業者の力が必要な場合は、不用品を引き取ってくれる会社に見積もりを依頼し、どのくらいの金額が必要になるかを把握するのが大事です。

不用品・必要なもの・保留品の仕分け

細かなものは、段ボールを使って仕分けをしていきます。「不用品」「必要なもの」「保留品」の3タイプに分けて仕分けをするとスムーズです。「これは思い出があるなあ……」と、処分に迷うようなものを「保留品」の段ボールに詰めていくと、整理がスムーズに進みます。

不用品の処分

不用品のうち、自分で処分を行うものは、分別してゴミに出したり、リサイクルショップに持ち込んだりして処分しましょう。一人で行うのは大変なので、家族や友人などに手伝ってもらうのがおすすめです。

1年後に保留品の仕分け

保留品の段ボールはそのまま保管し、1年後にまた開けてみます。すると「1年使わなかったのだから、これはもう捨てよう」「あのときはとっておきたいと思ったけれど、今はもう捨てていい」など、気持ちが変わっている自分に気づくことでしょう。こうして保留品はだんだんサイズダウンさせましょう。

身辺整理をするときの注意点

終活のため身辺整理をするときは、以下に気をつけましょう。

完璧を目指さない

身辺整理は本来「身の回りの物事全てを清算する」という強い意味を持ちます。しかし、こと終活においては、「家族に迷惑をかけないためにも、一切合切を処分しよう」などと気を張る必要はありません。

なぜならあなたは今後も生きていく存在であり、生きている限り何かを所有したり、思い出の品をとっておいたり、誰かと新しい関係を築いたりする可能性が大いにあるためです。むしろ、それが生きていくということだといえます。

全てを捨てるのではなく、自分と家族が今後気持ちよく暮らしていくために生活をサイズダウンさせるという程度の意識を持ちましょう。処分に迷ったら「保留」を選び、慌てて捨ててしまって後悔のないようにしたいものです。

悪徳業者に注意

不用品を処分する業者の中には、不法投棄を行ったり、高額な請求を行ったりする者もいます。業者選びは慎重に行いましょう。

不法投棄を防ぐためには、無許可の業者を回避しましょう。家庭の廃棄物は、市区町村の一般廃棄物処理業の許可や委託を受けていなければ、回収できません。許可ナンバーを確認したうえで依頼するのが大事です。

高額請求を防ぐには、一旦見積もりをもらうことが重要です。自宅に見積もりに来てもらったり、処分品のサイズを電話で伝えたりして、概算の見積書を必ずもらいましょう。余裕があれば複数業者に見積もりをもらい、比較するのも有効です。

宝飾品を譲るときは相続人全員に知らせる

身辺整理の一環として、宝飾品を子や孫、友人に譲ることもあるでしょう。高価なものの場合は、相続人全員に「誰に何を譲ったか」を知らせておくことが大事です。知らせておかなければ、相続時、トラブルに発展する場合もあります。

まとめ:終活の身辺整理は今後の生活を明るくするためのもの

身辺整理を行って身の周りがすっきりすれば、気持ちが明るくなることでしょう。趣味やエクササイズなど、「また新しいことを始めたい」という意欲もわいてくるかもしれません。その気持ちを、「また余計なものを家に入れてしまうのでは?」と押し込めず、ぜひ形にし、明日への活力としましょう。

また、「家そのものが、身辺整理の一番大きな課題だ」と頭を抱えている人もいるかもしれません。自分の死後は不用になるけれど、生きているうちは住まなければならない。それが自宅です。

その場合は、元気なうちから死後の自宅の売却について相談するのもおすすめです。自宅を担保に、生活資金の借り入れができる「リバースモーゲージ」という方法もあります。リバースモーゲージであれば、死後の自宅売却についての不安も、生きている間の生活資金の不安も、一挙になくなるでしょう。自分が一番安心できる、ベストな方法を選びたいものです。

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奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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