2023年1月10日
相続
【FP解説】親の借金を子供が返済する必要がある?借金の調べ方や相続放棄の注意点を解説

親が借金をつくって亡くなると返済義務がどうなるのか気になりますよね。また財産と借金の両方があるケースなども、どんな手続きが必要なのか迷うところです。そこで借金が把握してからすべきことや、相続放棄する際の注意点や借金の総額の調べ方などを、わかりやすくまとめました。弁護士などに相続問題を任せるケースもあると思いますが、まず自分で問題の全体像を把握しておくことは大切でしょう。

親の借金を支払わなければならない場合

親御さんが亡くなったショックも冷めないうちに、法的な処理が必要となるのが財産の相続です。よく知られていることですが、相続するのは財産だけではありません。借金も相続の対象です。

つまり何の手続きもしないままにしておくと、親の作った借金の返済をしなければならないことに……。両親の経済状況を知らない人も多いでしょうが、相続についてはしっかりと調べて処理する必要があるのです。

では、実際にどんなケースで、親の借金を子どもが支払うことになるのでしょうか? 3つのケースから説明しましょう。

相続を「単純承認」してしまった

単純承認とは、簡単に言えばすべてを相続してしまうこと。財産はもちろん借金まで相続してしまうため、当然のことながら親に借金があった場合は、その支払い義務がかかってきます。
亡くなってから借金が発覚することも少なくありません。よく調べずに、自宅を残したいからといった理由で単純承認すると、その土地を売っても払えないほどの借金を背負ってしまう可能性もあるのです。

「相続開始を知ったとき」から3ヵ月を超えた

親の財産については、よくわからないから放っておいたといったケースは危険です。じつは「相続開始を知ったとき」から3ヵ月を超えて何の手続きもしないと単純承認したことになってしまいます。

ポイントは「亡くなったとき」ではないこと。
両親が離婚した後は音信不通といった理由で、亡くなったことを知らないケースは往々にしてあります。そのため法律では「相続開始を知ったとき」からカウントが始まります。どれほど悲しくても3ヵ月以内に相続放棄するのか、承認するのか意思決定して手続きしましょう。

限定相続した場合

相続には、単純承認・相続放棄・限定承認があります。一部の借金や財産を相続することです。例えば1000万円の借金と500万円の土地があったら、債権者に500万円を支払って土地を自分のものにできるというわけです。
つまり財産より借金が多くても、すべての借金を背負う必要がない相続方法です。

親が借金を残して亡くなったときにすべきこと

実際に親が借金を残して亡くなってしまったときに、子どもはどうすればいいのでしょうか?

重要なポイント3つに絞って説明しましょう。

借金と財産の総額を確認する

まず、すべきは借金と財産の総額を確認することです。莫大な借金はあるけれど、土地を売れば払うことができるどころか、プラスが出るといった状況ならば、相続放棄をする必要はありません。
死後、借金が発覚すると焦ってしまうケースも少なくないですが、まずは全体の把握に務めましょう。

財産を使わない

借金が発覚したら、親の預貯金などに手を付けるのは厳禁です。というのも預貯金使うと、単純承認したとみなされ、相続放棄ができないケースがあるからです。資産価値のないものは処分しても問題になりませんが、価値のあるものを処分するのは相続が完全に終わってからにしましょう。

遺産の分配を決める遺産分割協議を開く

財産放棄をすれば、自分は借金を背負わなくて済みます。しかし自分の相続権が消滅するわけではなく、他の親族に相続権が移ってしまうケースがあります。つまり借金があるからと相続を放棄する場合には、関係者全員にきちんと説明する必要があるのです。
また単純に相続を放棄するのではなく、土地だけは買い取りたいといった人などが相続人にいる可能性もあります。
いずれにしても、しっかりと話し合いの場を設けることが必要です。

相続放棄する際の注意点

相続放棄が決まったとしても、まだまだ道半場です。相続放棄の注意点をまとめておきましょう。

財産分割協議で終わったと思わない

相続人が集まり、それぞれの主張をまとめたところで相続放棄が終わったと思ってはいけません。相続放棄は家庭裁判所に申述が必要です。正式な相続放棄が行われないと、借金を引きつぐことになりかねません。

借金取りにお金を支払わない

親が亡くなってから、借金返済の催促を受けることもあるかもしれません。そうしたときに、「利息だけでも」などという言葉にのって少額でも支払ってしまうと、相続放棄ができなくなります。
先程の書いた通り、相続放棄をするなら財産を使うのはもちろん、借金を支払うとった行為も厳禁です。

期限を守る

財産放棄ができるのは、熟慮期間と呼ばれる3ヵ月間です。この間に手続きが終わらないと、単純承認に切り替わってしまいます。裁判などで例外が認めらえることもありますが、かなり難しいので余裕を持って手続きをするようにしましょう。

相続放棄とは?手続き方法と必要書類だけでなく手続きまでの注意点を解説

親の借金の調べ方

親が借金を残して亡くなったときには、先にも書いた通り、その総額を把握する必要があります。では、具体的にはどうすればいいのでしょうか?

書類・郵便・通帳を確認

まず初めに手を付けたいのは、借金の契約書や催促状、銀行からの引き落としなどの有無などの確認です。借金については身内にも話さないという人も多いと思いますが、定期的な返済が必要なケースは書類や口座の引き落とし履歴から借金している会社を割り出せるケースが少なくありません。

不動産の登記書を確認

土地を持っている場合は、法務局で不動産の登記事項証明書を取り、抵当権や根抵当権や質権などが設定されていないか確認しましょう。土地を担保に借金している場合は、金額も大きくなるので絶対にやっておくべき行動です。

信用情報機関に問い合わせる

銀行などの金融機関、クレジット会社や消費者金融などの借金に関する情報は、信用情報機関が管理しています。相続人には1000円程度の手数料で情報を開示してくれますので、情報開示を請求しましょう。

親の借金は必ずしも返済すべき必要はありませんが、相続の問題をしっかりと解決しないと被ってしまうことがあります。状況の把握と期間内の手続きが重要です。

親が亡くなったら必要な手続きや相続に関することを時系列に優先順位を付けて解説

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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