2023年1月10日
相続
【FP解説】死亡保険金が相続税の対象となる場合や非課税枠についてわかりやすく説明

愛する家族に先立たれる家族にとって、死亡保険金はかけがえのない生活資金です。しかし、死亡保険金にも、相続税がかかる場合があることをご存じでしょうか。受取人の今後の生活が考慮されるので、非課税枠はありますが、非課税限度額もあります。死亡保険にかかる相続税や非課税枠、税金の計算方法、そして相続税のほかにも考えられる課税の種類について解説します。

死亡保険金にかかる相続税とは

死亡保険金にも、税金がかかる場合があります。死亡保険金の受取人が相続人である場合は、一定額を引いた金額が相続税の課税対象になるのです。大黒柱が亡くなった後、頼みの綱の死亡保険金にも税金が課せられてしまうとしたら、かなりつらいと感じてしまう人もいることでしょう。

相続税とは、故人の遺産を受け継いだ時に、遺産の金額が一定金額を超えるとかかる税金です。死亡保険金のことを考えずに遺産を計算したときは相続税がかからずに済んだのに、受け取れる保険金が多額なため相続税がかかってしまった、などということになったら、困ってしまいますね。

実は、条件によっては、死亡保険金が相続税ではなく所得税の対象になったり、贈与税の対象になったりすることもあります。死亡保険金の非課税枠から、対象となる税金の種類まで、順を追って解説します。

相続税の非課税枠

死亡保険金に対する相続税の非課税枠は、「500万円×法定相続人の人数」です。

例えば夫が死亡し、妻と2人の子どもが遺された場合、「500万円×3=1500万円」が、相続税の非課税額として適用されます。この場合、受け取る保険金額が1500万円を超えていたなら、超えた分だけが相続税の課税対象となります。3000万円の死亡保険金を満額受け取ったなら、1500万円は非課税枠となり、残りの1500万円が遺産にプラスされます。

相続税の非課税枠が使えない場合

相続税の非課税枠が使えない場合もあります。それは、法定相続人以外が、死亡保険金を受け取る場合です。相続を放棄した人や、相続欠格者、相続排除となった人が受け取る場合も、これに当たります。

相続欠格者とは、民法に規定されている不正な事由によって相続人から外された人のことです。故人を殺害した、自分の有利な遺言書を書くよう故人を脅迫した、遺言書を偽造したなどすると、相続を受ける権利を失います。ただし、相続欠格者に子どもがいた場合、代襲相続は可能です。

相続排除とは、故人が「この人物には相続させない」と家庭裁判所に申し立て、相続権をはく奪することを指します。このケースでも、排除された人に子どもがいた場合には、代襲相続が可能です。

いずれにせよ、相続権を失った人が死亡保険金を受け取るときには、相続税の非課税枠は使えません。

死亡保険の受取方・契約内容で変わる税金

死亡保険の受け取り方や、契約内容によって、相続税ではなく所得税や贈与税がかかる場合があります。税金の種類別に整理して解説します。

相続税がかかる場合

相続税がかかるのは、契約者が被保険者(故人)であり、受取人が法定相続人であった場合です。夫が自分に保険をかけて妻を受取人にする、母親が自分の名義で自分に保険をかけ、子どもを受取人にするなど、通常の契約がこれに当たります。

相続税の税率と計算方法をわかりやすく解説!税金を抑えるための節税方法とは

所得税がかかる場合

所得税がかかるのは、契約者が受取人と同一であったときです。死亡保険の場合は、例えば、夫が自分の名義で妻に保険をかけ、妻が死亡した際に夫が保険金を受け取るケースがこれに当たります。夫は自分のお金で妻に保険をかけていたため、相続ではないとみなされるわけです。

贈与税がかかる場合

贈与税がかかるのは、契約者も、被保険者も、受取人もバラバラだったケースです。死亡保険の場合は、例えば、夫が自分の名義で妻に保険をかけ、受取人を子どもにするケースです。子どもは保険金を受け取りますが、そのお金は母親の遺産ではないので相続にあたりません。契約人である父からの贈与としてみなされ、贈与税がかかります。

死亡保険をかけるときは契約者や受取人に注意

以上のように、ひとくちに死亡保険といっても、契約内容が違えばかかる税金の種類が違ってきます。「保険をかけてからしばらく経つ」という人は、もう一度契約内容を見直してみましょう。受取人を変えるだけで、税金対策ができるかもしれません。

また、保険金の金額も、遺産の総額と合わせて見直しを行っておく必要があるかもしれません。終活の一環として全財産を把握し、相続税がかかる恐れがあるなら対策をしておくことをお勧めします。

終活とは?終活をするための準備方法やいつから始めるのかなどやり方を解説

相続税の節税には、税金の対象にならない程度の死亡保険をかけておくほか、相続税の対象とならないお墓や仏壇など祭祀財産を買っておくといった方法もあります。せっかくの遺産ですから、なるべく多くの金額を配偶者や子どもに残したいものです。この機会に、自分の財産を洗い出してみましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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