故人の財産を全て計算すると相続税の対象になりそうだと感じている人は、税率がどれほどになるのか、気になるのではないでしょうか。相続税には基礎控除額があり、法定相続人の数によって決まっています。そして課税対象額の金額によっても、税率は変わってきます。この記事では、相続財産にかかる税金の計算方法を分かりやすく解説したうえで、申請に必要な書類や節税方法について説明します。
相続税とは、相続や遺贈により、死亡した人の財産を取得したときにかかる税金のことです。現金や預貯金、有価証券、宝飾骨董類、土地建物、特許権や著作権などの権利すべてが対象になります。
一方で、相続税のかからない財産もあります。墓地や墓石、仏壇などの祭祀財産や、公益事業に使われる財産、葬式費用です。また、相続によって取得する生命保険金のうち、被相続人が保険料を負担していたものは、非課税限度額を超える分が相続税の対象となります。死亡保険金の非課税限度額は、500万円×法定相続人の数です。
また、相続財産のうち、借金やローンなどマイナスの財産があったときは、負債額を財産額から差し引いた額が相続税の計算対象となります。さらに相続税には基礎控除額があり、3000万円+(相続人の数×600万円)を超えた金額にだけ、税金がかかります。
相続税の税率をわりだすには、まず相続財産から負債や基礎控除額などを差し引いて、相続税の対象となる金額を明らかにする必要があります。相続する取得金額ごとの税率と計算方法を、具体的な例を用いて説明しましょう。
Aさんの遺産総額を、次の通りとします。
負債を差し引いた財産の全体像は、2000万円+1億円-600万円=1億1400万円です。ここから、基礎控除額を差し引いた金額が、相続税の対象となります。
基礎控除額は、3000万円+相続人の数×600万円です。ここでは、相続人が妻と子ども3人ですから、3000万円+(600万円×4)=5400万円が、基礎控除額となります。
つまり、1億1400万円-5400万円=6000万円が、課税対象額です。
ここから、課税対象額をいったん相続人が分割したものとして、相続税を計算します。配偶者の相続分は全体の1/2、あとの1/2を子どもたちが分割して相続することになるため、
を相続することになります。
相続税の速算表を利用して税額を計算します。
【相続税の速算表】
法定相続分に応ずる取得金額 |
税率 |
控除額 |
1000万円以下 |
10% |
– |
3000万円以下 |
15% |
50万円 |
5000万円以下 |
20% |
200万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
2億円以下 |
40% |
1700万円 |
3億円以下 |
45% |
2700万円 |
6億円以下 |
50% |
4200万円 |
6億円超 |
55% |
7200万円 |
つまり相続税の総額は、【妻】400万円+【子】100万円×3=700万円となります。Aが遺した遺産のうち、現金として数えられるのは1000万円ですから、相続税を払うと、自宅と証券類の他は、300万円しか残りません。
上記に紹介したように、遺産として残された土地の評価額が大きく、現金が少ない場合には、残される現金が非常に少なくなる恐れがあります。もしかしたら、相続税の金額が大きすぎて、遺産では支払えないという事態になるかもしれません。
生前のうちに、相続税を抑えるための節税を行っておけば、遺族が路頭に迷わず済みます。いずれも法に触れない方法ですから、実践を検討してみてはいかがでしょうか。
日々お参りするための仏壇やお墓は、祭祀財産のため相続税の対象になりません。生前にお墓や仏壇を購入しておくことが、節税にも、残される人に負担をかけない終活にもなります。ただし、純金製などあまりに高額の仏壇や仏像などは、「純粋に先祖を祀るためのものではない」とみなされることがあるので、注意しましょう。
終活とは?終活をするための準備方法やいつから始めるのかなどやり方を解説
故人が契約者となり、保険料を負担していた死亡保険金は、相続人が受け取れば相続税の対象になりますが、前述したように非課税限度額が決まっています。500万円×法定相続人の数が、非課税限度額です。限度額を計算のうえ、死亡保険金額を設定しておけば、節税につながります。
死亡保険金が相続税の対象となる場合や非課税枠についてわかりやすく説明
生きているうちに財産を子どもに渡し、遺産となる財産を少なくしておけば、節税対策になります。しかし、一度に多額の金額を生前贈与すると、贈与税の対象になることもあります。また、死亡前3年以内の贈与には、相続税がかかります。早いうちから、少額でコツコツと渡しておくことが大事です。
孫への生前贈与での注意点とは?教育資金1,500万円や110万円について解説
不要な不動産があったら、存命中に手放しておきましょう。活用が難しい山林などであっても、相続税計算のときには財産とみなされてしまいます。
相続税が生じたら、被相続人の死亡時の住居地を管轄する税務署へ申告手続きに行く必要があります。手続きの流れやいつまでに必要か、必要な書類などに関して説明します。
被相続人が死亡したことを知った日の翌日から、10ヶ月以内に申告を行います。申告が遅れると、加算税や延滞税がかかる場合もあります。
申告資料一式を税務署に持参、あるいは郵送で手続きします。申告書の様式は、国税庁のHPからPDFでダウンロードできます。
手数料は不要です。
申告期限内に、納税も行います。現金一括納税が基本で、税務署の他、金融機関や郵便局の窓口でも納税ができます。ただし、何年かに分けて納める延納や、取得した財産で支払う物納を選ぶ場合は、税務署に相談します。
自分亡き後の家族の生活を守るためには、生きているうちから相続税対策を行うことが重要です。不動産による資産が多い人、現金が少ない人、法定相続人の数が少ない人などは、前もって対策を練り、実行しておきましょう。
相続税対策のためには、自分の資産がどのくらいあるか、一切を確認する必要があります。定年を機に、誕生日を迎えるごとになど、意識して財産目録を作成し、子世代や配偶者にも目を通してもらいましょう。