2023年1月14日
相続
【FP解説】相続税の税率と計算方法をわかりやすく解説!税金を抑えるための節税方法とは

故人の財産を全て計算すると相続税の対象になりそうだと感じている人は、税率がどれほどになるのか、気になるのではないでしょうか。相続税には基礎控除額があり、法定相続人の数によって決まっています。そして課税対象額の金額によっても、税率は変わってきます。この記事では、相続財産にかかる税金の計算方法を分かりやすく解説したうえで、申請に必要な書類や節税方法について説明します。

相続税とは?

相続税とは、相続や遺贈により、死亡した人の財産を取得したときにかかる税金のことです。現金や預貯金、有価証券、宝飾骨董類、土地建物、特許権や著作権などの権利すべてが対象になります。

一方で、相続税のかからない財産もあります。墓地や墓石、仏壇などの祭祀財産や、公益事業に使われる財産、葬式費用です。また、相続によって取得する生命保険金のうち、被相続人が保険料を負担していたものは、非課税限度額を超える分が相続税の対象となります。死亡保険金の非課税限度額は、500万円×法定相続人の数です。

また、相続財産のうち、借金やローンなどマイナスの財産があったときは、負債額を財産額から差し引いた額が相続税の計算対象となります。さらに相続税には基礎控除額があり、3000万円+(相続人の数×600万円)を超えた金額にだけ、税金がかかります。

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相続税の税率と計算方法

相続税の税率をわりだすには、まず相続財産から負債や基礎控除額などを差し引いて、相続税の対象となる金額を明らかにする必要があります。相続する取得金額ごとの税率と計算方法を、具体的な例を用いて説明しましょう。

故Aの遺産を、Aの妻と子ども3人が引き継ぐ場合

Aさんの遺産総額を、次の通りとします。

  • 預貯金 1000万円
  • 有価証券など証券類 1000万円
  • 自宅  1億円
  • 各種ローン残債 -300万円
  • 葬式にかかった費用 -300万円

・まずは相続税課税総額の計算をする

負債を差し引いた財産の全体像は、2000万円+1億円-600万円=1億1400万円です。ここから、基礎控除額を差し引いた金額が、相続税の対象となります。

基礎控除額は、3000万円+相続人の数×600万円です。ここでは、相続人が妻と子ども3人ですから、3000万円+(600万円×4)=5400万円が、基礎控除額となります。

つまり、1億1400万円-5400万円=6000万円が、課税対象額です。

・相続人が分割相続をしたと想定して金額を計算する

ここから、課税対象額をいったん相続人が分割したものとして、相続税を計算します。配偶者の相続分は全体の1/2、あとの1/2を子どもたちが分割して相続することになるため、

  • 妻…6000万円×1/2=3000万円
  • 子1~3…3000万円÷3=1000万円ずつ

を相続することになります。

・各相続人の相続金額に応じた税率をかけて税額を計算する

相続税の速算表を利用して税額を計算します。

【相続税の速算表】

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1000万円以下

10%

3000万円以下

15%

50万円

5000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1700万円

3億円以下

45%

2700万円

6億円以下

50%

4200万円

6億円超

55%

7200万円

  • 妻の相続税額…3000万円×15%-50万円 = 400万円
  • 子1~3の相続税額…1000万円×10% = 100万円ずつ

つまり相続税の総額は、【妻】400万円+【子】100万円×3=700万円となります。Aが遺した遺産のうち、現金として数えられるのは1000万円ですから、相続税を払うと、自宅と証券類の他は、300万円しか残りません。

相続税を抑えるための節税方法

上記に紹介したように、遺産として残された土地の評価額が大きく、現金が少ない場合には、残される現金が非常に少なくなる恐れがあります。もしかしたら、相続税の金額が大きすぎて、遺産では支払えないという事態になるかもしれません。

生前のうちに、相続税を抑えるための節税を行っておけば、遺族が路頭に迷わず済みます。いずれも法に触れない方法ですから、実践を検討してみてはいかがでしょうか。

お墓や仏壇を生前に購入する

日々お参りするための仏壇やお墓は、祭祀財産のため相続税の対象になりません。生前にお墓や仏壇を購入しておくことが、節税にも、残される人に負担をかけない終活にもなります。ただし、純金製などあまりに高額の仏壇や仏像などは、「純粋に先祖を祀るためのものではない」とみなされることがあるので、注意しましょう。

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死亡保険金をかけておく

故人が契約者となり、保険料を負担していた死亡保険金は、相続人が受け取れば相続税の対象になりますが、前述したように非課税限度額が決まっています。500万円×法定相続人の数が、非課税限度額です。限度額を計算のうえ、死亡保険金額を設定しておけば、節税につながります。

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贈与税のかからない範囲で生前贈与を行う

生きているうちに財産を子どもに渡し、遺産となる財産を少なくしておけば、節税対策になります。しかし、一度に多額の金額を生前贈与すると、贈与税の対象になることもあります。また、死亡前3年以内の贈与には、相続税がかかります。早いうちから、少額でコツコツと渡しておくことが大事です。

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不動産を手放しておく

不要な不動産があったら、存命中に手放しておきましょう。活用が難しい山林などであっても、相続税計算のときには財産とみなされてしまいます。

相続税の手続きと納税方法

相続税が生じたら、被相続人の死亡時の住居地を管轄する税務署へ申告手続きに行く必要があります。手続きの流れやいつまでに必要か、必要な書類などに関して説明します。

相続税の申告期限

被相続人が死亡したことを知った日の翌日から、10ヶ月以内に申告を行います。申告が遅れると、加算税や延滞税がかかる場合もあります。

相続税の申告手続き

申告資料一式を税務署に持参、あるいは郵送で手続きします。申告書の様式は、国税庁のHPからPDFでダウンロードできます。

申告費用

手数料は不要です。

納税手続き

申告期限内に、納税も行います。現金一括納税が基本で、税務署の他、金融機関や郵便局の窓口でも納税ができます。ただし、何年かに分けて納める延納や、取得した財産で支払う物納を選ぶ場合は、税務署に相談します。

相続税対策は生きているうちがカギ

自分亡き後の家族の生活を守るためには、生きているうちから相続税対策を行うことが重要です。不動産による資産が多い人、現金が少ない人、法定相続人の数が少ない人などは、前もって対策を練り、実行しておきましょう。

相続税対策のためには、自分の資産がどのくらいあるか、一切を確認する必要があります。定年を機に、誕生日を迎えるごとになど、意識して財産目録を作成し、子世代や配偶者にも目を通してもらいましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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