自分の子どもやかわいい孫に贈与をしたい、でも税金がかかるし……とお悩みの方は、相続時精算課税制度を利用しましょう。相続時精算課税制度は、贈与を受け取った人が2,500万円まで贈与税を控除される制度です。ただ、年齢制限があり、またこの制度を使うことによって生前贈与の暦年課税は使えなくなります。一般贈与での相続との違いや、メリット、デメリットを解説します。
相続時精算課税制度とは、父母や祖父母から、子や孫に対して財産を贈与した場合、選択できる税制度をいいます。贈与税を納めるときに、一般的な贈与税の制度を使って納めてもよいし、この相続時精算課税制度を使って納めることもできます。
相続時精算課税制度を使えば、贈与額が2,500万円までは、贈与税としては課税されません。よって、子や孫にまとまったお金を贈与したいときに便利です。さらに、贈与額の合計が2,500蔓延になるまでは、何度でも贈与することができます。
ただ、2,500万円がまるまる非課税になるといっても、それは贈与税の枠組みでの話です。贈与された金額は、贈与者である祖父母や父母が亡くなったときに、遺産の一部として数えられます。つまり、相続が生じたときに、相続税を納めなければならない可能性があります。
相続時精算課税制度と一般贈与では、主に次の3つの点に違いがあります。
一般贈与の場合は、誰から譲り受けてもかまいません。一方、相続時精算課税制度の場合は、贈与する人とされる人の関係が、父母や祖父母、子や孫などの直系で、推定相続人と決まっています。ただし、「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除(措法70の6の8)」にのっとった事業用資産の取得については、受け取る側が推定相続人以外であっても贈与可能です。
一般贈与は、贈与する人にも、される人にも年齢制限はありません。一方、相続時精算課税制度の場合は、贈与する側が60歳以上、贈与される側が20歳以上であることが条件です。
前述したとおり、相続時精算課税制度は贈与合計額2,500万円までは贈与税が非課税になり、年数や回数の制限はありません。2,500万円までは、いつ、何回に渡って贈与を行っても非課税です。一方、一般贈与は暦年課税といって、1月1日から12月31日までの1年間の贈与額に対して課税されます。基礎控除額は110万円で、1年間での贈与合計額が110万円以内であれば課税されません。
相続時精算課税制度は非課税の範囲であっても申告が必要です。しかし、一般贈与であれば、年間110万円以下の贈与であれば申告は不要です。
相続時精算課税制度は、多額の控除額がある代わりに、贈与額が相続時に遺産へプラスされます。遺産額が膨らめば、相続税の対象になるかもしれません。一方で、一般贈与は、非課税内であれば、また贈与税を納めれば、相続時に遺産の一つとして数えられることはありません。
相続時精算課税制度のメリットとデメリットを挙げました。引き比べて、メリットの方が多いと感じる場合には、利用を検討しましょう。
相続時精算課税制度を選択したいと考えたら、以下の3点に注意しましょう。
孫が生まれたら「まとまった金額の贈与を」と思いたくなるかもしれませんが、贈与を受ける側が20歳以上でなければなりません。孫が生まれたタイミングで贈与したいなら、子世代に贈与するのが良いですが、贈与する側が60歳以上でなければなりません。このように、贈与時の年齢に注意しましょう。
一般贈与と違い、控除額内であっても贈与税の申告が必要になります。期限は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日です。
贈与額が控除額を超えれば贈与税が発生します。贈与金額の20%と高額なので注意が必要です。ただし、控除額を超え、一度贈与税を納めた分については、相続税の対象になりません。
相続時精算課税を選択した場合、贈与時の時価により相続税が課せられます。つまり、相続発生時に贈与された財産の価値が上がっている場合には、節税効果があります。しかし、財産価値が下がっている場合には、「相続時点で遺産を受け取ったほうが、相続税額が下がったのに」と後悔するかもしれません。相続税の節税を考えたい人は要注意です。
相続時精算課税制度は、成年の子や孫に、かなりまとまった金額を援助してあげたいと思ったときに便利な制度です。ただ、相続時に税負担が大きくなる可能性があるため、一般贈与とどちらが良いかは、長いスパンを考慮して決めたほうがいいでしょう。