遺産相続が発生したら、いつまでに何をすればよいか、すぐ把握できる人はなかなかいません。相続の期限はありませんが、例えば家の処分を急ぎたい場合、誰が相続するか決まらなければ手続きは進みません。また、相続税の納付期限は10ヶ月以内とされているため、相続税が発生しそうな人はなるべく早く全遺産を把握する必要があります。相続の手続き方法を、時系列で紹介します。
遺産相続において、被相続人が亡くなった日から7日以内に行うとよい手続きや手配について解説します。
相続手続きには、被相続人が亡くなっていることを証明する書類(除籍謄本など)が必要になります。そのためには死亡届の提出を済ませなければなりません。死亡届は7日以内に市役所へ提出します。一般的には、葬儀社が代行してくれます。
死亡保険金等の手続きを開始します。亡くなった人がかけていた保険金は、名義人や金額によっては相続税の対象になります。早めに受取金額を把握しておきましょう。
遺産相続の内容が決まらないうちは、不動産や車などの名義変更ができませんが、公共料金等については遺産と関係ないので名義変更ができます。ライフラインの名義変更をしないままだと振替が滞るなどして電気、ガスが使えなくなるかもしれませんから、早めに変更しましょう。
遺言書があれば、遺言書の通りに遺産相続が進みます。公証役場で作成した公正証書遺言はそのまま使えますが、亡くなった人が自筆で執筆した自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所で検認の手続きをします。
遺産相続において、被相続人が亡くなった日から10日~14日以内に行うとよい手続きや手配について解説します。
死亡してから年金が振り込まれてしまうと、後で手続きが複雑になります。国民年金は死亡後14日以内、厚生年金は10日以内に年金受給停止の手続きをしましょう。なお、遺産とは直接関係ありませんが、健康保険証も14日以内に返納します。同時に手続きできるとスムーズです。
遺産相続において、被相続人が亡くなった日から14日~3ヶ月以内に行うとよい手続きや手配について解説します。
遺言書や法定相続人の枠組みをもとに、相続に関わる親族たちと相談のうえ、相続人を確定します。法定相続人とは、法律で定められている相続人の範囲で、例えば亡くなった人に配偶者と子どもがいれば、配偶者と子どもが法定相続人になります。相続人が確定したら、相続人全員の戸籍謄本を取得しておきましょう。各手続きに必要な場合があります。
遺産相続の手続きに必要な戸籍謄本とは?必要な範囲や取得方法を解説
遺言書がなく、また法律どおりに相続をすすめるのは難しい場合は、相続人全員の遺産分割協議によって相続を決定します。相続人が遠方にいたり、働き盛りの人が複数いたりする場合は、早めにスケジュールを決めたほうがいいでしょう。
遺産分割協議の前に、相続対象となる財産の調査を終えておきます。全ての銀行通帳の把握、保険証書、不動産の登記簿などを集め、全遺産を把握しておきましょう。骨董品の鑑定なども大事です。
遺言書がない場合、また法定相続分では分割が進まない場合は、相続人全員で話し合い、遺産をどのように分割するか話し合います。当日あるいは後日、話し合いの結果をまとめて「遺産分割協議書」を作り、相続人全員の署名・押印を行います。「遺産分割協議書」があれば、不動産の相続登記など様々な手続きに使えます。
ときには、相続財産をすべて把握した結果、財産よりも借金などの方が多く、「相続を放棄したい」という事態になることもあります。相続を放棄したい場合は、3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きします。
遺産相続において、被相続人が亡くなった日から3ヶ月~10ヶ月以内に行うとよい手続きや手配について解説します。
亡くなった人の確定申告を、準確定申告といいます。生前、事業をやっていた、あるいは毎年確定申告を行っていたという人であれば、4ヶ月以内に税務署へ準確定申告を行います。
遺産相続した場合に必要な確定申告とは?故人の準確定申告や相続税の申告
相続税が発生するときは、死亡後、あるいは死亡を知ってから10ヶ月以内に税務署へ相続税申告と納付を行います。
遺産相続において、被相続人が亡くなった日から10ヶ月以降でもかまわない手続きや手配について解説します。主に、誰が何を相続するかが決まってからの手続きとなります。
土地の所有者が亡くなってから行う名義変更を、不動産の相続登記といいます。相続登記に期限はありませんが、相続登記を行っておかないと、処分ができなくなってしまいます。例えば「親が亡くなって空き家になった実家を売りたい」と思ったら、まずは相続登記をしなければなりません。手が空いたときに相続登記を行なっておけば、不動産を処分したいと考えたときにスムーズです。
相続が決定して初めて、預貯金の解約や名義変更ができるようになります。凍結口座に財産がたくさんある場合は、10ヶ月以降と言わず、早めに相続内容を決定したほうがよいでしょう。故人名義の預貯金の解約や名義変更には、相続人全員の署名や押印が必要になります。
以上のように、遺産相続関係の手続きには、相続を決定する前に行うものと、相続決定後に行うものがあります。相続を決定しないと手続きできない事項が多いため、なるべく速やかに相続人を確定し、相続財産を把握し、分割内容を決定するようにしましょう。初七日や四十九日法要など、人が集まる機会のたびに身内と相談するのがおすすめです。