2023年3月16日
老後
【FP解説】法定相続人とは?範囲や相続順位をわかりやく解説!遺留分の注意点も

身内が亡くなり、いざ相続をということになったとき、誰に何を相続させるべきかわからないと、手間がかかってしまいます。民法で定められた法定相続人と相続の範囲を知っておけば、スムーズに話し合いができるでしょう。法定相続人の範囲や相続順位について、わかりやすく解説します。また、相続に関する遺留分の注意点についてもご紹介します。

法定相続人とは

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。法定相続人は、亡くなった人の遺族や、親族に限られます。法律にのっとれば、相続を受けるはずの人のことを、法定相続人と言います。

相続人とは、法定相続人のうち、実際に相続をすることになった人のことを指します。法定相続人であったとしても、亡くなった人に多額の借金があるなどの事情により「相続したくない」と相続放棄をすれば、その人は相続人とはなりません。

法定相続人の範囲と順位

法定相続人には範囲があり、また順位が決まっています。上位の人が存在していれば、下位の人は法定相続人になりません。

亡くなった人の配偶者は常に相続人になる

亡くなった人の配偶者は、常に法定相続人の一人になります。配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と共に法定相続人になります。

第1順位は亡くなった人の直系卑属

直系卑属とは、亡くなった人の子どもや孫、ひ孫など、家系図において直接つながっていく下の世代のことを指します。子どもがすでに亡くなっている場合は孫が、孫が亡くなっている場合はひ孫が法定相続人となります。生きている世代のうち、より近い世代を優先するため、子どもが生きている間は、孫が法定相続人になることはありません。

第2順位は亡くなった人の直系尊属

直系尊属とは、亡くなった人の父母や祖父母など、家系図において直接つながっていく上の世代のことを指します。生きている世代のうち、より近い世代を優先するため、父母が生きている間は、祖父母が法定相続人になることはありません。

第3順位は亡くなった人の兄弟姉妹

亡くなった人に、子どもや孫、親や祖父母がすでにいない場合は、兄弟姉妹が法定相続人になります。兄弟姉妹がすでにいない場合は、兄弟姉妹の子どもが法定相続人になります。

遺産を相続する相続順位と法定相続分に関してわかりやすく解説

法定相続人の範囲の注意点

法定相続人の範囲には、いくつか注意点があります。家族構成が複雑な人はとくに、確認しておきましょう。

内縁者は法定相続人にならない

戸籍上の結婚をしていない夫婦は、それぞれの法定相続人にはなりません。遺産を承継したい場合は、それぞれ遺言により意思を残しておく必要があります。

内縁者との子は認知をしていれば法定相続人になる

内縁者自身は法定相続人になりませんが、内縁者との間に子供がいた場合、認知をしていれば、子どもは法定相続人になります。

再婚した配偶者の連れ子は法定相続人にならない

再婚した配偶者の連れ子は、亡くなった人と法律上の親子関係にないため、法定相続人にはなりません。連れ子を法定相続人にしたい場合は、養子縁組を行う必要があります。

普通養子縁組の場合は養親と実親、2家族の相続人になりえる

普通養子縁組は、実の親との親子関係を継続したまま、新たに養親との親子関係を発生させる手続きです。よって、普通養子縁組で養子になったら、法律上は養親と実親の2組の親を持つことになり、双方の法定相続人になります。なお、法定相続人の数に算入できるのは、実子がいない場合は養子2人まで、実子がいる場合は養子1人までに制限されています 。

特別養子縁組の場合は養親だけの相続人になりえる

特別養子縁組は、実の親との親子関係を解消し、養親との親子関係を発生させる手続きです。よって、特別養子縁組で養子になったら、実の親の法定相続人にはなれません。養親の法定相続人には、なることができます。

法定相続人が行方不明なら失踪宣告を出す

法定相続人のうちの一人が行方不明となったら、相続の手続きは滞ります。遺言書がないなかで相続内容を決めるためには、法定相続人全員の協議が必要だからです。法定相続人の中に行方不明者がいたら、「失踪宣告」を行い、死亡したものとして手続きします。その後、失踪した法定相続人を除き、他の法定相続人らが話し合いをすることになります。

誰かが相続放棄をしたら、その人は最初からいなかったものとみなされる

法定相続人のうち、誰かが相続放棄をしたら、その人は最初からいなかったものとみなされます。同順位の人がいなければ、下順位の人に相続権が移ります。例えば、亡くなった人の配偶者がすでにおらず、子ども全員が相続放棄したら、孫に相続権が移ることになります。

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法定相続分の遺留分に注意

法定相続人には、民法で認められた遺産の分け前があります。そのうち、最低限、法律で保障されているのが「遺留分」です。

遺言に「Aさんに遺産のすべてを譲りたい」と書かれてあれば、Aさんはその立場に関わらず、いかなる場合でも全ての遺産を承継できるのでしょうか。答えはNOです。法定相続人らがその遺言書を不服とすれば、一人が全ての財産を受け継ぐことはできません。法定相続人は、遺言によって自分の分け前をゼロとされても、自分の遺留分を受け取るため権利を主張することができます。

遺留分の対象となる財産

遺留分の対象となる財産は、例えば次のようなものです。

・被相続人が亡くなった時点で残っていた財産

一般的にいわれる遺産です。

・被相続人が亡くなった時点から1年前までに行われた贈与

遺産相続を意識して行われた贈与ではないか?という疑いが残るためです。

・特別受益としての贈与

「結婚のため」「家を建てるため」といった、相続人が被相続人から生計資本などのために受けた贈与が対象となります。

・遺留分を侵害していることを知ったうえで行われた贈与

贈与を行った人も、受けた人も遺留分侵害を把握していた贈与については、1年以上前のものであっても対象になります。

遺留分の計算

遺留分の計算例は、以下の通りです。

例えば、配偶者と子ども一人が相続人であった場合、本来の法定相続分は2分の1ずつですが、認められる遺留分は、相続財産の2分の1にそれぞれの法定相続分をかけたものとなります。つまり、配偶者も、子どもも、4分の1ずつが遺留分として認められることになります。残りの2分の1は、被相続人(故人)が遺言で自由にできる割合として認められています。

【遺留分の計算例】

法定相続人

遺留分の割合(全体) 遺留分の割合(個人)

配偶者と子

1/2

配偶者1/4、子1/4

配偶者と兄弟姉妹

1/2

配偶者1/2、兄弟姉妹なし

子のみ

1/2

1/2

配偶者と父母

1/2

配偶者1/3、父母1/6

父母のみ

1/3

父母1/3

兄弟姉妹のみ

なし

なし

表のとおり、兄弟姉妹のみが法定相続人の場合、遺留分はゼロですので、注意しましょう。

相続の遺留分とは?遺留分減殺請求や遺留分侵害額請求など制度の仕組みを解説

法定相続人を知り相続をスムーズに進めよう

子どもの数が少ない現代では、法定相続人の数も少なくなり、相続が単純になるケースが見られます。一方で複雑な事情を抱える家も少なくないため、誰が法定相続人であるかは、一度きちんと調べてみなければなりません。

法定相続人がわからない、争いが生じて問題がこじれているといった場合には、家族内で無理に解決しようとせず、法律の専門家に相談することも考えましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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