2023年3月16日
相続
【FP解説】不動産の相続登記に必要な書類と手続き方法に関してわかりやく解説

「親が亡くなったので実家を自分の名義にしたい」など、不動産を所有していた人が亡くなると、相続登記が発生します。相続登記に必要な書類はたくさんあるため、早めに必要書類を把握し、手配を進めておいた方がいでしょう。相続登記には、必ず必要になる書類と、ケースによって必要になる書類とがあります。相続登記の必要書類と、申請方法についてご案内します。

相続登記とは

相続登記とは、亡くなった人の名義になっている不動産を、その土地を相続した人の名義に変える手続きです。相続登記をするためには、その不動産を誰が相続するかが明確になっていなければなりません。相続人を明確にするには、以下の4つの方法があります。

遺言により法定相続人に相続させる場合

故人が生前に作成した遺言書によって、子や孫、配偶者などの法定相続人に不動産を相続させるケースです。遺言通りであり、かつ法律が定める相続人への相続であれば、親族の反対も出にくく、相続はスムーズに進むでしょう。

遺言により法定相続人以外に承継させる場合(遺贈)

故人が生前に作成した遺言書によって、法定相続人ではない人に不動産が譲られるケースです。これは「相続」ではなく「遺贈」と呼びます。遺言書を使えば、誰にでも財産を遺贈することができます。

ただ、遺言で決められるとはいえ、法定相続人の遺留分(法によって定められている最低限の遺産取得分)を侵害してしまうと、トラブルになる恐れがあります。不動産の例でいえば、他に遺産もないのに「息子夫婦が住んでいる家はもともと親である自分の物だから、自分が死んだら愛人に遺贈する」などといった遺言は問題になるわけです。遺留分が侵害された法定相続人は、遺留分に相当する金額を請求できる権利(遺留分侵害額請求権)があります。

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法定相続分による場合

法によって定められた相続分割割合の範囲で、相続人を決めるケースです。法律にのっとっているので各相続人の納得度は高いですが、法律では割合しか定められてないため「お金が少しだけあって、大きな家が一軒ある」という場合は、法定相続が難しくなります。

遺産分割協議による場合

遺言がなく、法定相続が難しい場合は、相続人全員の話し合いによって誰が該当不動産を相続するか決定します。この話し合いを遺産分割協議といいます。遺産分割協議が終われば、遺産分割協議書に相続人全員が署名・捺印します。この協議書が、相続登記に必要になります。

相続登記に必ず必要な書類

相続登記に誰でも必要になる書類をご案内します。

  • 登記申請書
    法務局のホームページから、該当する書式を選んでダウンロードします。
  • 登記済証
    一般にいう土地の権利証です。
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本
    本籍地の市区町村役場に申請します。窓口、郵送、どちらでも取り寄せ可能です。コンビニで申請できる場合もあります。
  • 相続人の戸籍謄本
    本籍地の市区町村役場に申請します。窓口、郵送、どちらでも取り寄せ可能です。コンビニで申請できる場合もあります。
  • 相続人全員の住民票の写し
    それぞれの相続人が居住している市区町村役場に申請します。窓口、郵送、どちらでも取り寄せ可能です。
  • 固定資産評価証明書
    市区町村役場で取得申請します。
  • 登録免許税
    固定資産評価額の1,000分の4の金額を、現金または収入印紙で納付します。オンライン申請の場合は、電子納付も認められています。
  • 委任状
    複数いる相続人のうちの一人や、代理人が申請する場合は、委任状が必要です。委任状は任意の形式で構いませんが、委任事項をきちんと書く必要があります。

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相続登記のケースによって必要な書類

ケースごとに追加で必要な書類をご案内します。

遺言により法定相続人に相続させる場合

  • 遺言書
    遺贈により相続が行われたことを証明するため、遺言書が必要です。

遺言により法定相続人以外に承継させる場合(遺贈)

遺贈による相続登記を、一般に遺贈登記と呼びます。

  • 遺言書
    遺贈により相続が行われたことを証明するため、遺言書が必要です。
  • 遺贈を受けた受遺者の住民票
    市区町村役場で発行されます。
  • 遺言執行者の印鑑証明書
    遺言執行者が選定されている場合に必要です。この場合、法定相続人は関与する必要がないため、相続人関係の書類は必要ありません。

法定相続分による場合

法定相続分による場合、追加で必要になる書類は、基本的にはありません。

遺産分割協議による場合

  • 遺産分割協議書
    相続人全員の署名・実印での捺印が必要です。
  • 申請人以外の相続人の印鑑証明書
    各相続人が市区町村役場の窓口で印鑑証明書を発行します。

相続登記の手続き方法

相続登記の手続き方法は以下の通りです。

誰が相続人になるかを確認する

まずは誰が相続人となるのか決定しなければなりません。上の各ケースに従い、該当不動産の相続人を決定します。

必要書類を揃える

不動産の相続人が、登記申請に必要な書類を揃えますそれぞれのケースによって必要書類が違いますし、ここに想定しない各個の事情によっても、必要書類は変わってきます。自分で相続登記を行う場合は、法務局に一度相談するのが良いでしょう。

法務局に出向く、あるいは郵送、オンラインで申請を行う

手続きは、不動産がある場所を管轄している法務局で行います。郵送やオンライン申請も可能です。郵送やオンラインを選ぶときは、書類に不備がないか、いっそう慎重に確認しましょう。

申請から登記完了までは、1週間から10日ほどです。

相続登記はケースごとに必要書類を確認しよう

以上のように、相続登記はケースごとに必要書類が違ってきます。自分の場合はどのケースにあたるのかを把握して、書類を揃えるようにしましょう。また、各個の事情によって追加書類が必要になることもあるため、法務局によく相談するのが大事です。煩雑すぎて手に負えないと感じるときは、司法書士に依頼することも検討しましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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