2023年3月16日
相続
【FP解説】親の土地を相続する場合の手続きや税金・必要な種類など相続する方法と注意点を解説

遺産として土地を相続することになった人のなかには、「兄弟と、土地をどう分け合おう?」「土地を相続したらいくら税金がかかるのか?」と悩み、疑問に思う人もいるでしょう。複数の相続人で一つの土地を相続するのはなるべく避けたほうがよいですが、どうしてもという場合は共有も可能です。土地を相続する方法とかかる税金について、また土地相続の際の注意点について解説します。

土地を相続する場合の相続登記と流れ

土地を相続したら、相続登記を行います。相続登記を怠っていると、土地を処分できなかったり、賃貸契約が結びづらくなってしまったりします。親名義の土地は「他人の土地」なので、勝手に売ることはできないのです。また、相続登記は土地を取得したことを知ってから3年以内に申請しなければ、10万円以下が過料されるようになります。

相続登記の流れ

相続登記の流れは、以下の通りです。

  • 相続人の確定
    遺言や法定相続のとおりに、あるいは相続人全員の遺産分割協議によって、土地の相続人を確定します。
  • 必要書類を揃える
    次項で説明するような必要書類を揃えます。
  • 法務局に相続登記の申請をする
    必要書類を揃えて法務局に申請を行います。申請と同時に、登録免許税(固定資産評価額の1000分の4)の納付も必要です。

相続登記の必要書類

相続登記には、おおむね以下のような書類が必要になります。ケースによって用意するべき書類が違うため、法務局に相続人が決まった経緯を説明し、追加で何が必要になるかを聞いてみるのがおすすめです。

  • 登記申請書
    法務局のホームページから、該当する書式を選んでダウンロードします。
  • 登記済証(いわゆる権利書)
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票の写し
  • 固定資産評価証明書
  • 遺言書(遺言によって相続を行う場合)
  • 遺産分割協議書(遺産分割協議によって相続が決定した場合)

遺産相続の手続きに必要な戸籍謄本とは?必要な範囲や取得方法を解説

相続登記の手続き方法

相続登記の手続き方法は、次の3つのうちから選べます。

  1. 法務局に出向いて申請する
    相続する土地を管轄する法務局に出向いて申請を行います。足を運ぶ時間が必要ですが、不備などがある場合にはその場で直せますし、不足書類がある場合も説明してもらえます。
  2. 郵送で申請する
    申請は郵送も可能です。相続する土地を管轄する法務局が遠方にあるような場合は、郵送もやむを得ないでしょう。
  3. オンラインで申請する
    相続登記はオンラインでも可能です。法務省HPから申請用総合ソフトをダウンロードして、手引書に従って作成することになります。

参考:不動産登記の電子申請(オンライン申請)について(法務省)

土地の相続税の計算方法

まず、相続税というのは、家や車、現金といった遺産に、個別にかかるわけではありません。遺産のトータル金額を算出してから、相続税の計算にかかります。よって、相続税の計算は、まず家や車といった財産それぞれの評価額を算出することから始まります。

土地と家屋の評価額の計算方法

土地と家屋の評価額は、土地の評価額と、建っている家屋の評価額を足して計算します。まず、家屋の評価額は、固定資産税評価額×1.0と定められています。つまり、固定資産税評価額が、そのまま家屋の評価額になります。

一方で、土地を評価するためには、「路線価方式」あるいは「倍率方式」を利用し、評価額を計算します。

  • 路線価方式
    国税庁の「路線価図・評価倍率表」により路線価が定められている地域であれば、路線価方式が使えます。路線価は土地の1平方メートル当たりの価額を意味するため、路線価×面積×補正率(土地の形状などに応じた奥行価格補正率など)で算出されます。
  • 倍率方式
    評価倍率の地域に該当するなら、倍率方式を使います。固定資産税評価証明書に記載されている「固定資産税評価額に乗ずる倍率等」に従って計算します。固定資産税評価額×評価倍率が、相続税評価額です。

その他、賃貸物件や事業用、居住用として家屋が使われている場合は、評価額が調整されたり、減額されたりする特例があります。

相続税の金額は合計遺産額と家族構成などによって決まる

土地の評価額が算出されたら、車や骨とう品など他の遺産の評価額や、現金・証券類の金額と合わせ、遺産の合計金額を算出します。相続税は、遺産の合計額が、控除額を超えた分にかかります。相続税の基礎控除額は、「3000万円+相続人の数×600万円」です。亡くなった人の配偶者と子ども2人が相続人なら、4800万円が基礎控除額となります。

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土地を分割相続する方法

土地を複数の相続人で分けて相続したいと考えたとき、次の4つの方法があります。それぞれ説明します。

現物分割

土地をそのまま分割して相続する方法です。親の実家を子ども2人で相続したいといったときには、分割するわけにはいかず、この方法は使えません。山や森林といった、広大な土地を分けるなどの場合に可能です。

代償分割

土地をある1人の相続人が相続するかわりに、他の相続人へ法定相続分の現金などを渡すのが、代償分割です。

例えば亡くなった人の配偶者がすでにおらず、子どもが3人いるとして、9000万円相当の実家があるとします。法定相続にのっとるならば3000万円ずつを分割しますが、家はもちろん1つしかありません。そこで、子どものうちの1人が家を相続する代わりに、他の2人に3000万円ずつの現金や、それに相当する現物(ほかの相続不動産など)を渡すのが、代償分割です。

換価分割

相続する財産を売却して現金化し、相続人たちが分割するのが換価分割です。ただ、大事な遺産である土地を残せないことが難点です。

共有分割

遺産を複数の相続人が共有名義人になって相続するのが、共有分割です。例えば実家について、亡くなった人の配偶者と同居する子ども、あるいは2人の子どもが共同で名義人となるケースがこれにあたります。

一番手間がかからない方法ではありますが、土地を処分するときは全ての名義人が同意しなければなりません。相続人同士の方針が違うと、いさかいのもとになります。

親の土地を相続する場合の注意点

親の土地を相続する場合は、次のようなことに注意しましょう。

土地を共有分割するのはなるべく避ける

土地の共有分割は、トラブルのもとです。その土地をどう活用するかで相続人同士がもめてしまうと、売却や賃貸が進まなくなり、せっかくの遺産を有効に使えなくなってしまいます。また、土地名義を変更しないまま世代が進めば、土地の処分手続きはもっと複雑になります。

現在の登記を確認し、世代を超えた相続登記とならないか確認する

親の土地と思い込んでいるものが、実は親が相続登記を怠っており、名義は祖父になっているかもしれません。代をまたいでの相続登記は、中間相続人が一人だけである場合を除いて、2回の手続きが必要になります。まずは登記を確認しましょう。

親の土地の相続は親族間の話し合いが不可欠

親の土地は、例えば同居する子どもであったら「なんとなく」そのまま相続し、何の手続きも踏まずに過ごしてしまいがちです。しかし、相続登記の際には、相続人が確定していることを示す資料が必要になります。土地の相続が生じたら、必ず法定相続人同士で相談し、相続人をきちんと決めておきましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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