孫に生前贈与をすると、贈与税が非課税になる場合があります。子どもにではなく、孫に直接、教育資金を譲ることができるうえ、税負担が軽くなるなら嬉しいことです。ただ、孫への贈与には、課税となる場合とならない場合とがあるため、注意しなければなりません。また贈与税はかからなくても、相続発生時に相続税がかかることもあります。孫に贈与するときの注意点やメリットをお伝えします。
孫への生前贈与のメリットは、3つあります。
孫へ生前贈与をする場合、一定の条件を満たすと、相続税の節税になることがあります。制度概要や、どのくらいの節税効果が望めるかについては、後ほど、詳しく説明します。
孫への生前贈与で、贈与税が免除される場合があります。孫だからこそ免除されるケースと、贈与を受ける人が孫でなくても、一定の条件を満たせば免除されるケースとがあります。詳しくは後述します。
生きているうちに援助しなくても、自分が亡くなれば財産は子ども、つまり孫の親へ相続され、孫のために使われることは間違いありません。しかし、自分が亡くなる頃には孫がすでに独立し、安定した暮らしをしていることもあるでしょう。するともっともお金のかかる教育費用や結婚・子育て費用などを援助してやれないことになります。生きているうちなら、最もお金が必要な時期に、援助を申し出ることが可能です。
孫への生前贈与で非課税になる方法は、主に次の5つです。期限付きの特例措置も含まれているため、利用したいと考えたときは期限を確認しましょう。 なお、期限が切れていたとしても、新たな特例措置が取られている場合があるため、調べてみることをおすすめします。
贈与税の基礎控除額は年間110万円です(暦年贈与)。つまり、年間110万円までであれば、誰に与えても非課税となります。これは孫に限りません。
60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子ども、孫など直系卑属に贈与をする場合は、相続時精算課税制度を使うと、贈与の総額が2,500万円になるまでは贈与税がかかりません。この制度を使う場合は、根間110万円までが非課税となる暦年贈与の制度が使えなくなります。よって、毎年コツコツ贈与するよりも、ある程度まとまった金額を一括で贈与するのが良いと判断したら、相続時精算課税制度を利用するのが良いでしょう。
ただし、「相続時」に「精算」する「課税制度」なので、贈与した分は相続発生時に、つまり祖父祖母が亡くなったときに相続財産へ加算されてしまいます。相続財産の合計金額が大きい場合は、相続税を払わなければならない可能性があることを念頭に置いておきましょう。相続財産に加算されたときの課税は、贈与時の時価に対してかかるため、確実に値上がりするような財産を贈与しておけば相続税の節税になります。
相続時精算課税制度とは?一般贈与での相続との違いやメリット・デメリットを解説
孫が20歳以上50歳未満であれば、孫の結婚費用や子育て費用に充てるための一括贈与は、1,000万円まで非課税となります。贈与の条件は以下の通りです。
金融機関等との一定の契約に基づき、
なお、契約期間中に授与者(自分)が死亡した場合には、残額が相続財産とされ、相続税の対象になります。また、受贈者(孫)が50歳に達するなどによって契約が終了した場合には、残額が贈与税の対象となります。
期限付きの特例なので、制度概要をよく確認してください。
No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税(国税庁)
父母、祖父母など直系尊属からの贈与により、20歳以上(贈与を受けた年の1月1日において20歳以上)の子どもや孫が、自宅の新築、取得、増改築の援助をした場合は、最高3000万円まで、贈与税が非課税となります。非課税の限度額は、契約の締結日や消費税等の税率、省エネ住宅であるか否かなどによって変わります。
受贈者となるには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与された資金の全額を充てて新改築をしなければならないなど、いくつか条件があります。
期限付きの特例なので、制度概要をよく確認してください。
No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(国税庁)
30歳未満の人が、父母や祖父母などの直系尊属から教育資金を一括贈与された場合、1,500万円までが非課税となります。教育資金として使えるのは、学校などに対して直接支払われる入学金や授業料、学用品の購入費等の他、学校等以外の者に対して直接支払われる施設料金や受講料、通学定期や留学の渡航費などです。生活費には使えません。
契約期間中に授与者(自分)が亡くなった場合には、残額の一部が相続税の対象になる可能性があります。また、受贈者(孫)が30歳に達するなどにより契約が終了しても贈与額を使い切れないときは、残額が贈与税の対象となります。
期限付きの特例なので、制度概要をよく確認してください。
No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税(国税庁)
孫への生前贈与を考えているなら、以下のことに注意しましょう。
親が子どもを養うとき、子どもには生活能力がないため、日々の生活費や学費を支払います。こういった扶養のために使われる金銭は、当然ながら贈与とはみなされず、贈与税の対象にはなりません。数年分、まとまった金額の贈与をしたいという希望がある場合は別ですが、子や孫の入学や通学にかかる費用をその都度負担するといったことは「被扶養者の教育上通常必要と認められる」(相続税法基本通達21の3-5)ものとみなされ、非課税となることを覚えておきましょう。
暦年贈与により孫の通帳に年間110万円以下を振り込もうとする場合は、注意が必要です。毎年同じ月日に同じ金額を振り込むなどすると、「数年にわたっているが、一括贈与である」とみなされ、贈与税の対象となる場合があります。
相続時精算課税制度を選択するときは、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告をする必要があります。また、結婚・子育て資金の一括贈与の場合は、金融機関等を通して結婚・子育て資金非課税申告書の提出が必要です。このように、必要な手続きはきちんと行っておきましょう。
以上のように、贈与税を抑えた形での孫への贈与はいくつか方法がありますが、特例に対して期限が設けられていることがあります。期限を確認し、また、新たな優遇措置が取られていないかも調べてみましょう。孫へ贈与することは、家の未来に投資することにつながります。孫の明るい笑顔と未来のために、そして豊かな老後のために、賢くお金を使いましょう。