2023年3月31日
相続
【FP解説】土地を遺産相続するときに必要な手続きと書類や分け方・売却方法をわかりやすく解説

親などから遺産土地を相続すると、土地の名義を変更するための手続きが必要になります。しかし、相続人が複数いる場合などは、誰がその土地を相続するかから決めなければなりません。土地の遺産相続に関する手続き方法や、かかる税金の計算方法、相続した土地の売却方法についてご案内します。また、相続人が複数いる場合の分け方についても紹介します。

土地を遺産相続する手続きと流れ

土地を相続するには、相続登記が必要です。いつ、どのようなことをすればよいか、流れに沿ってご説明します。

相続人を誰にするか決める(なるべく早く)

まずは、誰がその土地を相続するかを決めなければなりません。遺言書があれば、遺言どおりの人が相続人となります。遺言書がなければ、法定相続人がそれぞれの相続分の範囲で相続することになりますが、家が建っている土地を相続するときは、「3人の子どもたちにそれぞれ1/3ずつ土地を分割する」といった分け方は不可能です。よって、相続人全員による遺産分割協議を行い、土地の相続人を決めます。

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相続税がかかる場合は納める(10ヶ月以内)

土地の評価額を算出し、さらに他のすべての相続財産と合算して、総遺産額を出します。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」なので、法定相続人が配偶者と子ども一人の場合は、4,200万円となります。遺産総額がこの基礎控除額の範囲であれば、相続税はかかりません。

相続税の基礎控除とは?申告不要の遺産総額の計算方法と注意点

相続税の申告と納付は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。よって、土地の評価額を含め、相遺産額がいくらになるかは早めに把握しましょう。

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相続登記のための書類を準備する(相続人決定後なるべく早く)

土地の相続人が決定したら、相続登記のための書類準備を始めます。必要書類については後述しますが、多岐にわたるため、なるべく早く入手できるようにしましょう。

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相続登記の申請をする(3年以内)

土地の取得を知ってから3年以内に相続登記の申請をしなければ、10万円以下の過料となります。書類が揃い次第、法務局に出向く、あるいは郵送、オンラインで相続登記の申請を行いましょう。

土地を遺産相続するために必要な書類

土地を相続するためには、相続登記が必要になります。相続登記の申請のために必要な書類は、おおむね以下の通りです。相続人の決定が遺言による場合は遺言書、遺産分割協議による場合は遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明が必要になるなど、ケースごとに必要書類が違いますので、詳しくは法務局に問い合わせましょう。

  • 登記申請書
    法務局のホームページから、該当する書式を選んでダウンロードします。
  • 登記済証(いわゆる権利書)
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票の写し
  • 固定資産評価証明書

遺産相続した土地の分け方

親から土地を相続したとしても、子どもが2人以上いるなど、相続人が複数存在する場合は、誰が相続するかが問題になります。この場合、次の4つの分け方があります。

現物分割

現物を分割して分け合う相続方法です。土地の場合は、例えば森林や山などの広大な土地を分割し、それぞれの相続人が別名義で登記を行います。

換価分割

遺産を売却して現金化し、相続人たちが分け合う相続方法です。公平に分けることが可能ですが、大事な実家を失うのは惜しい、まだ同居家族が住んでいるといった場合には、不動産には使えません。

代償分割

一人の相続人が遺産を相続する代わりに、法定相続分に相当する金額を他の相続人へ支払う相続方法です。土地の場合であれば、子どものうちの一人が実家を継ぐ代わりに、他の子どもらへお金を渡すといったケースが考えられます。ただ、土地の評価額は多額になることが多いため、土地を相続する人が現金を用意できるかどうかが課題になります。

共有分割

一つの土地を、二人以上の相続人が共同で名義人となる相続方法です。一番シンプルな方法ように見えますが、実は、最も避けたほうがよい相続方法です。共同名義人の方針が違い、一方が家を処分したいと考えても、もう一方がそれをよしとしない場合、事態は膠着します。土地の有効活用ができなくなる恐れがあります。

遺産相続した土地の売却手順

相続した土地の売却手順は以下の通りです。

相続登記を行う

他人名義の土地を売ることは難しいため、速やかに相続登記を行い、自分の名義とします。誰が相続するかが決まっていない場合は、遺産分割協議から行います。「親名義だと思っていたが、まだ祖父の名義の土地だった」など、相続登記が2代以上に渡る場合は、複数回の相続登記が必要です。

どのような状態で売りに出すかを検討する

築30年未満の居住に問題ない家であれば「中古住宅」として売り出せます。家がかなり古い場合は「古家付き土地」として売ることになります。また、家や建物を解体して「土地」として売り出す方法もあります。どのような状態で売りに出すかを検討しましょう。この時点から、不動産会社に相談してみるのもよいでしょう。

空き家となってしまった親の家を売りに出したいなら、現時点(令和3年3月時点)では、節税になる特例があります。令和5年12月31日までの間に売却でき、一定の要件に当てはまる場合は、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できます。頭に入れておきましょう。

参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
   No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋(国税庁)

不動産会社と契約する

不動産会社との契約には、以下の3種類があります。

・専属専任媒介契約

単一の不動産会社と契約し、1週間に1回以上の販売活動状況報告を得ながら、買主を探してもらう方法です。売主が自分で買主を見つけることはできませんが、積極的な販売活動を行ってくれることが期待できます。信頼できる不動産会社選びがポイントです。

・専任媒介契約

単一の不動産会社と契約し、2週間に1度の販売活動状況の報告を得ながら、買主を探してもらう方法です。専属専任媒介契約と違い、売主自ら買主を見つけることもできます。一社のみと契約するので、積極的に販売活動を行ってくれることが期待できますが、専属専任媒介契約よりも報告サイクルが長くなります。やはり、信頼できる不動産会社選びが重要です。

・一般媒介契約

同時に複数の不動産会社と契約し、自分で見つけた購入希望者と直接契約ができる方法です。間口が広がり買主を見つけやすいですが、不動産会社は売主に販売片有働状況を報告する義務がないため、実際の売却活動状況が分からないというデメリットがあります。

売り出し情報を更新して買い手にアピールを

不動産会社のホームページなどに、売り出し情報が掲載されます。買い手にアピールするために、相続した土地のセールスポイントをアップしてもらいます。自分では気づくことのできない土地の魅力があるかもしれないため、不動産会社にも、どんなところがアピールポイントとなりえるかを尋ねてみましょう。

遺産相続した土地は早めの有効活用を

相続した土地に家屋が立っていて、空き家となれば家はすぐに傷んでしまいます。人の住まなくなった家は風通しが悪くなり、カビや虫が発生しやすくなるためです。時間が経つにつれ買い手がつかなくなってしまいますから、相続した土地は、早めに有効活用の手立てを考えましょう。信頼できる不動産会社と契約して、二人三脚で良い買い手を探していくのがベストです。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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