2023年4月30日
相続
【FP解説】相続財産とは?財産に含まれる対象や相続税がかかるものなどわかりやすく解説

相続財産には、現金や不動産などの権利の他、借金やローンといった債務も含まれます。一方で、個人的な立場や請求権などは引き継ぐことができません。また、遺産の中には相続税がかかるものと、かからないものがあります。「何が相続財産となるのか、どの財産に相続税がかかるのか知りたい」「相続が発生しないうちに全財産を把握しておきたい」といった人のために、相続財産とは何かを解説します。

相続財産とは

相続財産とは、相続が発生したとき、法定相続人や遺言による相続人に承継される財産のことです。財産には、権利もあれば債務もあります。通常、財産と認識される現金や土地などの権利のほか、被相続人が生前に抱えていた債務があれば、それも相続財産に数えられます。

相続財産の対象

「被相続人の権利義務いっさいが相続財産となる」といっても、特殊な例外はあります。相続財産に含まれるものと、含まれないものについて、具体的に例を挙げて説明します。

相続財産に含まれる対象

相続財産に含まれる対象は、以下のようなものです。

  • 現金
  • 預貯金
  • 有価証券
  • 株券
  • 不動産
  • 貴金属類
  • 骨董品類
  • ゴルフの会員権
  • 著作権
  • 特許権
  • 住宅ローン
  • 未払い税金

基本的に、権利義務いっさいが相続財産となります。債務が権利を超過している、つまりプラスの財産よりも借金の方が多いときは、相続放棄を考える人もいるでしょう。ただ、相続を放棄すると、全ての財産を受け取れなくなってしまうため、形見ひとつ残せません。悩ましいところです。

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相続財産に含まれない対象

相続財産として数えられないのは、「被相続人の一身専属権」です。個人的な信頼関係をもとに取り結ぶ契約などがこれにあたります。例えば、以下のようなものです。

  • 運転免許
  • 使用借主の地位
  • 組合員としての地位
  • 扶養請求権
  • 生活保護受給権

以上のように、故人本人であるからこそ成り立った契約や権利は、引き継ぐことができません。

相続財産で相続税の対象となる範囲

相続財産となるものの中でも、相続税の対象となるものとならないものがあります。また、被相続人が亡くなったときには遺産として形がなくても、相続財産とみなされる「みなし財産」もあります。それぞれ説明します。

相続税の対象となる財産

相続税の対象になるのは、上の項で挙げたような現金や預貯金、不動産等、被相続人の権利義務であったもののほか、例えば次のような、みなし財産です。

  • 死亡退職金
  • 被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金
  • 贈与の非課税特例等を利用して受けていた贈与額のうち、使いきれなかった金額
  • 相続時精算課税の適用を受けて取得した贈与財産
  • 贈与税の納税猶予の特例を受けていた農地や株式、事業資産
  • 相続人がいなかった場合、民法の定めにより相続財産法人から与えられた財産
  • 特別寄与者が支払いを受けるべき特別寄与料の額で確定したもの

相続税の対象にならない財産

相続税の対象にならない財産のうち主なものは、以下のようなものです。

  • 墓地、墓石、仏壇、仏具などの祭祀財産
    ※骨董的価値があるなど、投資対象や商品としての所有を除く
  • 公益事業に使われることが確実なもの
  • 条例により障がい者やその扶養者が支給される給付金を受ける権利
  • 相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち、500万円に法定相続人の数をかけた金額までの部分
  • 死亡退職金のうち500万円に法定相続人の数をかけた金額までの部分

以上のように生命保険金や死亡退職金は、残された家族の生活のためのものという意味合いもあるため、一定の控除額が設定されています。

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分割できない相続財産がある

相続財産ではあるけれど、分割しては相続できないものがあります。それは、「相続税の対象にならない財産」で紹介した、墓地、墓石、仏壇、仏具などの祭祀財産です。これら祭祀財産は、祭祀主催者の一人のみが承継することとされています。

不動産は分割できないと思われがちですが、複数の相続人が分筆したり、共有の名義人になったりすることができます。また、不動産を処分して得た金額を分けることは可能です。

ただ、共有で名義人となると、その不動産を賃貸や売却したい場合に、全ての名義人の同意が得られないと契約できなくなってしまいます。このように名義人の方針が違うと不動産の活用が滞るため、共有で名義人になるのは、あまり得策とは言えません。

不動産の中でも最も悩ましいのが、故人が住んでいた、そして子世代が住み継ぐ家の相続でしょう。子どものうちの一人が家を相続する代わりに、法定相続分に相当する金額を他の子どもに与えられれば公平な相続が可能となります。しかし、家の評価額によっては金額が大きくなり、とうてい支払えない額となることも珍しくありません。相続人となる子どもたちの話し合い(遺産分割協議)によって、落としどころを決めることになるでしょう。

相続できる財産や相続税の対象となる財産を知っておこう

以上のように、相続財産と一口に言っても、相続できる財産とできない財産、相続税の対象となる財産と、ならない財産があります。相続税の計算等をするときにもこの知識は必要なので、いざというときのために、前もって知っておくことが重要です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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