遺産相続の手続きには、戸籍謄本が必要になります。とはいえ、戸籍謄本には記載される範囲があり、どこまでの範囲を取得すればよいかは、よく確認しなければなりません。例えば、亡くなった人については、生まれたときから亡くなるまでの戸籍謄本が必要です。戸籍を移す回数が多いほど、取得しなければならない謄本も増えます。相続人においても、戸籍謄本が必要な場面があります。相続する際に必要な戸籍謄本について解説します。
戸籍謄本とは、戸籍に記載されている人を証明する書類です。誕生すると両親の戸籍に名前が記載され、本籍地の市区町村役場に保管されます。結婚すれば新たな戸籍が作られます。つまり戸籍は親族関係を登録するものでもあり、生まれてから亡くなるまでの戸籍をさかのぼれば、「結婚した」「子どもが生まれた」「離婚した」「養子を迎えた」等、その人の身分関係が分かります。
相続関連の手続きでは、誰が相続人にあたるのかを客観的に把握するため、戸籍謄本が必要になる場合があります。例えば預貯金等の名義変更、不動産の相続登記、相続税の申告が、それにあたります。
また、相続財産をすべて把握したとき、プラスの財産よりもマイナスの財産が大きく、相続を放棄したいと考える人もいることでしょう。相続放棄の際にも、戸籍謄本が必要です。
相続放棄とは?手続き方法と必要書類だけでなく手続きまでの注意点を解説
遺産相続で必要になる戸籍謄本の種類と範囲は、以下の通りです。
被相続人の出生から死亡までをたどり、誰が法定相続人にあたるのかを客観的に証明します。戸籍は本籍地が変わったり、結婚したり、戸籍法の改正があったときに新しく作られます(改製原戸籍謄本)から、人によってはかなりの数になります。また、戸籍上、すでに誰もいない場合には、除籍謄本を申請します。
結婚等をすれば戸籍が変わるため、以後は被相続人の戸籍ではたどれません。そのため、最も新しい戸籍を取得します。
被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を使っても、相続人との身内関係が証明できないとき、また、相続人よりも相続順位の高い人が亡くなったことで相続人となったときには、さらに別の戸籍が必要になります。
例えば兄弟姉妹等が相続人になる場合、被相続人の両親の戸籍謄本と、祖父母の死亡が確認できる戸籍謄本が必要です。
代襲相続とは、相続すべき人がすでに亡くなっている場合に、相続すべきだった人の子どもなど、一世代若い人が相続者になることです。例えば、祖父と父親がいずれも死亡していたら、子どもが代襲相続をします。この場合、亡くなった相続人についても、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本が必要です。また、代襲相続者の戸籍謄本も取り寄せることになります。
とくに難航しがちなのが、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取得することです。戸籍謄本を申請するには、住所がわからなければならないため、転籍が多いほど手続きは難航します。手順を踏まえて実行しましょう。
生まれたところからではなく、亡くなった時点の戸籍謄本をとることからスタートします。本籍地が分からない場合は、故人の最後の居住地で、本籍地記載の住民票の除票をとりましょう。記載されてある本籍地の市区町村役場に、亡くなった時点での戸籍を請求します。
戸籍謄本には、以前の本籍地の住所が記載されています。以前の本籍地に戸籍謄本を申請し、その謄本を使って、さらに以前の本籍地を確認します。
戸籍謄本をさかのぼって取得することを繰り返し、出生のときまでたどります。法改正により戸籍が変わったタイミングがあれば、改正前と改正後、両方を取得します。
戸籍謄本は、窓口か郵送の、いずれかの方法で取得します。申請書類や手数料については、各自治体で異なるため、本籍地の自治体のホームページなどを参照しましょう。ここでは、一般に必要になる書類や費用の目安をご案内します。
本籍地の市区町村役場へ出向いて戸籍謄本を申請し、交付を受けます。戸籍謄本を請求できるのは、本人、配偶者、直系血族だけです。それ以外の相続人が故人の戸籍謄本を取得する場合は、相続人であることを証明するため、故人との関係が分かる書類を提出するよう求められることがあります。専門家などに委任する場合は、委任状を提出します。
【必要となるもの】
【費用】(東京都中央区の例)
本籍地が遠く出向けない場合は、郵送が便利です。各自治体のホームページで必要書類をダウンロードし、必要事項を記入して返信用封筒などと共に郵送します。急ぐ場合は、速達を選ぶのがいいでしょう。また、個人情報書類のため、簡易書留、または特定記録郵便での返送が推奨されています。
【必要となるもの】
以上のように、相続で必要になる戸籍謄本の種類や範囲はさまざまです。自分ではとても集められないと思ったら、行政書士など専門家に依頼するのも一つの手です。また、終活の一環として、かつての戸籍を取り寄せ、ひとまとめにしておくと、のちのち相続人の役に立つでしょう。スムーズな相続のために、必要な戸籍をきちんと取り寄せましょう。