不動産を持っている人に毎年重くのしかかるのが、固定資産税です。「老後、収入が少なくなったら、固定資産税を払えないのでは」「相続した土地の固定資産税を払える気がしない」とお悩みの人もいることでしょう。
固定資産税が払えない状況になったら、どうなってしまうのでしょうか。固定資産税が払えないときにやってはいけないことや、払えなくなった場合の対処法を解説します。
固定資産税を滞納すると、納付期限を超過した翌日から延滞金が発生し、納付期限から1ヶ月目までは年2.5%、2ヶ月目以降は年8.8%(※令和3年12月31日まで)と、延滞金はどんどん膨らんでいきます。この延滞金について明記された督促状が、自治体から届くようになります。
難度か督促や催告があっても無視し続けていると、身辺調査や財産調査が入り、その後、財産が差し押さえられるまでに至ります。勤務先や取引している金融機関にも、滞納の事実が知られてしまいます。 その後、滞納税金の金額により、差し押さえとなった財産は公売、競売にかけられてしまう可能性があります。売却金が納税に充てられることとなります。
土地を相続したら、当然のことながらその不動産の固定資産税は、相続人が納付していくことになります。相続人が確定するまでは、全相続人に納税者としての責任があるため、誰かが代表として納付を行い、税額を人数分で割ってそれぞれが負担します。
相続人が確定したら、翌年からの固定資産税は、その不動産を相続した相続人が納付します。不動産等の名義を変更する相続登記も忘れずに行いましょう。 「相続人が確定していないのだから、固定資産税が未納でも許されるだろう」という考え方はタブーです。
相続が発生していても、遺産分割協議が難航していても、固定資産税はお構いなしに課税され、また滞納すると滞納金が加算されます。
「相続でごたごたしているから」「老後、収入が減ってしまったから」と、ついつい固定資産税の支払いを遅らせてしまうというケースもあるでしょう。そんなとき、絶対にやってはいけないたった一つのことがあります。
それは、「納付書や督促状を無視する」ということです。 督促を無視し、自治体とコミュニケーションを取らないままでいると、「納税の意志がない」とみなされ、担当者の心証はどんどん悪くなってしまいます。どんなに気が重くても、肩身が狭いと感じても、きちんとコミュニケーションを取ることが、事態悪化を防ぎます。
固定資産税が払えない場合は、以下の5点をポイントに、対処法を選びましょう。
まずは、滞納する前に自治体の窓口へ相談しましょう。固定資産税は地方税なので、市区町村役場への問い合わせとなります。「どうしても固定資産税が納付できない、このままでは滞納してしまう」と相談し、担当者と面談等で話し合うことになります。
「さらに細かく分納させてもらえるのなら、納付できるかもしれない」という人は、分納を相談しましょう。ただ、小刻みに納付するということは、そのぶん期限が延びるということ。延滞金を抱えるリスクを増やしてしまうことにつながります。本当に計画的に納付できるという自信のある人にだけ、おすすめです。
事業不振や災害、病気など、特別な事情があるときは、1年間の徴収猶予を受けられます。猶予期間中に滞納金が生じたり、財産が差し押さえられたりすることはありません。
すでに差し押さえの段階になってしまっている人は、換価の猶予が受けられないか相談してみましょう。「自宅を処分されたら行くところがない」「事業所を処分されたら商売ができない」など、生活維持が困難になる場合、そして税金を納める意思が感じられる場合にだけ、猶予を受けることが可能です。
固定資産税は、毎年かかるものです。猶予や分納で何とかやりくりしても、すぐに次の納税時期が来てしまいます。毎年一定額を支払うめどが立たないのなら、該当不動産を売却してしまうのも一つの選択です。
「家を手放したら、住むところがない」という人には、家を担保に融資を受けられる「リバースモーゲージ」を選ぶ手もあります。住みながら生活資金を借り入れ、毎月利息のみ(金融機関によっては利息の返済も不要)を返済して、元金や返済していない利息は住人が亡くなった後に自宅を売却することで支払うことができます。
また、自宅を売り払った後も、家賃を支払うことで住み続けられる「リースバック」もあります。まとまった売却金を得られ、住み慣れた家で生活できるうえ、自宅は自分の資産ではなくなるため、固定資産税を支払う必要がなくなります。 以上のように、売却といってもさまざまな手法があります。
「固定資産税が払えない。でも、今の生活を手放せない」という人は、金融機関や不動産会社等へ気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
滞納している税金の支払いは自己破産をしても免除されません。
「払えない」と悟った時期からなるべく早めに自治体へ相談し、誠意を見せましょう。相談を続けるうちに、解決策が見えてきます。また、どうしても支払えないとなったときのために、土地売却の可能性についても検討しておくことがおすすめです。