2023年6月30日
相続
【FP解説】相続時に不動産取得税はかかる?不動産相続時の税金や計算方法を解説


住宅など土地を相続したら、不動産取得税を収めなければならないのでしょうか。一般的な相続の場合、不動産取得税は非課税ですが、代わりに納めなければならない税金があります。また、死因贈与など、人が亡くなったことで発生した土地取得であっても、不動産取得税がかかる場合があります。不動産相続時の税金や、税額の計算方法を解説します。

不動産取得税とは?

不動産取得税とは、マイホームやマンションの購入、贈与など、土地や建物を取得したときに課される税金のことです。人から不動産を贈与されたときにも課税されるので、「実家を相続したら、不動産取得税がかかるのでは」と考える人もいるでしょう。

しかし、一般的な相続時には、不動産取得税はかかりません。不動産を相続したときには、預貯金や自動車など他の遺産を相続したときと同様、相続税の対象になります。

ここでいう「一般的な相続」とは、被相続人が亡くなった後、その配偶者や子など法定相続人が土地や建物を承継する場合の相続です。つまり、そうではない場合は、不動産取得税がかかる恐れがあります。

不動産所得税がかかる場合

土地や建物を、購入ではなく相続の意味合いで譲り受ける時、不動産取得税がかかる場合は以下の3つです。

相続時精算課税制度により不動産を取得した場合

贈与税により、相続時精算課税制度の適用を受けていても、不動産取得税は課税されます。相続時精算課税制度とは、親から子や孫に財産を贈与したとき、贈与の合計額が2,500万円までは贈与税が非課税となる制度であり、申告によって選択します。
贈与税の負担は軽くなっても、不動産取得税が発生するのです。また、実際に相続が発生したときには、相続税の対象にもなります。

死因贈与によって不動産を取得したとき

死因贈与で不動産を取得した際も、不動産取得税がかかります。死因贈与とは、死亡を原因として、贈与者が受贈者に財産を贈与する契約により行われる贈与を指します。契約の取り決めは必ずしも遺言に書かれるわけではなく、口頭での約束や書面による契約書が効力を持ちます。

相続人以外が特定遺贈を受けたとき

配偶者や子どもといった相続人以外の人が、遺言により不動産を遺贈された場合には、不動産取得税がかかります。

不動産所得税の税率と軽減措置

不動産取得税には決まった税率があり、また事情によって軽減措置が取られる場合があります。それぞれ解説します。

税率と計算方法

不動産取得税の税率は、土地や住宅であれば、取得した不動産の固定資産評価額(課税標準額)の3%です。非住宅の家屋であれば、4%です※1。土地の購入代金ではなく、固定資産評価額にかかることを注意しましょう。つまり、無償で譲り受けても、不動産取得税は納めなければならないのです。

取得不動産の課税標準額×3%または4%=不動産取得税

ただし、宅地等(宅地及び宅地評価された土地)の課税標準額は、現在※1、固定資産評価額の1/2となっています。
※1 税率、課税標準額については令和6年3月31日までに取得した土地建物が対象(令和3年6月現在)

軽減措置

新築住宅を取得したら、貸家以外であれば50㎡~240㎡、一戸建ての貸家であれば50㎡~240㎡、一戸建て以外の賃貸住宅であれば40㎡~240㎡以下の場合に、住宅の価格から1,200万円が控除されます(認定長期優良住宅の場合は1,300万円)。
なお、居住用の中古住宅を取得したときにも、一定の条件を満たすと、新築された日に応じた額が住宅の価格から控除されます。要件が複雑なため、以下のような計算ツールを使うと便利です。

東京都主税局 不動産取得税計算ツール
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/syutokuzei.html

以上の軽減措置によって計算された課税標準額が、土地の場合は10万円未満、新築・増築・改築家屋は23万円未満、その他の家屋は12万円未満であれば不動産取得税は課税されません。しかし、土地取得からその土地に隣接する土地を1年以内に取得した場合などは、あわせて1つの土地を取得したとみなされます。

不動産の相続時にかかる税金

不動産の相続時には、不動産取得税がかかりませんが、次の2つの税金がかかる可能性があります。

相続税

不動産をはじめ、故人の預貯金や自動車、宝飾品など遺産の全てを合わせた価額が、基礎控除額を超える場合には、相続税が発生します。相続税の基礎控除額は、3000万円+法定相続人の数×600万円です。法定相続人が一人だけの場合は、遺産総額が3600万円を超えれば相続税が発生します。

登録免許税

登録免許税は、相続か否かに関わらず、土地を取得し自分の名義に変更した全ての人にかかる税金です。登録免許税の金額は、固定資産税評価額の0.4%です。土地を相続したら、必ず相続登記を行う必要があり、その際に登録免許税も納付します。

まとめ

相続時、不動産取得税がかかるか否かは、それが一般的な相続によるものかどうかが影響します。相続人ではない人が遺贈や死因贈与を受けたときには、不動産取得税についてよく確認しましょう。また、相続では不動産取得税がかかりませんが、相続税などがかかる恐れがあります。相続が発生したら、不動産の価額を確認し、全遺産額を算出することが大切です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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