2023年8月2日
相続
【FP解説】兄弟で土地を相続するときに争う理由と争わない分割方法と注意点

親が亡くなると子どもたち兄弟が相続人となり、遺産を分割して相続することになります。遺産分割の中でももめごとが起こりやすいのが、土地の相続についてです。兄弟が不動産を相続するなら、相続人が生前に遺言書を用意しておくか、遺言がなければ遺産分割協議で分割方法を決定します。兄弟で土地を相続するときに争う理由や、皆が納得できる分割方法を解説します。

兄弟で土地の相続を争う理由

まずは、兄弟で土地の相続を争う理由について確認しておきましょう。争う主な理由は、以下の5つです。

相続するお金が少なく、兄弟で分けられる土地は実家1つだけ

遺産を兄弟で平等に分けられれば良いですが、全ての遺産がキッチリ平等に分割できるとは限りません。相続するお金がほとんどないため、土地を分割して相続することで平等な相続を行おうとしても、肝心の遺産となる土地が実家一つだけでは分割は難しいでしょう。結果、もめごとに発展します。

土地がたくさんあっても、兄弟で平等に分けることができない

例えば3兄弟が相続するとして、相続する不動産が3件あったとしても、それぞれが同じ価値を持っているとは限りません。どのように分割しても不平等になってしまうと、頭を悩ますケースが見られます。

兄弟の誰もが相続したい土地がある

相続対象の不動産がふんだんにあり平等に分けることが可能であったとしても、思い出のある実家や利用価値の高い不動産などは、兄弟間で争奪戦になる可能性があります。

兄弟の誰もが相続したくない土地がある

相続対象の不動産がふんだんにあり平等に分けることが可能であったとしても、荒れた山林や運用できる見込みのない不動産などは、マイナスイメージしかない遺産です。兄弟間で押し付け合うことになってしまいます。

土地の利用に対する兄弟の方針が合わない

例えば、「実家を長男が相続し、預貯金は次男が相続する」という話になったとしても、長男が「相続したら実家は売却するつもりだ」とし、次男が「思い出のある実家を売却するなんてとんでもない」と主張したら、相続は難航します。このように、土地の利用に対する兄弟の方針が合わないと、争いごとに発展します。

兄弟で土地の相続を争わない方法

遺言書がなかった場合、兄弟で土地の相続を争わないためには、以下の方法をとるのが望ましいです。

遺産分割協議を行う

遺産分割協議は、相続人全員が遺産の分割について合意をすることを目的とした協議です。遺言書がない場合や、法定相続では分割が難しい相続の場合に行なわれます。遺産分割協議によって、どの土地を誰が相続するのか、誰もが納得するまでしっかりと話し合います。

相続放棄をする

どうしても土地の分割が難しい、土地は全て利用価値がなく相続しても負担になるだけといったケースでは、相続放棄も選択肢の一つです。ただし、相続放棄をすると、土地だけではなく現金や形見を含めた故人の遺産全てを手放すことになるため、慎重に決めましょう。

分割相続を行う

次章で説明するような分割相続を行います。分割相続の方法を確認したうえで、遺産分割協議を行うと、話し合いが一層スムーズになります。

兄弟で土地を分割相続する方法

兄弟で土地を分割相続する方法は、以下の5つです。

換価分割

兄弟が相続する土地を売却して換金し、売却益を相続人全員で分配する方法です。土地と違い、お金はキッチリ平等に分けられるため、納得のいく遺産分割が可能です。ただし、思い入れのある実家を売りたくないなど、兄弟が土地そのものに相続する価値を感じている場合は、適していません。

代償分割

兄弟のうち1人が土地を相続し、その土地の価額を割り出して、他の相続人に相当の金額を支払う方法です。例えば3兄弟のうちの1人が、価額3000万円の土地を相続した場合、残りの2人に1000万円ずつを支払うことで平等な遺産分割とします。ただ、土地を相続する人が十分なお金を持っていない場合には、適していません。

土地の分筆

1つの土地を、登記上複数の土地に分けて、それぞれの土地を相続する方法です。例えば3兄弟がみんなで実家を相続する場合、登記上は3つの土地に分けることになります。
土地を売却したり、土地の相続人が大きな金額を捻出したりせずに済むシンプルな方法ですが、後に土地の利用に対する方針が兄弟間で違ってくると、もめごとに発展する可能性があります。

共有分割

兄弟が共同で一つの土地の名義人になることです。ただ、この方法も、土地の分筆と同様に、後に土地の利用に対する方針の違いで、もめごとになる恐れがあります。さらに、兄弟のうち1人が死亡すると、死亡した兄弟の配偶者や子どもへ名義が移っていき、数十年後には「誰の土地なのか、調べないとわからない」といった事態になることも考えられます。

現物分割

現物分割とは、遺産をそのままの形で相続する方法です。本来であれば、現物分割が一番簡単な相続方法といえます。ただ、土地はキッチリ分けられるものではないため、とくに相続人が複数いる場合、土地の現物分割はなかなか難しいのが現実です。

兄弟で土地を相続する場合の注意点

生前に親に遺言書を書いてもらう

遺言書があれば、遺言書の通りに土地の相続を進められます。できれば親が元気なうちに、遺言書を作成してもらうのが理想です。その際、「長男に全てを譲る」など偏りがあると、やはり争いごとに発展してしまうため、なるべく全体のバランスを取れるよう考慮してもらいます。
また、兄弟間においては、「遺言書に書かれたことには従おう」という共通認識ができているといいです。理想的なのは、親と子どもら兄弟が揃って、土地の分割に関する会議を開いておくことです。

「誰もいらない土地」については処分しておく

兄弟誰もが引き継ぎたいと思えないような土地については、できれば親の存命中に、名義人である親の了解を得て売却処分し、お金に換えておくのが好ましいです。宝飾骨董品についても、同じことが言えます。

代償分割の場合は運用益を他の兄弟に回せないか考える

兄弟のうちの1人が実家など土地を相続する場合、他の兄弟には代償分割としてまとまったお金を渡さなければなりません。しかし、すぐにまとまったお金を用意するのが難しい場合には、貸家にして家賃収入を得るなどして、土地の運用益を他の兄弟に回せないかを考えましょう。
また、土地を相続すると、雑草をきれいにする、家のメンテナンスをするといった管理費用がかかってきます。「管理費については、代償分割の金額から差し引く」といった主張も大事です。

まとめ

兄弟で土地を相続するときには、以上のような争いごとが起こりやすいことをおわかりいただけたでしょうか。常仲が良い兄弟であっても、相続のこととなるともめごとに発展する可能性があります。可能であれば親の存命中に話し合って、土地の相続については解決しておくのが大事です。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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