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教育資金贈与を使いきれないとどうなる?教育資金贈与信託についても解説

2021年9月16日

教育資金贈与をご存じでしょうか。子どもや孫へ教育資金を贈与するとき、1500万円までが非課税となる制度のことです。しかしこの制度には、受け取る側が30歳未満であること、30歳までに使い切れないぶんについては受贈者に贈与税がかかること、学校等の教育機関以外への支払いは500万円までであることなど、さまざまな条件があります。教育資金贈与の注意点や、教育資金贈与信託のメリット、デメリットについて解説します。

教育資金贈与とは

教育資金贈与とは、祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合に、贈与税が最大1500万円まで非課税になる制度です。平成25年にできた制度で、令和3年現在、令和5年3月31日までの特例制度として設定されています。

受贈者(お金を受け取る人)の条件は、贈与者の直系卑属であること、30歳未満であることの2つ。主に、祖父母から孫へ教育資金を支援する目的で使われており、銀行に専用の信託口座を開くこと等で利用できます。税務署への申請は、取扱金融機関の営業所経由で行います。

1500万円もあれば、幼稚園から大学までの教育資金をかなりカバーできると考えられるため、親としては願ってもない制度です。しかし、使いみちは教育資金に限られており、受贈者のためであっても生活資金に使うことはNGとされているので、取り扱いに注意が必要です。また、他にも制度上の注意点があります。以降、教育資金贈与の注意点について、詳しく解説していきます。

教育資金贈与を使い切れない場合

受贈者が30歳になるまでに教育資金贈与を使い切れない場合は、贈与税がかかることがあります。「おじいちゃんからもらった大切な教育資金だから」と温存しすぎると、多額の税金を納付しなければならない可能性があるのです。贈与税がかかる場合、かからない場合は、以下の通りです。

贈与税がかかる場合

教育資金贈与において贈与税がかかるのは、以下3つの条件が満たされた際に、使い切れなかった金額があるケースです。

  • 受贈者が学校等を卒業している
  • 受贈者が30歳に達するなどして教育資金口座契約が終了した
  • 受贈者が30歳に達した時点で贈与者が生存している

使い切れなかった金額については、契約終了時に贈与があったとみなされ、贈与税の対象となります。20歳以上の子や孫が、祖父母や父母から贈与を受けた場合の贈与税は、以下の通りです。あらかじめ、贈与された金額から基礎控除額である110万円を引いて算出します。

【直系尊属からその年の11日において20歳以上の者への贈与税】

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

200万円以下

10%

400万円以下

15%

10万円

600万円以下

20%

30万円

1000万円以下

30%

90万円

1500万円以下

40%

190万円

3000万円以下

45%

265万円

4500万円以下

50%

415万円

4500万円以上

55%

640万円

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)(国税庁)

例えば、30歳の時点で使い切れなかった教育資金が500万円あるとしましょう。贈与税の計算は、以下の通りです。

基礎控除後の課税価格:500万円-110万円=390万円
贈与税額:390万円×15%-10万円=48万5000円

贈与税がかからない場合

贈与された教育資金を使いきれなくても贈与税がかからないのは、受遺者が以下のいずれかにあたる場合です。

  • 30歳の時点で学校等に在学している場合

まだ教育が終わっていないとみなされ、口座契約等は40歳まで延長されます。

  • 40歳になるまでに学校等を卒業し、かつ卒業時点で教育資金が残っていない場合

30歳以降は、学校等を卒業した時点で教育資金が精算され、使い切れていないぶんに関しては贈与税の対象となります。使い切っている場合は、贈与税はかかりません。

  • 23歳以降、あるいは学校等を卒業した後に贈与者が死亡した場合

祖父母など贈与者が亡くなったら、教育資金の残額は相続等により取得したこととされ、相続税等がかかる可能性があります。つまり、教育資金を提供してくれた祖父母などが死亡したことにより、残額は贈与ではなく相続対象の財産とみなされるのです。

ただし、贈与者が亡くなった時点で受贈者が23歳未満である場合や、在学中の場合は相続等により取得したこととはされません。

教育資金贈与の注意点

教育資金贈与には、使い切れなかったときに税金がかかる可能性がある以外にも、以下のような注意点があります。

使い途がかなり限定されている

教育資金といっても、教育のためであればどんなものにでも贈与されたお金が使えるわけではありません。学校等に直接支払われるような入学金や授業料、教科書費用、修学旅行費、教育運営費などはOKですが、文具や個人的判断で購入する参考書などはNGです。その線引きは、文科省のQ&Aを読み込んだり、口座 を開いた銀行にその都度確認したりするようにしましょう。

参考:Q&A(「教育資金」及び「学校等の範囲等」) 令和3年4月1日現在 (PDF:820KB)

塾や習い事への支払いは500万円まで

学校等以外の者、例えば塾や習い事の月謝などについては、非課税となる1500万円のうち、総額500万円までと決まっています。進学塾などの費用については年間100万円を超えるケースも多く、「そこにお金をかけたいのに」と頭を抱える親もいることでしょう。

「留学」の範囲が限定される

グローバル化が進む現代において、国内外を広く経験することは、子どもの教育に欠かせないと考える親は多いでしょう。しかし、留学にかかる費用のうち、非課税枠を使える部分は限られています。そもそも、海外等の「学校等」に留学する場合は適用OKですが、学校の授業やカリキュラムの一環ではない個人的な留学やホームステイについてはNGです。

他にも当制度における「留学」の取り扱いは複雑です。教育資金贈与制度を使って留学をしたい場合には、以下のQ&Aをよく読み込む必要があります。

参考:Q&A別冊「留学」等について 令和元年7月1日現在 (PDF:217KB)

教育資金贈与信託のメリット・デメリット

教育資金贈与信託とは、教育資金贈与制度を利用する人向けの信託商品です。祖父母など贈与者が委託者となり、孫など受贈者を受益者として、金融機関と信託契約を締結します。受贈者が教育資金を使いたい場合は、信託銀行に用途等を伝えたうえで申し込み、あるいは既に立て替えた教育資金の領収書を提示することで、必要額を引き出します。

教育資金贈与信託のメリット

教育資金贈与信託のメリットは、贈与額が正しく管理される点です。上に示したように、この贈与についての管理は大変ですから、この特例に即した信託の仕組みを利用したほうが便利で、確実に管理できます。

現に、この制度を利用するには税務署に直接申告するのではなく、取扱信託銀行等を経由して申告書を提出することとされています。つまり教育資金贈与制度を利用するということは、教育資金贈与信託の仕組みを使うということと、ほぼ同じです。

教育資金贈与信託を使えば、孫に確実に教育資金を援助できます。「子ども夫婦に『孫の教育費用に充ててね』とお金を渡しても、どうやら生活費に使われてしまっているようだ」などと悩む場合は、この仕組みを利用するメリットがあるといえるでしょう。

また、多額の資産を抱え、相続税対策に悩む場合も、この仕組みが有効です。贈与を行えば相続時の遺産は減少しますが、相続税よりも贈与税の方が、税率が高めな点がネックです。しかし、教育資金贈与のような特例を使えば、賢く節税できます。

教育資金贈与信託のデメリット

教育資金贈与信託のデメリットは、払い出しの手続きが面倒な点です。払い出しをするその都度、金融機関から教育資金として妥当であると判断してもらうための書類が必要です。書類自体の書き方は簡単ですが、毎回手続きを行うのは大変です。また、生活が苦しくなっても、信託口座には手をつけられないため、「今月苦しいから、ちょっと拝借」といった使い方はできません。

贈与にはさまざまな形があります。例えば年間110万円が非課税になる「暦年贈与」であれば、面倒な手続きは必要ありません。教育費が必要なときに、その都度少額を贈与し続けるなら、贈与税はかからないのです。

それに、扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものについては、そもそも非課税です。両親が子を養育するための費用が贈与とはみなされないのと同じように、「入学金の一部をおじいちゃんが援助しよう」「塾代はおばあちゃんが持つわ」といった出費は、贈与とはみなされないのです。

信託の仕組みが面倒なことから、「そのつど援助したほうがよい」という判断に切り替える人もいることでしょう。

まとめ

手続きが面倒な教育資金贈与信託をあえて使う理由としては、「孫に必ず教育資金が手渡されるようにしたい」「相続税節税のためにも制度活用で遺産を少なくしておきたい」といったものが考えられます。信託の仕組みを使うか、必要なときにそのつど教育費の援助を行うか。家族間でよく話し合って決めるのが良いでしょう。

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