2023年6月30日
資金調達
【FP解説】不動産担保ローンとは?メリットやデメリットと失敗しないための注意点


不動産を担保に融資を受けるのが、不動産担保ローンです。担保不動産が存在するため、無担保ローンと比べて金利が低く、返済期間を長く設定できる可能性が高まりますが、どのようなリスクがあるのか、詳しくご存じの人はあまり多くないでしょう。不動産担保ローンの仕組みや審査、返済などについての基本的な知識から、メリットやデメリットまでを解説します。

不動産担保ローンとは

不動産担保ローンとは、土地や、土地を含めた家屋などの不動産を担保にして借り入れを行うローンの仕組みです。無担保のローンと比べると、金利が低い、借入限度額が大きい、また返済期間の設定が比較的長くできるという特徴があります。

例えば、新しく事業を始めたいときに、店舗を構える土地や建物を担保にして借り入れを行うといった活用が考えられます。開業初期にまとまった資金の調達が可能になるため、早期に事業基盤を固められる可能性が高まります。

また、複数のローンを抱えている場合、不動産担保ローンへ借り替えを行うことで、支払いを一本化することができます。無担保状態よりも低金利になるため、月々の支払額を下げられる可能性があります。

審査の傾向については、銀行系(銀行や信用金庫など、預貯金機能のある金融機関)とノンバンク(信販会社など、預貯金機能のない金融機関)で違いがあります。銀行などによる不動産担保ローンは審査が厳しく、ノンバンクの場合は一般に金融機関ほど審査が厳しくはありません。

不動産担保ローンのメリット

不動産担保ローンの主なメリットは、以下の3つです。

低金利

不動産担保ローンは、一般に無担保ローンよりも低金利です。無担保型のローンは、金利が年率10~20%となることもありますが、とくに銀行などの不動産担保ローンの場合は、金利が年率2%に満たないこともあり、多くの場合10%を超えません。

ただし、審査がそれほど厳しくないノンバンクの場合は、金融機関に比べて金利が高い傾向にあります。とはいえ、法で定められた上限金利(借入金額に応じ、年15%から20%)があるため、年率20%を超えるような金利を強いられることはありません。

借入限度額が大きい

無担保ローンの場合、最大借入額は1000万円程度ですが、不動産担保ローンは最大で1億円近くの借り入れも可能です。最大借入額は、担保となる不動産の評価額によって決まります。
ただ、銀行や信用金庫などの銀行系ではなく、ノンバンク系の貸金業者から借り入れる場合かつ自分が住んでいる居宅を担保にする場合には、総量規制が適用されます。総量規制とは、貸金業法で決められた借り入れのルールで、「貸金業者による年間の貸付総額は本人の年収の3分の1まで」というものです。

契約会社によって返済能力があると認められれば、年収の3分の1を超える金額を借り入れることも可能ですが、この規制により大幅に借入可能額が小さくなってしまう人もいることでしょう。

自宅を担保に多額の借り入れを行いたい場合、リバースモーゲージという方法が可能です。50~60代以上のシニアが使える仕組みで、毎月の返済額が利息のみに抑えられており、元金のン歳は自分の死後、相続人が自宅を売却するなどの方法で行います。とくに不動産に強いノンバンクが保証し、銀行系の金融機関が融資を行う組み合わせのリバースモーゲージは、双方のメリットを生かした商品といえるでしょう。

長期間の借り入れが可能

無担保型であれば、ローンの種類にもよりますが、返済期間は最長で7年程度です。一方で、不動産担保ローンは20年、30年といった長期での借り入れも可能で、最長35年となっています。これも不動産という担保があることによる優遇措置です。

不動産担保ローンのデメリット

不動産担保ローンの主なデメリットは、以下の3つです。

審査期間が長め

「最短即日融資可能」などとしている会社もあるとおり、無担保型のローンは審査が下りるまでの期間が短いのが特徴です。一方で不動産担保ローンは、審査機関が長めに取られます。これは、担保となる不動産の評価額を正確に算出する必要があるためです。

不動産担保ローンの中でも審査が厳しめの金融機関は、審査が通るまで3週間から1ヶ月ほどを要することがあります。一方で、審査基準が緩やかなノンバンク系は最短3日ほどで審査が決まるところもあるなど、金融機関よりも短めです。

不動産を失うリスクがある

不動産を担保にするということは、返済が不可能となったときには、不動産を売却して返済資金を作らなければならないということです。このリスクが、不動産担保ローンの最大のデメリットといえるでしょう。個人が自宅を担保にした場合、住む家を失うかもしれません。

借入のときに事務手数料が必要になる

不動産担保ローンを申し込むと、事務手数料がかかるのが一般的です。一律で料金が決まっているところもあれば、借入額の2%程度と決められているところもあります。一方で、無担保ローンであれば、事務手数料がかからないところがほとんどです。

不動産担保ローンの注意点

不動産担保ローンを検討するときには、以下の5点に注意しましょう。

何のために、どのくらいの金額が必要かをしっかり押さえておく

「借りられるだけ、大きく借りよう」と欲張ると、後で返済に苦しむことになります。なんのために、どのくらいの金額が必要なのか、申し込み前にきちんと押さえておきましょう。

担保とする不動産の価値を知っておく

担保とする不動産の価値が高ければ高いほど、借り入れできる金額が大きくなります。ということは、対象不動産の価値が低いと、思うような金額の借り入れができない可能性も。対象不動産の買取相場を把握しておくようにしましょう。とくに不動産に強いノンバンクへ見積もりを依頼すれば、適正な担保価格が期待できます。

対象不動産の名義人を正確に知っておく

担保の対象となる不動産は、借り入れをする本人の名義である方が審査はスムーズに通りますが、親族等の土地であっても可能です。ただ、「父の土地を担保にしたい」と考えて調べたところ、実は相続登記が終わっておらず、祖父の名義のままになっていた……ということもあり得ます。
すると、まずは土地の相続登記の手続きをしなければならず、借入までの期間が長くなってしまいます。登記を確認し、対象不動産の名義人を正確に知っておきましょう。

初期費用をきちんとつかんでおく

不動産担保ローンの契約時には、事務手数料のほか、印紙税や登記費用(登録免許税と、司法書士への報酬)などの初期費用が掛かります。
また、必要に応じて火災保険料等も必要です。初期費用を支払ったら、借入金額が大きく目減りしてしまったということのないように、発生する費用をきちんと把握しておきましょう。

金融機関、ノンバンク合わせて数社を比較する

それぞれの会社に特徴があるため、必ず数社を比較するようにしましょう。とくに色が異なる金融機関とノンバンク、いずれについても複数を候補に入れ、初期費用や金利、借入期間等について比較するのがおすすめです。また、1社に断られたからといって、全ての会社で融資ができないとは限りません。信用できると感じる複数の会社を、借入候補として持っておきましょう。

まとめ

以上、不動産担保ローンの仕組みや審査、メリット、デメリットについてお伝えしました。不動産に相当の魅力があれば、多額の借り入れも可能になります。まずは、何のために、いくら必要になるのかを正確に把握することから始めましょう。

奥山晶子

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ファイナンシャルプランナー2級の終活関連に強いライター。冠婚葬祭互助会勤務の後、出版業界へ。2008年より葬儀・墓・介護など終活関連のライター業務を始める。終活業界や終活経験者へのインタビュー経験多数。近著に『ゆる終活のための親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある。
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