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海外経済の分析② 「ドイツ経済の失速」

トピックス2020年2月13日

欧州旗「外務省ホームページから引用」https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/eu/index.html

 

 

EUの盟主、ドイツが苦しんでいます。
ドイツはこれまで自動車産業を武器に、割安通貨(※)ユーロの恩恵も受ける形で、輸出主導で欧州経済をけん引してきました。
ドイツのGDP(世界ランキング第4位)に占める輸出の割合は約4割(日本は約2割)と大きく、貿易黒字の相手国1位はアメリカ、2位はイギリスです。
この点で、ドイツの経済成長にとって、ブレグジットは将来的な不安要素としてあげられます。
世界的に自動車産業が停滞していることもありますが、最大の貿易相手国である中国経済の低迷もドイツ経済の失速に拍車をかけています。
さらにドイツにとって問題なのが、こうした経済状態に至っても、緊縮財政路線を変更しにくい政治的・歴史的背景があることです。
1つには、憲法で財政収支の均衡が義務付けられており、景気が悪くなっても積極的な金融緩和や財政出動に制限が生じてしまいます。
2つには、歴史的背景として、第1次大戦後のヴェルサイユ条約(1919年)で決まった戦後賠償問題により発生したハイパーインフレへの対応に苦労した記憶が、国民のDNAに残っています。
インフレ(物価上昇)への嫌悪感は、緊縮財政維持へのバイアスとなり、ドイツの中央銀行を通じてEUの金融政策にも反映されています。

※参考:割安通貨ユーロと為替レートのスタビライザー効果
EU諸国間の輸出入の支払いは共通通貨ユーロで行われます。まさにこの点がドイツ経済を輸出主導の下に成長させた要因といえます。
例えば、日本とアメリカの貿易を考えてみます。日本がアメリカに自動車を輸出するとその代金は「円」で支払われます。アメリカは代金である「円」を準備しなければいけないので、自国通貨「ドル」を 「円」に変えなければいけません。この過程で、「ドル売り・円買い」の取引が発生し、為替レート上は「ドル安・円高」要因となります。日本がアメリカに自動車を輸出すればするほど、同様の取引が発生するため、 「ドル安・円高」傾向が強くなります。日本からすると、貿易黒字になる一方で、為替レートは円高になります。円高になると、輸出品が割高になりますので、輸出量は減少し貿易黒字も減少します。
これが為替レートのスタビライザー効果(自動安定化装置)というものですが、EU諸国間のユーロ建て貿易においては働きません。
ドイツがEU諸国に輸出し貿易黒字が増加しても、貿易相手国は代金支払いを手持ちのユーロで行うことができるので、ユーロ高にはならず、ドイツにとって割安通貨の恩恵を受け続けることができます。
ユーロ圏において、為替レートのスタビライザー効果が働かないことは、リーマンショック後のギリシャ危機の要因の一つにもなりました。
ユーロ圏にあるギリシャはユーロ建て国債を発行することで、ドイツやフランスなど先進諸国と同様の条件で資金を調達することができました。その結果、ギリシャに大量に資金が流入して住宅バブルが発生し、 給料や賃金など人件費が上昇したギリシャは国際競争力を失いました。国際競争力を失ったギリシャは、貿易取引でも不利となり貿易収支も赤字となりました。通常貿易赤字(輸出<輸入)国は、輸入品支払のため 自国通貨安・外貨高(前述の例と逆の取引)となり、貿易赤字は解消されますが、共通通貨ユーロを採用しているため、為替レートのスタビライザー効果が発動されなかったのです。

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